まだ知らない「欲しくなるもの」に出会いに
旅行に行くと、お土産屋さんを何軒も巡ってしまう。
別に最初から欲しいものが決まっているわけではない。
店を見かけると吸い込まれるように入ってしまい、
似たような民芸品やお菓子が並んでいても、
なぜか次の店にも行きたくなる。
個人開発界隈では、
「なぜこのアプリが人気なのか分からない」
「ユーザーが何を欲しがっているのか分からない」
と悩んでいる人の投稿をよく見かける。
自分はあまり気にしたことがなかったな、と思った。
というより、人が何を欲しいと思うかなんて、
事前に分かるものなのだろうか。
自分でも、何が欲しいか分かっていない
お土産を買うときの自分のことを振り返ってみると、
自分自身ですら何が欲しいのかよく分かっていない。
店に入って棚を眺めて、
ふと目にとまったものを手に取る。
そこで初めて「あ、これいいな」と思う。
そもそも数秒前まで、その商品の存在すら知らなかった。
それなのに、作る側が「人が欲しいものは分かるはず」
と考えるのは、ちょっと不思議な気もする。
商品だけで選んでいるわけでもない
さらに言うと、何かを買う理由は
「商品そのもの」だけではないこともある。
「この店、センスいい~」と思って、
何か一つ買って帰りたくなることがある。
店主と少し言葉を交わして感じが良かったから、
「この店にお金を使いたい!」と思うこともある。
別の店では素通りしたキーホルダーを、
なぜかこの店でレジへ持って行ってしまうこともある。
色が良かったから?
旅の開放感に合っていたから?
その店の棚に良い感じで並んでいたから?
たぶん色んなことが、少しずつ関係している。
まだ知らない「欲しくなるもの」
そう考えると、
なぜ自分が何軒もお土産屋さんを巡るのか、少し分かった気がした。
欲しいものを探しているというより、
まだ自分も知らない「欲しくなるもの」に
出会いに行っているのかもしれない。
最初から決まっているなら、一軒目で買って帰ればいい。
でも実際には、路地を歩きながら次の店を覗いてしまう。
「これはちょっと違う」
「これはなんか好きだな」
「この店、居心地いいな」
と回りながら、自分自身の「好み」と向き合っている感覚。
アプリも、少し似ているのかもしれない
これは、個人開発のアプリやゲームにも通じるものがある気がする。
人がアプリを使う理由も、
「求めていたアプリだから」だけではないと思う。
なんとなくアイコンやUIの雰囲気が好きだった。
アプリの名前の響きが気になった。
作っている人の他の作品や人柄が好きだった。
そんな理由で使われることもあるのではないか。
とりあえず、店先に並べてみる
もちろん、使ってくれた人の声に耳を傾けたり、
「なぜ使われているのか」を分析したりすることは大事だと思う。
ただ、人が何かを好きになる瞬間には、
もう少し偶然だったり余白があるような気がしている。
「人が欲しいもの」を当てることに頭を抱えるより、
自分が「これいいな」と思えるものをとりあえず並べてみる。
それくらいでいいのかもしれない。
誰かがたまたまふらっと通りかかって、
「こんなの探してなかったけど、なんか好き」
と手に取ってくれたら、作り手としては最高にうれしい。
そんなことを考えていた。
