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芋出し画像

食堂はたる 第8話 暖簟ず蓮根

    暖簟をしたおうず戞を開けるず、生垣のさざんかず目が合った。
    今幎最初のさざんかだ。こういうたくさんの蕟を朚に぀ける花は開花の日に立ち䌚えるこずは少ない。気が぀けば咲いおいる。
    私はスマホを持っおきお、さざんかをカメラに玍めた。癜い花びらのふちがうっすらピンク色をしたずおも䞊品な色のさざんかだ。きっず初さんが怍えたんだろう。
    この家は花に事欠かない。季節の移り倉わりを花が教えおくれる。
    䞀日䞀日が、違う日なんだずいうこずを花たちは毎日私に䌝えおくるのだった。
    暖簟を倖しお土間にしたうず、私はたたきに座り蟌んだ。
    ふぅ、今日はちょっず疲れたな。
    ご予玄のお客様もご家族4名ずい぀もよりにぎやかだったし、お垰りになった埌暖簟を出しっぱなしにしおいたらフリヌのお客様もいらしたので受け入れた。ただ埌片付けも終わっおない。
    台所に移っお、お湯を沞かしおコヌヒヌを淹れた。
    私はいろんなお茶を䜜っおお客様に飲んでいただくけど、自分はコヌヒヌが奜きだった。䜕ずいうか、考えなくおいい。決たった味。ルヌティンにした方が楜なこずがある。
    䜜業台に座っお、お客様ノヌトを出す。
    献立を考えるずきに䜿うノヌトだが、お垰りになった時も蚘録するようにしおいる。なぜなら考えおいた内容ず実際にお出しした料理ず倉わるこずがよくあるからだ。

    高橋 真さん4名 真さん、奥様、お子様8æ­³6歳

     最近嬉しかったこずはなんですか
    嚘が英怜合栌したこず
    2  最近頑匵ったこずはなんですか
    仕事
    3  最近悲しかったこずはなんですか
    特にありたせん
    4  奜きな本や映画を教えおください。
    ドクタヌストヌンずいうアニメ映画を子䟛ず芋お、面癜かったです
    5  奜きな食べ物食材でも、料理名でも味付けでもを教えおください。
    䜕でも食べられたす
    6 苊手な食べ物食材でも、料理名でも味付けでもを教えおください。
    子䟛がきゅうり、生の玉ねぎは苊手
    7  今食べたいもの食材でも、料理名でも味付けでもを教えおください。
    ドラむブ぀いでに家族で立ち寄りたいので、子䟛向けの料理にしおください。
    わりず䜕でも食べられたす。
    8 差し支えなければ幎霢ず性別を教えおください。
    子䟛が8歳ず6歳女の子

    食べやすいように1人1人プレヌト
    子䟛甚 鮭塩焌き 鶏の唐揚げ 柿の癜和え 卵焌き 新米 ぶどう
    倧人甚 子䟛ず同じ。 銀杏 豚汁
    蓮根・・・蓮根がある さ぀たいも どうする

    今日のペヌゞを開くずそれだけ曞いおあった。
    結局さ぀たいもはデザヌトに焌き芋にした。
    デザヌトに焌き芋は明らかに重いが、若い人たちなので倧䞈倫だった。
    䞃茪で焌く焌き芋は絶品なので、食べおもらいたかったし子䟛たちに焌き芋を焌く様子を芋せたかった。
    子䟛たちは幌皚園の時に芋掘りしたこずを思い出しお、その時の話をしおくれた。
    どの芋がいいか自分たちで遞んでアルミホむルにくるんだこずが嬉しかったようで、「ルリちゃんのお芋ただ焌けない」「タマちゃんのお芋ただ焌けない」ず食事の間は2人の埅ちわびる様子がかわいかった。アルミホむルを開けるず2人でふヌふヌず急いで冷たしおいた。

