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エアコンなしライフ

    「エアコンなしで夏を過ごしています」


    こう言うと、「なんで?」「そんなの無理」と言われ変人扱いされる。

    そりゃそうだ。毎年、記録的な猛暑が続く日本の夏。エアコンなしは危険だし、絶対使った方がいいと私も思う。でも私は、エアコンを一切使わず、扇風機のみで生活している。朝から晩まで健気に首振って風を吹かしている、そんなこの子が私の夏の相棒。

    私の住まいは鎌倉の賃貸マンションで、部屋の前に高い建物がないので、風通しがいい。都内や熱帯地域に比べると過ごしやすいと思う。だからエアコンなしで過ごせるのかもしれない。

    毎年、夏風邪をひくタイプだったが、脱エアコンをして全くひかなくなり、今年は9年目のエアコンなしライフだ。

    なぜ脱エアコンしたかと言うと、引っ越して来たマンションのエアコン内部がカビだらけだったから。吹き出し口を覗くと、奥に黒いカビがびっしり張りついた状態。こんなの稼働させたら病気になるどころか致死レベル。管理会社に内部洗浄を頼めばよかったのに、タイミングを逃してしまい、エアコンなしで夏を迎えることに。そもそも洗浄じゃどうにもならないくらいの、長年蓄積されたっぽいカビ、、、。


    そして、私は試してみたかったのだ。
    エアコンなしで夏を乗り越えられるのかを。


    そんな訳で脱エアコンの道を選んだ。しかも1年目の夏は扇風機すらなく、団扇のみで乗りきった。
    そして思った。

    「意外と、いける。」


    そして2年目に、私の相棒となる扇風機をお迎えし、エアコンなしライフが本格的にスタートした。

    毎年2回くらい生命の危機を感じるが、慣れてきたのかここ数年は割と余裕で過ごせている。

    一番辛かったのは2020年コロナ禍の夏。自粛が増えて週5で家に居たからだ。暑すぎて眠くなるし、もう何も考えられないほど意識がもうろうとするし、常に全身汗でベタベタするし、毎日ただ耐えることがミッションみたいな日々。何度も過呼吸になった。

    それまでは、エアコンフル稼働の通勤電車や会社で涼めていたから、難なく乗り越えられていた夏。エアコンにあやかれるから喜んで会社に行っていたくらい。それが週5でサウナ部屋。
    「何の修行をしているのかな?私、、、」って感じだった。全裸でぐったりしている姿は正にゾンビそのものだったと思う。


    とにかく、外からの日差しと熱気を遮断する為に、常にカーテンを閉めるのが鉄則。昼間も薄暗い中で過ごすことになるが、これでだいぶ暑さを和らげることができる。それでも耐えられなくなったら、冷凍庫に常備している大量の保冷剤を、2個それぞれハンカチに包み両脇に挟む。温くなってきたら新しい保冷剤に交換する。これをひたすら繰り返し、峠を乗り越える。それでも辛い場合は冷凍庫に顔を突っ込んだり、風呂場で行水したりした。部屋での基本的な体勢は、全裸でフローリングに横たわる、だった。

    私、何と闘っているんだろう。馬鹿なんじゃないかって何度も思った。あの家もこの家もそこの家も皆エアコンを使っていて、涼しく快適に過ごしているんだろうな。暑い外を行き交う人々も、どうせ家では快適なエアコンライフを送っているんでしょ。そう卑屈に思っていた。

    でももう引き返せない。
    引き返せるのに、引き返せない。

    「エアコンなしで生きなきゃ!!」


    そう使命感に燃えていた。
    きっと暑さで脳みそがやられていたんだと思う。思考回路がおかしくなった自分を止められなかった。


    日中部屋にいて、一番汗だくになるのは掃除の時。週に一度はプチ大掃除をする。水廻り掃除は問題ないが、棚を拭いたり床を拭いたり掃除機をかけたりと、腕を動かしながらの屈伸運動は、全身滝のような汗が流れる。水分補給はこまめに行うのが必須。常に背中を伝う汗を感じながらせっせと掃除をするが、床を拭くはたから汗でベタベタするので、汚しているんだか綺麗にしているんだか分からなくなる。

    掃除が終わったあとは冷水シャワーを浴びる。この瞬間がサイコーだ。まとわりついた汗とおさらばし、新しい自分に生まれ変わった心地がする。間もなくして再び汗でコーティングされるのだが。

