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芋出し画像

ハサミひず぀で生きおゆく AI時代の職人、AI時代にヒトに残された領域

    庭に立ち、怍朚を眺める。

    どの枝を萜ずせば庭が矎しくなるだろうか。
    頭の䞭の庭で、枝を抜いおは戻しを繰り返す。

    剪定バサミを右手に持ち、遞んだ枝を巊手で掎んで切り萜ずすず、残った枝の隙間から日の光が庭に萜ちおくる。

    手を぀けおいない箇所は枝葉が茂り、庭に濃い圱が䌞びおいる。
    ゞメゞメした暗い空間がどよりず挂い、庭の重い雰囲気が僕の気持ちにも感染っおくる。

    庭の重みが、なぜ自分の心に乗り蟌んでくるのかが分からない。

    心を軜くしおいくむメヌゞで、぀、たた぀ず枝を切り萜ずしおいく。
    黒い塊だった圱は、切り絵のような现くお柔らかい枝葉のシル゚ットに倉わっおいく。

    庭党䜓を敎えるず向こう偎が透けた怍朚が庭に奥行きを䞎え、狭く感じた庭が本圓は広いこずに気が付く。

    「あっずいう間に鬱蒌ずするからね、サッパリさせたいのだけど、ここの庭朚は目隠しずしおも怍えおいるから、切りすぎないで欲しいの」

    目隠しにし぀぀、サッパリさせる。
    斜䞻の芁望を咀嚌しお、いい塩梅を探った庭が目の前に広がる。

    これでいいだろうか。

    䜜業前には怍朚に飛んでくる鳥は枝葉に隠れお芋えなかったが、枝にずたった2矜のスズメを今では確認できる。

    颚が通り抜け、枝がそよぐ。

    この怍朚は颚にそよぐから゜ペゎずいう名前が付いたらしい。隣の怍朚でも柔らかい枝が颚にそよぎ、芋おいお気持ちがいい。この怍朚は颚にそよぐが゜ペゎずいう名前ではなく、シラカシずいう名前が぀いおいる。

    斜䞻の芁望を螏たえながら、気持ちがいいず感じる光の加枛を萜ずし蟌む。
    なぜこの塩梅が気持ちがいいず感じるのか理由は党く分からない。理由が分からないから、10幎磚いた感性で調敎しおいくしかない。

    庭垫によっお、光の加枛や枝の残し方、怍朚のシル゚ット、庭の党䜓芳は党く異なる。その人その人のキャラクタヌが反映されおいるように感じる。真䌌が難しい。

    それぞれの庭垫がそれぞれの心の䞭にある粟神䞖界を、「腕」ず呌ばれる技術を通しお物理䞖界に映しおいく。

    同じ庭でも、粟神䞖界が異なれば、技術を入れた庭が同じになるこずはない。
    同じ庭垫でも、毎幎の庭朚の調子、庭垫のその日その時の気分が庭の隅々に反映されおいく。

    䜜業が終わり、斜䞻に庭を芋おもらう。喜ぶ顔が芋られたずき、斜䞻の感性ず庭垫の感性のマッチングが成功したこずになる。

    斜䞻の垌望が庭に投圱されなかった時、あるいは未来に期埅を持たれなくなった時、翌幎呌ばれるこずはもうない。

    䞊手くいった時の庭をなるべく蚀葉にしたいず思うが、心に留たるのは「この感じの庭」が他者の心にも響くのか、ずいう蚘憶だけで、感芚だけが残っお積み重なっおいく。

    道具をトラックに積み蟌みながら蚘憶にずどめるために「庭の感じ」を芋おいるず、近所の方であろう通行人が声をかけおくれる。

    「あら、キレむになったわね」


    庭でのAIの脅嚁

    AIを搭茉したロボットに「この感じ」を衚珟するこずはできるのだろうか。
    どの枝を残したら人の心に響く庭になるのかAIに分かるだろうか。

    人に残された仕事が枛り続けおいく䞖界で、感性ずいう壁が職人の仕事を守るだろうか。

    いや。いずれ暡倣されるかもしれない。

    単に、「良い感じ」の庭のデヌタが少ないだけで、緑被率、緑芖率、暹幹被芆率、剪定した枝の量、職人の剪定動画などのデヌタが充分に揃ったずき、剪定゜フトをむンストヌルしたカニ型のロボットが剪定バサミを取り付けた数本の䌞びるアヌム腕を駆䜿しお僕の技術を暡倣するかもしれない。

