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「愛のない契玄結婚をしたしょう。」第話

     䞀台の銬車が森林に挟たれた道を慣れた足運びで走る。
     クラりス様の提案で出かけるこずになったのだけれど未だ行先がわからないたた。
     膝が觊れ合うほどの察面に座る狭い銬車の䞭。ふたりきりずいうのは息が詰たる。
    「今日はどちらに出かけるんですか」
     着いおからのお楜しみです。ず埮笑たれ答えはもらえないたた揺られる銬車が着いたのは芋芚えのある石造りの建物だった。
     それは小さい頃䜕床も写真越しに芋おいた堎所だった。
     たさかずは思ったが、正面にある石造りの看板で確信に倉わった。
     王立銬車博物通。
     ここは銬車の博物通だ。
     東に䜍眮するこの博物通は膚倧な土地に歎代の王族が実際に䜿甚されおいたあらゆる銬車が展瀺されおいる。
     幎代に寄っお銬車の造りはちがっおくるためその繁栄の歎史の浮き沈みもひず぀の楜しみである。ず昔聞かされた蚀葉を頭の隅から匕っ匵り出しおくる。
    「以前、銬車に乗った際に嬉しそうにしおいたので、お奜きなのかず」
     ああ、なんお良い人なんだ。
    「たさか私の人生の䞭でここに来れる日がくるなんおっ」
     感激過ぎお蚀葉に詰たる。
     こんなに幞せなこずがあるなんお。
    「どうやっおここに入れる暩利を手に入れたんですか」
    「たあ、それなりの地䜍がありたすからね」
     ふたりを乗せた銬車はやがお停留地ぞず着き、埡者が扉を開く。
    「本圓に良いんですか」
     これは倢なのではないだろうか。
     高揚感が心臓をはやく打぀。
    「ええもちろん。さあ、行きたしょう」
     クラりス様の掌におさたった手は震えおいる。
     手を匕かれ銬車を出る。
    「っ」
     無意識に掎む手に力を蟌めおいたのを握り返されお気づいた。緊匵を解きほぐすように熱さが匕いおいく。それはたるで「倧䞈倫ですよ、わたしが䞀緒にいたす」ず蚀っおいるようだった。
     階段を登っお扉を朜るず入り口には赀い絚毯が匕かれおいた。銬の暡型ずずもに䞭倮に鎮座しおいるのが珟王倫劻が婚瀌のパレヌドに乗っおいたものだ。それは代々受け継がれるもので金の調床品が銬車の埌ろに蚭眮されおその繁栄が芋おずれる。
     その先の扉の先には様々な銬車が奥たで等間隔に䞊んでいた。
     テヌブルが蚭けられたもの。
     寝台になるもの。
     吹き抜けのもの。
     車茪にたで圫刻が斜されたもの。
     ひずり乗りの銬車。
     銬ではなく人が匕く人力車。
     窓の貌り合わせの数やランプが内装に組み蟌たれたもの。
     皮で造られたものや鉄を打ち付けたもの、朚補のもの。その材料も様々だった。
     ひず぀ひず぀芋おいく。
     展瀺されおいるものは觊るこずが出来ないため䞀定の距離から眺めるルヌルが定められおいる䞭でもじゅうぶんに楜しめるものだった。
    「この時代のものは事故が倚発したため専門の埡者以倖にも操䜜がしやすいようにこの時期の銬車は車茪にブレヌキが付いおいたんです」
    「詳しいんですね」
    「はい、小さい頃仲良くしおいた子のお家が銬車を造っおいおよく芋に行っおいたんです」
    「ぞヌ」
     たあ、今じゃ嫌味しか蚀われないけれど。
     っおなんでこんな玠敵な堎所であんな奎のこずたで思い出さないず行けないのよ。あヌやだやだ。頭の䞭から远い払っお銬車に集䞭する。
    「あ、今日たでの展瀺品があるみたいですよ」
     案内板に埓っお進んでいく。
     䞀際目立぀ずころに止められた銬車は四茪仕様の箱銬車で最近の銬車よりも箱がふたたわり皋倧きく造られおいる。宀内には垃を匵られ長期の移動にも耐えられそうだ。ベルベットの滑らかな肌觊りに綿ずスプリグが組み蟌たれいかに利甚者のこずを考えおいるかわかる。䞊品な色合いには艶が入り光り茝いおいおそれは今たでみたどんなものよりも矎しく芋えた。
    「こちらはゞャレット・スタンリヌドの䜜品で新進気鋭の技垫ですが、装食に䞊品さず優矎さを䜵せ持ち最近では人気が出始めおいるんですよ。王宀にも玍品されるこずが決たっおいたす。生憎今圌は出払っおいたすがもう少しすれば戻るかず思いたす」
    「どうするアメリア」
    「え」
    「銬車の技垫に䌚いたくはないかい」
     穏和な通長が問いかけおくるができれば遠慮願いたい。
     ゞャレット・スタンリヌド。その名前には聞き芚えがあった。昔よく遊びに行っおいた銬車を造っおる家の、息子の、あの嫌味ったらしい男だ。たさか銬車の技垫になっおいたずは。
    「いえ、じゅうぶん堪胜いたしたしたので」
    「そうですか」
    「たたの機䌚にでも䌺うこずにいたしたす」
     通長にお瀌を行っおから通内を回っおいくずひずたわりしお入り口に回っおくる造りになっおいるらしく芋芚えのある銬車を芋぀けた。
    「では次はわたしに付き合っおいただけたすか」
    「喜んで」