    自粛から解放された後の休日の過ごし方は、主にカフェ巡り。涼しい店内で読書をしながらのカフェタイムは最高に至福なひととき。

    だが、このカフェ巡り、結構お金がかかる。インスタ映えのお洒落なスイーツ達がショーケースに並んでいると、3個は食べてしまう。もちろん食べることが目的だが、カフェで写真を撮ることも好きで、インスタに載せるわけでもないのに、色んな角度から撮りまくってしまう。そんなこんなで飲み物と合わせると2,000円は越える。1件につき1時間30分ほどの滞在で、その分の避暑代も含まれているのだから、決して高くはないと自分に言い聞かせ、2件目3件目とカフェを巡るのだ。

    そうすると、あっという間に5,000円は越える。そして、この時点でやっと自分が暴走した現実と焦点が合い、夢から引き戻される。さすがに毎週カフェで5,000円は使いすぎだと、後悔し反省する。来週こそはカフェには行かず図書館で過ごすんだって誓っても、また同じ過ちを繰り返す。この後悔の気持ちを未来の自分にも知ってほしい。そんな思いを込めて未来の自分に手紙を書いたこともある。“お願いだから、もうやめて。”と。聞き入れてもらえたことは一度もない。

    そして、カフェ巡りだけで済むならまだいい。カフェで過ごしながら、しょっちゅうネットショッピングでポチ活をしてしまう。楽天でポチ、Amazonでポチ、そこかしこでポチポチ。
    だいたいがカートに入れるだけで満足して買わずに終わるが、かなり危険。常に理性と闘っている。家でもうろうとしている時には頭が働かず、ポチ活する気も起きない。けど、エアコンが効いた涼しい空間にひとたび入れば、良くも悪くも頭がフル回転し、エアコンハイ状態になる。詰まっていた思考が一気に流れ始め、あれもこれもと気づけばカートに色々物が詰め込まれている。考え事や読書をしていたはずなのに、いつの間にかポチポチしてるのは、一体なぜだろう。ほぼ無意識である。

    カフェ以外では、よくお寺へ行く。鎌倉に住んでいるから近くにお寺がたくさんある。本堂や方丈など、中に入るととても涼しい。お参りをしていると背筋が伸びて心が整う。けど、仏様を見つめていると、カフェ巡りで散財したりネットショッピングでポチ活している自堕落な自分を見透かされているようで、いたたまれない気持ちになる。煩悩まみれの人間でごめんなさいと思うがとりあえず、“楽しく生きています。ありがとう。”とだけ伝えている。

    あとは、東京丸の内にあるKITTEの郵便局長室や丸ビル内の休憩スペースなどがお気に入りのスポットだ。土日でも静かで、ゆっくり座って東京駅を眺められる場所。もちろん涼しい。考え事をしたりnoteを書いたりしている。田舎生まれの田舎育ちの私は、都会に憧れて高校卒業後に上京した。今は都会に疲れて鎌倉暮らしをしているが、今でも東京は私の憧れで、刺激が欲しい時によく訪れる。東京の街を歩いていると、いつもより背筋が延びて何とも言えない高揚感に包まれる。高層ビルを見上げながら歩く私はまだまだ田舎者である。いつかこの街に見合う人間になりたいと常々思っているが、まだまだ手が届きそうにない。長い長い片想いをしているようだ。


    さて、一日の中で一番面倒なのが、お風呂上がりのドライヤーだ。最後の難関である。私はロングヘアーなので超地獄。熱気ムンムンの浴室から出ても、そこは熱気を帯びた室内。とめどなく溢れ出る汗をひたすらタオルで拭いながら、窓を開けて扇風機の前で仁王立ちし、両面クールダウンさせながら冷たい水を一気飲み。この瞬間が一番、“生きてる!!”と感じることかもしれない。ただ、冷蔵庫から出したばかりの、キンキンに冷えた水を一気飲みするのは危険だ。恐らく暑さで胃腸が弱っているからだろう、若い人は大丈夫かもしれないが、私は一瞬にしてお腹を壊し、3日間ほどピーが続いた。ピーが迫り狂うなかで仕事をするのは地獄だった。なのでお風呂に入る前に、冷たい水をコップに注いでおいて、お風呂上がりに常温になった水を飲むというのがおすすめだ。

    まだ暑さを感じる段階でドライヤーをすると、また全身汗が吹き出し、頭皮も汗まみれになり、髪が永遠に乾かない。なのでスキンケアをした後、湯冷めして肌寒さを感じるようになるまで、扇風機の前で大人しく待機。ちなみに体育座りで扇風機に背を向けた状態。もちろん全裸。そして、その前にかならず髪を櫛でとかしヘアオイルをつけておくこと。そうしないと、乾かした後にアホ毛爆誕の荒地と化するからだ。前髪はうねって外ハネし、少年アシベ風になってしまう。そうならないためにも、この一手間が大事なのだ。

