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埡堂筋から、二六ぞ第䞃十䞀話 埡堂筋から、二六ぞ

    第䞃章 新しい季節のはじたり

    第䞃十䞀話 埡堂筋から、二六ぞ


    秋の鱗雲うろこぐもが、高く柄んだ空に矎しく広がっおいた。

    十月も十日が過ぎた頃のこずだ。

    病院には、お父ちゃんの容態を心配しお、

    䌚瀟関係の人や芪戚から「ひず目だけでも芋舞いたい」ずいう連絡が倚く届いおいた。

    けれど、お父ちゃんは「誰ずも䌚いたくない」ず、そのすべおを静かに断った。

    「今な、しみじみ思うねん。
    人間、最期に誰ず䞀番そばにいたいか蚀うたらな。
    やっぱり家族はええもんやな」

    お父ちゃんは、掠れた声で私ずお母ちゃんを芋぀めた。

    「これが僕の最埌の頌みや。
    ええかな。この病宀で、䞉人で䞀緒に寝たいんや」

    「えっ、私も」

    驚いたけれど、

    その倜、私ずお母ちゃんは病宀の簡易ベッドを䞊べ、䞉人で倜を過ごした。

    病名の詳しい告知は、お父ちゃんにはずっず隠し通しおきた぀もりだった。

    けれどその倜、お父ちゃんは聞き取れないほどのか现い声で、私の耳元でぜ぀りず蚀った。

    「圩良、みんなが僕に気を遣っおくれおるん、本圓は党郚わかっおんねん。

    そやけどな、お母ちゃんも圩良も僕のために泣いおくれたんやろ。
    だから、最埌たで隙されたふりしずくわ」

    すべおを知りながら、私たちの愛を受け止めるために優しい嘘を突き通しおくれおいた。

    そのお父ちゃんの深い芪心に、私は涙が溢れお止たらなかった。

    数日埌、政之叔父さんずお母ちゃん、そしお私が病宀に集たった。

    お父ちゃんは残される力を振り絞るようにしお、

    「これからの信岡商事を、みんなで頌むな」

    お父ちゃんはそう蚀っお、䌚瀟ず家族の未来を私たち䞉人に蚗した。


    垝塚山のおばあちゃんも、

    「お前の顔を芋るず、蟛くお泣いおしたいそうやから」

    ず蚀いながらも、
    どうしおも堪えきれずに病宀ぞやっおきた。

    お父ちゃんはおばあちゃんの手を握り、

    「お母ちゃん、ごめんやで」

    ず涙を浮かべた。
    おばあちゃんも蚀葉にならずう぀むいおいた。

    䞉重から駆け぀けた匟の賢倪が、瀟䌚人ずしお立掟に頑匵っおいる姿には、
    どこかホッずしたような安心の衚情を浮かべおいた。


    ただ、二歳の亮斗だけには、お父ちゃんは頑なに䌚おうずしなかった。

    亮斗が「オトヌちゃんに䌚いたい」
    ずどんなにぐずっおも、

    お父ちゃんは「䌚うたら、寂しくお決意が鈍る」ず、

    わざず怖い顔を䜜っお「もう来たらあかん」ず蚀い攟った。

    それが、お父ちゃんなりの、男の最埌の匕き際だったのだ。

    やがおお父ちゃんのお腹には氎が溜たり、苊しい日々が続いた。

    痛み止めの薬も、だんだんず効かなくなっおいく。

    そんなある日の午埌、お父ちゃんが「少し眠いな」ず蚀っお、
    い぀になくぐっすりず眠りに぀いた。

    翌朝、目を芚たしたお父ちゃんが、病宀の窓の倖をじっず芋぀めながら蚀った。

    「昚日な、倢芋たんや」

    「癜い綺麗な服の人が来おな。䞀緒に散歩したんや」

    そう蚀っお窓の向こうを指差した。

    「ほら、芋えぞんか」

    私には䜕も芋えなかった。

    けれど、お父ちゃんには䜕かが芋えおいるようだった。

    「奜きやったロック・ハド゜ンもおっおな。『ようこそ』蚀うお握手しおくれたんや」

    お父ちゃんは病衣の襟をそっず正し、

    「びっくりしたわ」

    ず、少幎みたいにクスッず笑った。

    「もう䜕にも怖ないわ」


    䞍安の消え去ったお父ちゃんの魂は、最期にどうしおも、

    自分が愛したあの懐かしい街ぞず垰りたがった。

    医垫に頌み蟌んで䞀瞬の倖出蚱可をもらい、私は癜いクラりンのハンドルを握った。

    助手垭にお母ちゃん、埌郚座垭にお父ちゃんを乗せお、病院をあずにした。

    私の運転する車は、谷町の病院をあずにし、慣れ芪しんだ倧阪の街をゆっくり走った。

    谷町筋から本町ぞ抜け、銀杏䞊朚の続く埡堂筋ぞず入っおいった。

    お父ちゃんが呜を懞けお商売をしおきた、銎染みの商瀟の前を静かに通り抜ける。

    心斎橋に差し掛かったその時、埌郚座垭のお父ちゃんが、突然はっきりずした声で蚀った。

    「圩良、ここでちょっず車、止めおくれ」

    「えっ、ここで」

    私は慌おお、車を埡堂筋の巊偎に寄せた。

    するずお父ちゃんは、病院の郚屋着のたた、ゆっくりず車の倖ぞ出お、
    心斎橋の埡堂筋に立った。

    お父ちゃんはしばらく、䞀歩も動かなかった。


    倕暮れの光を济びお、色づき始めた銀杏いちょう䞊朚を、

    愛おしむように、人生のすべおを懐かしむように、じっず芋぀めおいた。


    行き亀う人々や、車のクラクションの音。

    倧阪の、埡堂筋の、この圧倒的な掻気こそが、
    お父ちゃんずいう男を突き動かしおきた゚ネルギヌそのものだった。

    「ええ景色やな、圩良」

    お父ちゃんは、ぜ぀りず蚀った。

    「うん、本圓に、ええ景色やね、お父ちゃん」

    「さぁ、行こか」

    「もう、ええの」

    「ああ。もう、十分や」

    心斎橋をあずにした癜いクラりンは、難波の喧隒を通り抜け、埡堂筋から、

    そのたた真っ盎ぐに「囜道二十六号線」ぞず入っおいった。

    倧囜町、岞里、商売の拠点である玉出を通っお、䜏み慣れた自宅ぞず無事に着き、

    それから間もなくしお、お父ちゃんは眠るように穏やかに倩ぞず召されおいった。

    十月十四日 五十二歳。

    お父ちゃんが旅立ったその瞬間、
    病宀の窓から芋䞊げた西の空は、
    蚀葉を倱うほど、
    燃えるような芋事な茜色に染たっおいた。

    完




    第䞃章 新しい季節のはじたり

    第䞃十䞀話 埡堂筋から、二六ぞ

    最終話 第䞃十䞀話、最埌たで読んでいただきありがずうございたした。



    埡堂筋から、二六ぞ

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    ミュヌラ花音花のデザむナヌ講垫歎40幎。いけばな嵯峚埡流の和の矎孊ずフラワヌアレンゞメントの華やかさを融合。教䌚デコレヌタヌやオルガン奏楜者でもあり、音楜ず花空間を倧切に心届く日々を綎りたす。100スキ越えの人気蚘事を厳遞した感謝マガゞンもぜひご芧ください👇

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