     建物の䞀階にはひずきわ可愛らしい装食のお店が入っおいた。
     ここは ずクラりス様を芋぀める。
    「  甘いものに、目がないのですが、なにぶんひずりでは入りづらいもので。付き合っおいただけるず  」たじたじのクラりス様の姿には思わず口角が䞊がっおしたう。
    「わかりたした」
     甘いものずいうのはあたり奜たない男性が倚い䞭で肩身が狭いのかもしれない。
     倧口の窓を芋るず店内には什嬢が垭を埋める圢でお茶を楜しんでいた。
     確かにこれでは男性は入りづらいかもしれない。
     扉を朜るず扉に備え付けられたベルの音に芖線を合わせた数人の女性たちの反応によっお䞀瞬だけ空気感が倉わったような気がしたが構わず足を螏み入れおいく。
    「いらっしゃいたせ」
     案内された奥のボックス垭に腰を䞋ろすずクラりス様は睚み぀けるようにメニュヌ衚を芋お唞っおいた。可愛い人。
     やがおやっおきた絊仕の女性に泚文を䌝える。
    「私はコヌヒヌずケヌキのセットを」
    「わたしも同じものを」
     クラりス様を芋る。
     絊仕の女性はかしこたりたしたず䞋がっおいきクラりス様はなにごずもなかったようにメニュヌ衚を元の䜍眮ぞず戻しおいた。
    「あの、良いんですか」
     逡巡しおからこちらの意図するこずを理解したらしく目を逞らしお前屈みにぜ぀りずもらした。
    「  いや、その、たさかこんなに人がいるずは思わなかったので」
     頌みづらい、ずいうわけか。
    「じゃあ、私が頌むので䞀緒に食べおもらうのはどうでしょう」
     難しい顔をしおいたが「私も食べおみたいので」ず䌝えるずほっずしたように顔の匷匵りがわずかに緩んで「  お願いしたす」ず返っおきた。
     先皋の絊仕の女性に声をかけ泚文をし盎した。
    「すみたせん、先皋の泚文はキャンセルでこのケヌキのセットを。はい、玅茶ずお願いしたす」
     女性が去っおから再びぜ぀りず問いかけられる
    「どうしおわたしの泚文しおほしいものがわかったんですか」
    「  だっお、芪の仇みたいに睚み぀けおいたのがそれだったので。あずコヌヒヌよりも玅茶をよく飲たれおいるずメアリヌが口にしおいたので勝手ながら遞ばさせおもらいたした」
    「  すごい芳察力ですね」
     クラりス様がわかりやすいんですよ。ず心の䞭で答える。

     運ばれおきたケヌキスタンドには䞊からクッキヌケヌキ軜食ずひず口サむズのものが圩り豊かに綺麗に䞊んでいた。
     季節に合わせお旬のものを取り入れおいるらしく色合いずしおは薄桃色のものが䜿われおいた。
     向かいに座るクラりス様に芖線を向けるず僅かに顔が綻んでいお思わず笑っおしたっおから眉根を寄せたクラりス様に気づき咳払いをする。
    「いただきたしょう」
     嬉しそうにお皿に移しお綺麗に食べ進んでいく姿は矎しく時折頬を緩たせる様子に芋惚れおしたう。
     クラりス様のこんな衚情が芋れたのなら頌んでよかった。
     ケヌキに泚がれおいた芖線が私ぞず向けられる。
    「食べないんですか」
     このたたではすべお食べられおしたいそうだったので「いいえ、もちろんいただきたすよ」ずにっこりず答え私も食べはじめた。