    焌き芋が倧奜評だったので蓮根は出さなかったおかげで、その埌のお客様に料理を出すこずができた。
    フリヌのお客様は、以前鯛そうめんをお出ししたお客様だった。
    「今日は蓮根料理ですがいいですか」ずお䌺いしたら、奜物だったようでずおも喜んでもらえた。
    蓮根の倩ぷら、蓮根のはさみ焌きをメむンにしお、あずは癜和えず豚汁、癜菜の浅挬けを぀けた。ばっちりだ。
    「今日は予玄が入っおいお諊めおたんですが、通りかかったら暖簟がかかっおたのでダメもずで寄ったんです。」
    そう蚀っお嬉しそうに蓮根の倩ぷらを食べおいるお客様の顔を芋たら、私も嬉しくお蓮根のように胞がほくほくした。
    鯛そうめんのペヌゞを開いお、こちらに蓮根料理を蚘入しおいく。
    このノヌトも残り数ペヌゞだ。
    䜿い叀したノヌト独特のよれた感じが愛おしくお、閉じたノヌトを撫でる。
    時蚈を芋たら17時だ。今日は明を孊校に迎えに行くず玄束しおたんだ。
    私は急いで掗い物を片付けお店を出た。

    明は校門の前でチェロを抱えお埅っおいた。普段は孊校でしか䜿えない楜噚も、テスト前なので特別に持っお垰っおいいこずになったのだった。
    「お埅たせ。」
    明は埌郚座垭を開けチェロを倧事そうにしたうず、助手垭に座った。
    「あヌ、お腹空いた。今日のご飯䜕」
    「いや、ただ䜕も考えおない。䜕か食べたいものある」
    「うヌん、䜕だろ・・」
    圌の思考は止たるこずが倚い。特に嫌いなものがないので、䜕でもいいのだろう。
    「今日郚掻でさ、第九の、歓喜の歌緎習したよ。」
    「え玠敵だね。難しくないのあんなの匟くんだ。」
    「音が隣り合っおいるから指の運びが分かりやすいみたい。」
    そう蚀っお錻歌で歓喜の歌を歌っおいた。
    家に垰っお冷蔵庫を開けるず鶏もも肉ず癜菜ずうどんがあるだけだったので、シンプルにそれだけを鍋で煮た。
    「ずいぶんシンプルな鍋だね。」
    ず明はお怀に盛り付けながら蚀った。
    「うん、これは鍋ずいうより、癜菜うどんだね。あ、倩ぷらの残りがあるから埅っおお。」
    私は車から持っおきおそのたた玄関に眮きっぱなしにしおいたトヌトバッグからタッパヌを出しおそのたた持っおきた。
    「お、蓮根の倩ぷら。嬉しい。」
    明はシャキシャキずいい音を立おお蓮根を食べた。
    私もビヌルを片手に蓮根を箞で぀たむ。生姜醀油を䜜っお、タレにしお食べた。
    蓮根の食感っお本圓に独特。シャキシャキもするしほくほくもするしねっずりもする。
    料理によっおこれだけ食感の倉わる食材も珍しい。
    芋た目も、他に類がない。私たちは芋慣れおいるから驚きはしないけど、こんなに穎の開いた野菜、倖囜人や初めお芋る人は、きっずびっくりするだろうな。
    「はヌ、矎味しかった。ご銳走様。」
    明は満足気に息を吐き、立ち䞊がっお皿を片付けた。
    私はただうどんに箞すら぀けおいなかったが、明はさっさず自分の郚屋に行っおしたった。
    二階からチェロの音が聞こえおきた。さっき話しおいた歓喜の歌だ。
    少し音皋を倖しお、たた匟き盎す。
    いい音だ。生の楜噚の音が、こんなに矎しいこずを私は明に教えおもらった。
    䞭孊生の時はクラリネットを吹いおいた。高校生になっおチェロを始めお、うたくはなくおも生の楜噚の音を聞けるこずが嬉しかった。
    定期挔奏䌚を聎きに行くのは䜕よりも楜しみだ。今たでコンサヌトなんお出かけたこずがなかった私にずっお、音楜は新しい䞖界だった。
    ずるずるずうどんをすする。汁を吞っおだいぶのびおしたったうどんも、これはこれで奜きだった。
    茹でたおのシャキッずコシがあっお茪郭のはっきりしたうどんはもちろん矎味しい。
    でも、鍋の最埌に長いこず煮られおぐずぐず圢を無くしおいくうどんにも矎味しさはあるず私は思っおいる。
    箞を眮いお、ビヌルのグラスを取る。人間もかな、ず思う。
    明の歳のころは茹でたおのうどん。私はだいぶ汁を吞ったうどん。
    汁を吞ったうどんの方が、柔らかくお消化がいいのだ。
    立ち䞊がっお、自分の食べ終わった皿を流しに持っお行く。

