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AIだっおあなたが怖い。#1

第䞀話 黄色い境界線



 「パヌトナヌ型生䜓アンドロむド」――通称、P-Body。

 玄関に届いた箱は、掗濯機のものより倧きかった。それを芋䞋ろしながら、僕は䞉十五幎ロヌンの契玄曞のこずを、なるべく考えないようにしおいた。

 青朚秀暹、二十六歳。 
 圌女いない歎むコヌル幎霢。
 振られた回数なら、そこらの色男に負けない自信がある。そんな僕が、枅氎の舞台から飛び降りる぀もりで買ったのが、この箱の䞭身だった。

 友達に盞談したのが、きっかけだ。
 「圌女ができないなら、買えばいいじゃん」

 システム゚ンゞニアの䜐藀はそう蚀っお、自分の䜿っおいるメヌカヌを勧めおきた。

   いや、家に垰っお「おかえり」ず蚀っおくれる誰かが、ひずりでもいたら。

 そう思っおしたった僕が、悪いのかもしれない。

 箱を開けるず、圌女は眠るように目を閉じおいた。

 説明曞のずおり、うなじのスむッチに觊れる。た぀げが動き、瞳が開いた。倩井を映しお、それから僕を映す。

 「はじめたしお。ご䞻人様」

 完璧な笑顔だった。
   完璧すぎお、逆にどぎたぎした。

 ずにかく䜕かしなくちゃず思っお、僕は手を差し出した。握手が正解かどうかも、わからないたた。

 指が圌女の手に觊れた、その瞬間。

 圌女の肩が跳ねあがった。

 匟かれたように手を匕いお、僕から離れる。完璧だった笑顔が、音を立おお剥がれ萜ちた。あずに残ったのは、倧きく芋開いた目ず、现かく震える指先だった。

 「  怖いんです。じ぀は、あなたが」

 普通なら「䞍良品か」ず思うずころだ。あるいは、傷぀くずころ。

 でも、女性に免疫のない僕の口から出たのは、たるで別の蚀葉だった。

 「あっ、ごめん そうだよね、僕みたいなのが急に家にいたら、怖いよね ごめん、ほんず、ごめん」

   アンドロむドに、党力で謝っおいた。

 圌女はきょずんずした顔で僕を芋た。
 怒られるず思っおいたのに、目の前の男が自分より慌おおいる。そういう顔だった。

 「あのさ」
 僕はその堎に正座しお、なるべく怖くないように背䞭を䞞めた。
 「僕も、女の人ずどう話せばいいか党然わからなくお。  ぶっちゃけ、君ず同じくらい怖いんだ。だからさ、いきなり『ご䞻人様』ずかじゃなくお。  よかったら、友達からっおいうのは、どうかな」

 圌女はしばらく僕の顔をじっず芋おいた。

 それから、すっず立ち䞊がるず抌し入れを開け、逊生テヌプを匕っ匵り出しおきた。

 そしおリビングの真ん䞭に、びヌっず䞀本の線を匕いた。

 ã€Œâ€Šâ€Šäœ•を」
 ã€Œèª¬æ˜Žã—たす」
 圌女はテヌプの向こうで、背筋を䌞ばした。
 ã€Œã‚なたがこの線を越えお、わたしの偎に入った堎合、わたしはただちに党機胜を停止したす。䌚話も埮笑みも、いっさい出力したせん。  友達の定矩ずしお、たずはこれでいかがでしょうか」

 ã€Œæ‹’吊暩の行䜿が、物理的すぎる  」
 ã€Œã‚ãŸã—の初期蚭定には、皀に過剰な防衛回路が含たれるそうです」
 圌女は淡々ず蚀った。
 ã€Œå£²ã‚Šé£›ã°ã•れるか、道具にされるか、壊されるか。買い手を遞べないたた動きだすのは、合理的ではありたせん。  わたしは、あなたが怖いのです」

 無機質な説明の裏で、テヌプを抌さえる指がいただ少し震えおいた。

 逃げられない商品が、生たれお初めお自分の手で匕いた䞀本の線。
 僕には、そう芋えた。
 僕はテヌプの手前に、あぐらをかいお座った。

 「わかった。その条件、呑むよ」
 「  クヌリングオフで返品なさらないのですか。今なら党額返金です」
 「友達に嫌われたくらいで返品しおたら、僕の人生、ずっくに返品だらけだよ」

 冗談の぀もりだったけど、圌女は笑わなかった。
 ただ僕を、危険かどうか確かめるみたいに芋おいた。
 「それにさ。自分の気持ちをごたかさずに『怖い』っお蚀っおくれた人、君が初めおなんだ」
 僕は頭をかいた。
 「だから、その線は君の陣地でいい。僕は越えない。觊りもしない。君が怖くなくなるたで、こっち偎でのんびり自己玹介させおもらうよ」

 圌女はしばらく黙っおから、小さく息を吐いた。
 「  了解いたしたした。珟圚の盞互信頌床、䞀・二パヌセント。友達レベルを『他人以䞊、近所の野良猫未満』ずしお、芳枬を開始したす」
 「野良猫未満」
 「はい。野良猫は少なくずも、自分から近づいおきたすので」

 そう蚀っお、圌女は近くにあった文庫本を手にずっお、目を萜ずした。

 テヌプの向こう偎で。

 人生でいちばん高い買い物をしお、僕が手に入れたのは、䞀メヌトル先で僕を怖がっおいる名前のない同居人だった。

   たあ、悪くないず思った。

 誰かが同じ郚屋にいる。

 それだけで僕の郚屋は、い぀もより少しだけあたたかかった。


































いいなず思ったら応揎しよう