    涼んでいる間は、読書をしたりネットサーフィンをしたり、最近だとnoteを書いたりして有意義に過ごしている。今この瞬間も、全裸の体育座りで扇風機の風を背中で受け止めながら書いている。

    1時間ほどだろうか。皮膚がカラカラに乾いて冷たくなり肌寒さを感じたら準備オッケー。この状態でドライヤーをすれば、エアコンが無くとも汗をかかず快適かつ迅速に乾かせるのだ。ただ、湿度が高く28℃以上の熱帯夜だと、ドライヤー中に再び汗をかき、なかなか乾かないことになる。もうこれは仕方がないので、たびたび冷風でクールダウンさせながら地道に乾かす。完全に乾かすのに40分以上かかったりする。ここまで終えると、「やっと一日が終わった」と思える。最近ふと思ったが、仕事よりプライベートの方が疲れる気がする。


    最後の難関ドライヤーを乗り越えた後は、やっと就寝。エアコンなしで涼しく快適に眠りにつける方法を伝授しようと思う。

    まず、扇風機を微風にして首振りにする。自分にダイレクトに風がかからないよう、扇風機の首をやや上向きの角度にして喉を乾燥させない状態にする。
    (朝起きたら風邪引いていたというのを避ける)

    そして窓を開けて網戸に。
    (防犯面では不安だが)

    凍らせた500mlペットボトルの水をハンカチに包み、脇に挟む。
    (首の後ろも保冷剤で冷やしたり、枕をアイスノンにしたりするのもおすすめ)

    タオルケットを腹部にだけ掛ける。
    (暑くてもお腹は絶対冷やさない)

    布団をフローリングに直置きの方は、脚をフローリングに放り出しておくとヒンヤリ気持ちいいからおすすめ。

    以上。
    これだけで涼しく心地よく眠りにつけるのだ。

    あとはトイレに起きた時などに、ペットボトルや保冷剤を取り替えれば、朝まで快適に安眠できる。

    私の場合は…だか。

    あと、熟睡できるのはいいが、長時間熟睡するのは危険かもしれない。私はコロナで高熱が出た時、1度も目が覚めないまま12時間眠り続けた。起きた瞬間、熱中症と脱水症状で立てなくなり滝のように冷や汗をかき過呼吸になった。洗面所まで這いつくばり冷水を浴びて事なきを得たが、本当に命の危険を感じた。なので、夏は適度に起きて水分補給をした方がいいかもしれない。


    こんな風にエアコンを使わない夏を過ごすようになって、本当に風邪をひかなくなったし、夏バテをしなくなった。一日中体調が整っている感じだ。なので、エアコンなしで夏を過ごすのは健康の為だと自分に言い聞かせ、周囲の人達にも『エアコン苦手だから』アピールをしているのだが、たぶんマンションのエアコンが新品になったら、何の迷いもなく稼働させ、快適なエアコンライフを送ることだろう。実際、カフェや電車や商業施設などの涼しい場所が大好き。身体が冷えたら外に出て、暑くなったら再び涼しい場所へ逃げ込む。この繰り返しが心地良い。サウナ的な感覚だろうか。

    とりあえず、次に引っ越す時はエアコン内部要チェック。カビだらけだったら管理会社に必ず言おうと思う。ただ、引っ越さずとももう今年こそはエアコンなしライフに終止符を打とうと毎年思っているが、実行に移せぬまま続けている。あともう少しで10年目なので、どうせなら10年続けたいという意地もあるのだろう。あとは基本的に暑いのは得意で夏が大好き。思う存分暑さを感じたいのかもしれない。ただ、私も年々歳をとっているので、エアコンなしはそろそろ危険かもしれないと考えている。自分を労る為にも、管理会社にエアコン新調をおねだりしようかと、そろそろ真剣に考えようと思う。


    皆様も、エアコンが壊れるなどのきっかけがありましたら是非、エアコンなしライフを送ってみてほしい。毎年夏風邪をひく方や夏バテをしている方は、身体が楽になるかもしれない。でも、やはりエアコンがある方はちゃんと使った方がいいと思う。最近の猛暑は危険だし、それより何より毎日暑さに耐える日々は辛すぎるから。私も実は、かなり辛い。でも今年の闘いは、まだ始まったばかり。(この記事を書いている7月上旬は珍しくまだ涼しい。)


    ではでは。サウナ部屋からの夏の便りでした。

     
     
    40代一人暮らし。鎌倉で自由に生きています。 エッセイを書くことが一番の幸せ。。 (´ー`)ノ✏ 日々のあれこれ。過去のあれこれ。思いのあれこれ。色んなあれこれ書いています✏

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