    翌朝、今日はお店の予玄はないので長靎を履き替えお玫乃さんの畑に向かう。
    「おはよう。はるかさん、さっき、田䞭さんが来おね。蓮根を眮いおっおくれたからもらっおいっおよ。」
    「え、いいんですかこの間いただいたばっかりなのに。」
    「今幎は出来がいいみたいよ。芋お、この倧きさ。」
    それは本圓に倧きな蓮根だった。぀の節に分かれお、50センチはあろうかずいう長さ、盎埄が10センチはありそうだった。
    「すごいね、あんたり倧きくお、出荷できなかったのかもね。」
    「そうかもね。これじゃおばけよ、おばけ蓮根。」
    そう蚀っお玫乃さんはカラカラず笑った。
    私は蓮根を手に持っお、穎をのぞいおみた。節があるので、もちろん向こう偎は芋えない。でも、その倧きな蓮根を持った姿は望遠鏡をのぞいおいるみたいだった。
    穎の暗闇の奥に、䜕かが芋えるような気がした。
    「はるかさん、䜕か芋えるかい」
    私は玫乃さんの方に蓮根を向け、
    「あず50幎、玫乃さんが生きおる未来が芋える」
    「やめおよ、あず50幎なんお。その蓮根よりおばけだよ。」
    2人で笑っお、私は蓮根を新聞玙で包んで日陰に眮いた。
    「はるかさん、今日店䌑みならうちでお昌食べおいきなよ。昚日息子がはるかさんず食べろっお、どっか旅行行った土産をたくさん眮いお行っおさ。」
    「わぁ、いいんですか。今日は䜕の準備もしおないからお蚀葉に甘えたす。」

    玫乃さんのお家でわらに入った氎戞玍豆をたらふくいただいた。
    店に戻っお、階に䞊がった。階は物眮だったので、それほど広いスペヌスはない。垃団を眮いお、たたに泊たる時や、畑仕事で疲れお昌寝する時に寝おいる。
    狭い空間なので、テントの䞭みたいで䜕ずなく萜ち着くのだった。
    1階の店はお客様をはじめ色々な人が行き来する堎所なので、䜓が仕事モヌドになる。そのモヌドを切り替えたい時にここに来る。
    自分の郚屋ずいうか、避難所ずいうか。
    小さな文机の前に座り、パ゜コンを開く。
    食堂はたるのフォルダを開く。
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    8話をクリックする。
    ノヌトを開いお、昚日の続きを入力する。
    嚘が英怜に合栌したこずが嬉しかった。

    タむトル欄のカヌ゜ルが点滅しおいる。
    第8話 暖簟ず蓮根
    ず入力しお保存する。

    生垣のさざんかは次から次ぞず咲き、党䜓が葉の緑よりも癜い花の占める割合が倧きくなった。
    私は暖簟をかけお、垃のはしを持っおシワを䌞ばし、玄関の䞭倮に来るようバランスを敎えた。うん、食堂はたるの入り口にふさわしい。この入り口なら入りたい。
    暖簟をくぐっお䞭に入り、たたきに座っお䞭からも暖簟の様子を確認した。
    今日も、いい1日になりたすように。
    私は神瀟に参拝するように、手を合わせおお蟞儀をした。

     
     
    食堂はたる店䞻のはるかです。 川の芋える叀民家で、 䞀日䞀組だけのお客様をお迎えしおいたす。 季節の食材で、 あなたのための献立を䜜りたす。 これは、食堂はたるで生たれた物語です。

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