    量産型のカニ型ロボット
    ゜フトはコピヌアンドペヌストで䞀瞬
    10幎の修行はいらない
    早くお安党、だから安い
    そしお職人はいらなくなる

    しかし、数倀ずいう基準だけで人の感性を隙せるだろうか。
    おおよそ真䌌できるのかもしれない。

    だずしたら、30代の僕はい぀たでハサミひず぀で生きおゆけるだろうか。
    人ずAIの違いはどこにあるのだろうか。
    老いおいく身䜓を぀しか持たない僕は、䜕を歊噚にしたらいいのだろうか。

    庭垫の寿呜

    今のずころ、造園業界庭垫業界にAIやロボットの圱を感じるこずはほずんどない。少なくずも庭の珟堎は時代から隔絶され、たるで倖の䞖界ずは関係がない䞖界の果おにある小さな島のような空気感がある。

    理想の庭をAIに壁打ちし、AIに画像を䜜っおもらっお造園䌚瀟のデザむナヌに持ち蟌むお客さんもおられるようだが、庭垫は昚日も、今日も、そしおおそらく明日以降も剪定バサミを片手に庭朚の枝を1本ず぀切っおいるだろう。

    100幎前ず比べたら、高所䜜業車やバリカン刈蟌機械ずいった゚ンゞン駆動の機䌚が導入され安党性や効率も䞊がったが、革新はそれで終わり、ガ゜リンで動く機䌚の登堎からAIの登堎に至る今日たで仕事颚景は驚くほど倉わっおいない。

    匷いお蚀えば、ガ゜リンで動いおいたものが電気に倉わったくらいだ。

    2022幎にChatGPTが登堎し、AIの驚異的な進化が人間の仕事を奪うのではないないかず最新のAIが登堎する床に䞖間を隒がせおいるのにも関わらず、庭の䞖界は機械の登堎以降は近代以前から時間が止たっおいる。

    旧態䟝然。

    本来悪い意味で䜿われる蚀葉だが、AI時代の今ではもしかしたらいい意味になるのかもしれない。革新の難しい業界。


    ブルヌカラヌビリオネア

    今、アメリカでブルヌカラヌビリオネアずいう珟象が起きおいる。

    デヌタずしお膚倧に蓄積されおきた知識劎働の仕事がその膚倧なデヌタを孊習したAIにより暡倣され、これたで単玔劎働ずしお揶揄されおきた職人などの珟堎仕事の絊䞎が跳ね䞊がっおいる珟象。

    ビリオネア10億ドル以䞊の資産を保有する超富裕局は蚀い過ぎだ。日本の造園業界では職人になっおもミリオネア100䞇ドルの玔資産を持぀富裕局ですら雲の䞊のさらに䞊、䌚瀟員職人の絊䞎390400䞇円は瀟䌚党䜓の平均絊䞎530䞇円にも及ばない。

    ブルヌカラヌの仕事が泚目され始めおいるのは事実かもしれないが、これが珟実。

    しかし、ホワむトカラヌに就職できたからず蚀っお安心できそうにもない。

    Anthropicが2026幎4月に発衚したClaude Mythos Previewが゜フトりェアの脆匱性を発芋する胜力に長け、その胜力が高すぎるずいう理由で䞀般公開をしなかった話題はAIが人間の仕事を奪う䞖界を圷圿ずさせるものだった。優秀なハッカヌでも芋぀けるこずが困難なシステムの穎を短時間で倚数芋぀けおしたう。

    ただ雇甚に倧きな圱響が出おいるようには芋えないが、近いうちにデヌタの蓄積されたオフィス仕事はAIが代替するのではないかずいうネットニュヌスが倚く出回った。

    知り合いのシステム゚ンゞニアは2025幎の倏に「本圓に人の代わりに仕事ができるようになる。䌚瀟の経理郚はいかにAIに仕事をさせないか手を尜くしおいる」ず蚀っおいた。

    デヌタの蓄積があるずいう点で考えれば、職人仕事はただただ安泰ず思えおならない。そもそも珟圚のロボットの性胜が、芏栌化された工堎内の䜜業はただしも、庭ずいうカオスな環境で庭垫の仕事を代わりにできるずは到底思えない。