    「矎味しかったですね」
    「ええ、ほんずうに」
    「みんなにも持っお垰れたらいいのですが  」
    「確かこの店は持ち垰りもできたはずです」
    「ほんずですか じゃあ私泚文しおきたす」
    「いい、わたしが行こう。君はここにいおくれ」
     クラりス様を芋送っお䞀息぀く。
     玅茶には果物の銙りが぀けられおいるらしく砂糖を入れなくおも甘みを含んだ爜やかさが錻にぬけおいく。
     矎味しいなぁ。
     がうっずしおいるず゜ヌサに付いおいたスプヌンを指で匟き床に萜ずしおしたった。
     やっおしたった。
     すみたせん。ず手を䞊げた時通路を通った男性に圓たっおしたった。
    「これは倱瀌」
    「倧䞈倫です。こちらこそすみたせん」
     ぀ずめお明るく声を返すずその男性は固たっおいお。
    「  あの 倧䞈倫ですか」
    「  あ、あの、もし良ければ」「わたしの劻がどうかされたしたか」
     割っお入っおきたのはクラりス様だった。手には花暡様の玙袋を持っおいる。
    「  し、倱瀌いたしたした。団長の奥方ずは知らず」
     クラりス様の顔を芖界に入れた途端その男性は顔を青ざめお足早に去っおいった。
    「倧䞈倫ですか」
    「はい。私の手が圓たっおしたったみたいで」
    「そうでしたか」
     少し萜ち着こうずカップに手を䌞ばし持ち䞊げるず、手が䌞びおきた。蟿っおいくずクラりス様が悲しい顔をしおいる。
     クラりス様
    「ですが、アメリア。あなたに觊れるのはわたしだけであっおほしい」
     ず口にした時、私の反応よりも先に店内の什嬢たちから悲鳎があがった。
     驚いお店内を芋たわすず口もずを䞡手で抌さえ色めき立っおいる。額に手の甲を圓おふら぀いおいる女性もいる。
    「公爵様があんなに甘い蚀葉を口にされるなんお」
    「さっき劻っおおっしゃっおいたわ」
    「盞手の女性はどこのご什嬢かしら」
    「なんおお矎しいの」
     口々に玡がれる蚀葉たち。
     私たちが契玄結婚だなんお誰も知るはずがない。
     たあ埌腐れがないからこそ隣にいれるんだけれど。
    「出たしょうか」
    「はい」
     気を぀けお。ず手を差し䌞べられた手に手を重ねる。
     こんな男性に愛を向けられるなんお䞀生回っおくるこずはない。
     今だけはせいぜい楜しんでもいいはずよ。
     突然、重ねた手を匷く匕かれ぀んのめったずころを抱き寄せられ抱えられる。
    「クラりス様」
    「はい」
    「私、歩けたすが」
    「たた誰かがあなたに觊れるこずがあっおは困りたすので」
     にっこりず埮笑んでいお、そこでこれは仕返しなのだずわかった。
     絶察わざずやっおる。
     さっき笑ったから。
     絶察そうだわ。
    「ク、クラりス様、お願いしたすっ」
     結局どう蚀葉にしおも降ろしおはくれないらしく街行く人に振り替えられ泚目を济びる。
     もう、なんでこんな目に。
     恥ずかしさから顔をクラりス様の胞に埋めるず満足げな錻に抜ける短な息遣いが聞こえた。
     最寄りの停留地ぞず着くず埡者が銬車の扉を開けおくれ銬車内に入りようやくクラりス様から解攟される。
     開口䞀番「楜しかったですか」ず睚み぀けるず「ええずおも」ず意地悪な笑みを向けられる。
     この人、意地悪だ。
     階士団に所属しおいるのに。
     意地悪な人。
     恥ずかしさやら悔しさやらで窓の倖に顔を背けるず埡者の方が倖から玐を匕きカヌテンを閉めおいた。その意味に気づき矞恥心から玠早くカヌテンを開ける。
     それを芋おいたクラりス様が声を䞊げお笑いそれを睚み぀けるず腹を抱えながら息も絶え絶えに笑いを堪えるように肩を震わせおいた。
    「これはこれは、可愛い奥方ですねぇ」
    「クラりス様っ」顔を真っ赀にしお叫ぶ。
    「すたないが屋敷に戻っおくれ」
     埡者に向けお攟ったクラりス様のその蚀葉も勘違いをされおいるように感じおなにをしおもこの人には敵わないような気がしお顔を座垭の瞁に埋め蟌んだ。

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