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誰にも言ってない“脱出計画”がある。|第十六話


    教習所に通い始めて、

    少し不思議なことがある。

    思っていたより、

    楽しい。

    最初は怖かった。

    重たいし、

    転びそうだし、

    覚えることも多い。

    正直、

    向いてないと思っていた。

    でも、

    何回か乗っているうちに気付いた。

    あれ?

    意外と嫌いじゃない。

    むしろ好きかもしれない。

    その日も、

    いつものように教習が始まった。

    発進。

    停止。

    カーブ。

    スラローム。

    気付けば、

    前より自然にできていた。

    もちろん失敗もする。

    でも、

    失敗しても少し笑えるようになっていた。

    前の私なら、

    できないことばかり見ていた。

    でも今は違う。

    昨日よりできたことを探している。

    教習の終わり際、

    教官が言った。

    「最初にしては上手ですよ。」

    社交辞令かもしれない。

    みんなに言っているのかもしれない。

    それでも嬉しかった。

    帰り道、

    ヘルメットを抱えながら歩く。

    気付けば、

    次の教習が少し楽しみになっている。

    そんな自分に驚いた。

    最近、

    脱出計画のために始めたことが増えた。

    貯金。

    計算。

    将来のこと。

    どれも不安ばかりだった。

    でも、

    教習所だけは違う。

    純粋に楽しい。

    そして、

    ふと思った。

    もしかして私、

    案外センスあるのかもしれない。

    もちろん気のせいかもしれない。

    でも、

    そう思えるだけで十分だった。

    家に帰ってノートを開く。

    そこに、

    新しい一行を書いた。

    『今日の発見』

    そして、

    その下にこう書いた。

    『私は、思っていたよりできる人かもしれない。』

     
     
    誰にも言ってない“脱出計画”を記録してる。 冬までに、少しずつ。。。

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