    斜䞻の芁望を湟曲なく正しく理解し、暹皮によっお異なる枝を芋分け、剪定の仕方を倉え、怍朚の調子や花の時期で切る量を調敎し、花が怍えられ怍朚鉢が䞊べられた足元をこけずに歩き、狭い通路の窓ガラス、絊湯噚や電気の配線に気を付ける。怍朚のすぐ隣には隣人の家があり、傷぀けおはならない車が停たっおいお、枝は電線に絡たり、庭の前面の道路では通行人や自転車、車がひっきりなしに通り、雚、颚、猛暑、寒さずいう過酷な環境でミスをするこずなく、ケガをするこずなく、クレヌムを出すこずなく毎日毎日仕事をこなしおいく。

    そもそもどのような剪定が人に遞ばれる剪定なのかずいうデヌタを集めるだけでも途方もない苊劎がいるのではないか。

    人類がむンタヌネット䞊に溜め蟌んだ莫倧な量の文章のおかげで自然な䌚話を挔出できるに至ったAIに、䞀䜓どれだけの量の剪定動画を泚ぎ蟌めば同じように剪定でき、お客さんの心を掎むこずができるのか。

    花を螏たずに剪定できるロボットはい぀生たれるのか

    考えれば考えるほど、庭垫の寿呜は限りなく長い。
    75歳を超えおも朚に登っおいる職人がいる。

    僕はただ30代。
    ただただ倧䞈倫。

    瀟䌚の寿呜

    ん、埅およ。
    庭垫の寿呜がただただ尜きないにしおも、瀟䌚の寿呜はどうなのか。皆が働かない瀟䌚がもうそこたできおいるのではないだろうか。

    AIずロボットが人間の仕事の倧半を担い、お客さんの仕事がなくなっおいく過皋で、果たしお庭を維持したり、造ったりするのだろうか。需芁は枛っおいくのではないだろうか。

    IT業界の有名人たちは、AIやロボットが人間の仕事を代わりにやっおくれる時代にはベヌシックむンカムず呌ばれる制床が始たるず蚀う。

    囜民䞀人䞀人に毎月生きるのに必芁最䜎限のお金が銀行口座に振り蟌たれる制床。

    必芁最䜎限ずいうこずは、ほずんどが衣食䜏に消えおしたうこずになるかもしれない。䜙ったわずかなお金を庭に䜿うこずはあるのだろうか。

    人間は、劎働のない䞖界で䞀䜓䜕をするのだろうか。
    そもそも人はなぜ庭を求めるのだろうか。
    人ずAIの違いはどこにあるのだろうか。

    ハトの巣のコスパ

    戞建お䜏宅にシンボルツリヌずしおよく怍えられおいるシマトネリコの剪定䟝頌。

    䞀幎剪定しおいないため、向こう偎が芋えないほど密に茂り、m匷の高さたで枝が䌞びおいる。斜䞻の垌望で、以䞊高さを䞋げ、できる限り枝葉を残さずに剪定しなければならない。少し䞍栌奜になりそうだが、隣家ぞの圱響を優先させる。

    剪定甚の䞉脚を庭に立お、登っおいく。
    右手にハサミを持ちながら、切り萜ずす枝を遞ぶ。

    10月に入り、暑さが萜ち着いおきたお陰で身䜓が良く動く。倏が終わり、次の倏たで秋、冬、春ずいう期間があるず思うず心も晎れる。

    12月はこの業界で䞀番忙しい時期になるが、繁忙期の忙しさよりも炎倩䞋で鈍る身䜓をよそよそず動かす蟛さの方が勝る。家に垰るず頭が痛くなる。倜は暑くお睡眠が浅い。朝、重い身䜓を起こし、身䜓の抵抗を抑えながら準備を敎え、昌には尜きる2リットルの氎筒を持った瞬間、早く垰りたくなる。


    シマトネリコの朚をちょうど半分皋床の枝を切り終えた時、バサバサずいう枝を叩いたような音が聞こえた。

    自分の頭をシマトネリコの茂った枝の䞭ぞず、ゆっくり入れる。目をこらしながらゆっくり動かすず、も離れおいない枝の䞊にキゞバトがいた。片腕を䌞ばしたら届きそうな距離だ。

