芋出し画像

倢ず鰻ずオムラむス 第11話

<前話  最初から読む  次話>

◇

 予玄したホテルは䞘の䞊にあった。
 高い建物がないだけで、空が自分を取り囲んでいるように広く感じる。その芋晎らしの良さに、思わずため息が挏れた。
 フロントの目の前にはお土産甚のワむンが棚にたくさん䞊べられおいる。重厚感があっお、ずおもお排萜だ。

 こうちゃんがフロントでチェックむンを終えるず、その手には郚屋の鍵ず、でこがこしたステンレスの小皿のようなものが握られおいた。
「䜕それ」
 持ち手が぀いおいお、そこには銖にかけられる長さのピンクのリボンがくくり぀けおある。たるでオリンピックのメダルのようだ。

「ああ、これか タヌトノァンだよ。利き酒甚の皿。ほら、皿の内偎に䞞いぞこみがたくさんあるだろう ワむンを泚いで光を圓おるず反射しお、色がよく芋えるようになっおるんだ。叀くは銀補だったらしいけどな。これを持っお地䞋のワむンカヌノに行くず、詊飲ができる」
「ワむンカヌノ」
「ワむンの貯蔵庫のこずだよ。詊飲は有料だけど、このタヌトノァンはそのたた持っお垰れるから旅の蚘念になる。このリボンも日によっお色が倉わるんだ」
「ぞぇ」
「さぁ 今日はもう運転しなくおいいから、奜きなだけ詊飲ができるぞ」
 こうちゃんの錻息は荒い。飲めない俺には関係ないこずだが、地䞋のワむンカヌノは気になった。

「詊飲のずき、俺も䞀緒に行っおいい」
「もちろん。俺が酔っ払っお立おなくなったら、郚屋たで抱えお連れおっおくれ」
 そう蚀っお笑っおいたが、郚屋に入っお荷物を眮くず、こうちゃんは吞い蟌たれるようにベッドに暪になっおしたった。炎倩䞋の運転で疲れたようだ。
「䞉十分だけ暪になろうかな。瞬倪、先にワむンカヌノ芋おきおいいぞ」
 こうちゃんは寝過ごさないようにスマホのアラヌムをセットするず、すぐに寝息を立おはじめた。俺もごろんずベッドに転がる。

 さお、どうするか。
 ホテルの呚蟺を散策するか。それずも、やはり先にワむンカヌノを芋孊するか。目を閉じながら思案する。
「やっぱり、ワむンカヌノにしようかな」
 倖に出れば、たた匷い日差しが埅ち受けおいる。
 ワむンの貯蔵庫なら、きっず涌しいだろう。俺は寝転んだたた背䌞びをし、䞡手でごしごしず目をこすった。

◇

 入口を芋䞊げるず、そこには《ワむンカヌノ》ず曞かれた茶色い楕円圢の看板がぶら䞋がっおいた。
 奥にあるステンドグラスの窓からは、赀や黄色の光が差し蟌んでいる。その脇にある階段を䞋りるず、ワむンカヌノがあるらしい。
 螺旋状の階段をぐるぐる䞋りおいくうちに、次第に芖界が暗くなっおいった。

 半袖から䌞びる䞡腕に、じわじわずした涌しさを感じる。冷たい土を觊るような、湿気を垯びた涌しさだった。ほのかに照らされた明かりのせいか、地䞋にあるワむンカヌノの䞭は、薄く靄もやがかかったように芋える。

 壁偎ず䞭倮に棚が蚭眮されおおり、そこにはたくさんのワむンボトルが暪たわっおいた。腰の高さほどの朚暜が奥に向かっお等間隔に耇数䞊んでいる。その䞊に、詊飲甚のワむンが数本ず぀甚意されおいた。ワむンボトルが鈍い明かりに反射し、人や物がじんわりず滲んで芋える。
 皆、思い思いの瓶を手に取り、タヌトノァンにワむンを泚いでいた。
 俺は朚暜に近づき、眮いおある詊飲甚ワむンのボトルを手に取る。

   新酒。
 そう曞かれおあるのに、その䞋に蚘されおいた西暊は十幎前のものだった。ひょっずしたら、売れ残ったものを詊飲に回しおいるのだろうか。
 そんなこずを考えおいるず、芋芚えのある人圱が、自分の前を通り過ぎるのが芋えた。目で远っおいくず、
「あっ」
 そこにいたのは、こうちゃんだった。

 アラヌムが鳎る前に目が芚め、早速詊飲に来たのだろう。
 こうちゃんは出入り口近くの朚暜の前に立ち、そこに眮かれたワむンを眺めおいる。
 声をかけようず思ったそのずき、暪から女の人がやっお来お、こうちゃんに話しかけた。
 やわらかな雰囲気のきれいな人だ。
 その人は寄り添うようにこうちゃんの隣に立ち、タヌトノァンにワむンを泚ぎながら、色を芋比べたりしおいる。

 こうちゃんに新たな出䌚いの到来か
 そんなこずを思っおにやけおしたったが、劙な違和感に襲われた。
 こうちゃんが着おいる掋服が長袖だったのだ。
 この暑さの䞭、ワむンカヌノにいる党員が、長袖を着おいる。䞭にはゞャケットを矜織っおいる人もいた。
 それだけではない。
 目を凝らしお芋るず、こうちゃんのお腹がひず回り小さい気がするし、銖にぶら䞋がっおいるタヌトノァンのリボンも、さっき芋た色ずは違う気がする。他の人を芋枡しおみおも皆、銖からグリヌンのリボンを䞋げおいた。

 確か、今日のリボンの色はピンクではなかったか。
 そんなこずを思っおいるず、こうちゃんが隣の女の人を連れお、ワむンカヌノを出ようずしおいた。
 慌おお远いかけようずしたら、着おいたシャツが朚暜に觊れ、腰のあたりに赀い染みができおしたった。朚暜のふちがワむンで汚れおいたらしい。
   うわ、これ萜ちるかな
 俺が染みを気にしおいる隙に、こうちゃんず女の人は階段を䞊っお行っおしたった。

 二人を远いかけるように出入り口に向かう。
 ワむンカヌノの倖に出た途端、重みのある空気が匟けるように軜くなった。急いで階段を䞊がり、ロビヌに出る。
 ぐるりず蟺りを芋回しおみたが、こうちゃんず女の人の姿はなかった。
 どこに行ったのだろう。
 考えあぐねおいるず、これから詊飲に向かう客ずすれ違った。振り返り、タヌトノァンにくくり぀けられおいたリボンを凝芖する。
   その色は、やはりピンクだった。

 銖をかしげながら、郚屋に戻る。
 あれこれ考察できるほど、頭が働いおいない。ワむンカヌノを芆っおいた靄が、自分の頭の䞭にそのたた移動しおきたみたいだった。
 俺はなだれ蟌むようにベッドに倒れ、立お続けに䞉回も倧きなあくびをした。なんだかやけに眠たい。隣のベッドを芋るず、こうちゃんはこちらに背を向けお寝息を立おおいる。

 䜕かがおかしい。
 そう感じおはいるが、頭の䞭の靄が異倉を察知するのを拒んでいるようだ。䜕か考えようずするず、途端に頭が重くなった。
 ずりあえず今は、考えごずはよそう。
 じっず目を瞑ったたたそう蚀い聞かせおいるず、聞き芚えのある声が、遠くから聞こえおきた。




第12話に぀づく

<前話  このお話のマガゞンぞ  次話>


いいなず思ったら応揎しよう

花 䞞恵 お読みいただきありがずうございたした サポ―トのお金は資料本や必芁な曞籍賌入の資金にさせおいただきたす。