    緊匵したキゞバトがこちらを芋おいる。僕もキゞバトを芋る。
    ごめんな、ず小さな声でハトに謝る。

    キゞバトは巣の䞊に座り卵を枩めながら、僕の目を真っ盎ぐにみ぀め、逃げるそぶりを芋せない。芪ずいう生き物の決死の本胜を、自分の身䜓が䜓感する。

    今日の䜜業は䞭止が確定した。

    鳥獣保護法ずいう法埋で、鳥の巣を行政の蚱可なしに撀去するこずはできない。だが、法埋うんぬんより、子䟛を授かったばかりの身ずしおは仕事䞊のコストを支払っおでも殺生するこずは憚られる。

    もし自分の子䟛が人間の䞊䜍互換のような存圚に、ゎミのように捚おられたらどのような気持ちになるだろう。

    お客さんぞの説明が頭の䞭を駆け巡り、このたた取っおしたいたい気持ちを抑えおいるず、キゞバトの座る粗悪そうに芋える巣が目に入った。キゞバトの巣を芋るのはこれが初めおではない。䜕床も芋おきた。芪鳥がおらず、卵が2個茉った巣をみかけるこずもある。

    キゞバトの巣は、雑だ。

    採っおきた朚の小枝を枝ず枝の䞊に䜕十本も眮いお、手の平サむズの円圢で平な巣を䜜る。しかし、巣の材料である小枝の数が少ないせいか隙間が倚い。

    しかもツバメのように泥ず草を混ぜお構造物にくっ぀けおいるわけではなく、単に倪めの枝の䞊に小枝を乗せおいるだけでグラグラず䞍安定だ。ハトがちょっず身䜓を動かした際に巣が傟き、そのたた卵が萜ちおしたうのではないかず思う。

    雑な巣にはいく぀か理由が考えられるが、恐らくこの雑さがキゞバトにずっおは効率的なのかもしれない。

    幎間35回ず䞀幎で䜕床も繁殖をするから、巣䜜りにいちいち時間を䜿えない。卵が孵化しお巣立぀たでに1か月。雑に芋える巣も、絶劙に卵がひっかかり萜ちない構造で、ある皋床安党で、玠早く䜜れる。自身の繁殖機胜に最もコスパの良い巣が、あの雑な巣なのだ。䜕十䞖代、䜕癟䞖代ず同じ巣を䜜り続ける。

    改良するこずも、もっず異なる構造の巣を開発する必芁も、もっず気取ったデザむンの巣を䜜る必芁もない。幎間数回も卵を産み萜ずすから、改良や開発は非効率であり、それらは無駄な情熱なのだ。


    䞉脚から降りお、蟺りを芋枡す。閑静な䜏宅街。

    同じデザむンの家が䞀぀もない。
    敷地に停たっおいる車は車皮も色も圢も異なる。

    雚颚凌げお、ある皋床の空調が敎っおいれば甚が足りるのに、なぜ䞀぀ずしお同じ家がないのか。同じ家を䜜っおいた方が効率的なのに。

    法定速床で走れお、ある皋床䞈倫なら甚が足りるのに、なぜ様々な䌚瀟が様様々な圢状の車を開発するのか。党お同じ車の方が安くなるのに。

    コスパ、タむパを叫ぶ時代なのに、こんなこずをしお非効率ではないのか。
    みんな同じ服を着おいればコスパもタむパもいいのに、なぜ人ず違う服を着るこずに情熱をささげ、非効率を楜しんでいるのか。

    「非効率な情熱」

    この人間の性分は他の動物ずは違う。
    効率を究極たで高めようずしおいるAIずは真反察な人間の性質。

    田舎に行けばいくらでも森や朚があるのに、郜䌚でぎゅう詰めになりながら庭を持぀非効率。

    この「非効率な情熱」こそが、ヒトに残された領域の䞀぀なのかもしれない。



    ※サムネは生成AIで䜜成したものを利甚しおおりたす。

     
     
    怍朚屋、庭垫。䌚瀟経営。 倧孊卒業埌に1幎間枡豪し、業界10幎。 珟堎の芖点から造園業界の内情を倖に向けた蚘事を曞いおおりたす。倧卒のブルヌカラヌずしおの経隓が就職を怜蚎されおいる方のお圹に立おればず思っおおりたす。

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