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筋肉の神に愛されし少女「赤毛のマッスルアン 」モンゴメリ名作が筋トレ小説に✨

カナダ東部、プリンス・エドワード島。

グリーン・ゲイブルズに暮らすマシューとマリラの兄妹は、農作業を手伝ってくれる男の子を孤児院から迎えることにした。

二人とも年を取り、畑仕事や薪運びが少しずつ重荷になっていたからである。

ところが手違いにより、駅にやって来たのは十一歳の赤毛の女の子だった。

そばかすだらけの顔。
ひどく古びたトランク。
ワンピースの胸元のボタンははち切れんばかりの大胸筋が存在を放っていた。
スカートが風になびくと裾がふわりと浮かぶと競走馬のような脚が現れた。

そして、一度口を開けば止まらない。

「あなたがマシューね? 迎えに来てくれて本当にうれしいわ。もし誰も来てくれなかったら、あの桜の木の下で一晩過ごそうと思っていたの。でも、木の枝がかなり丈夫そうだから、眠る前に懸垂もできたと思うのよ。あの枝なら順手と逆手、両方できそうじゃない?」

マシューは、黙ってうなずいた。

アン・シャーリーは、自分のトランクを右手に、マシューの荷物を左手に提げ、駅から馬車まで歩いた。

「持とうか」

とマシューは言ったが、アンは首を振った。

「平気よ。左右の重さが少し違うのが気になるけれど、ファーマーズウォークだと思えばいいもの」

アンは途中で一度も荷物を置かなかった。

グリーン・ゲイブルズに到着すると、マリラは目を丸くした。

「まあ、マシュー。女の子じゃありませんか」

「そうなんだ」

「私たちが頼んだのは、畑仕事のできる男の子ですよ」

「そうなんだが、この子は駅からずっと、二つの荷物を持って歩いてきたよ」

マリラはアンの手を見た。

細い指の付け根に、固いまめができていた。

「あなた、農作業をしたことがあるの?」

「ええ。水汲みと薪運びと、重い鍋を持つのは得意よ。」

空想の大好きな少女・アンは、家の周りを見渡し瞳を輝かせた。

「あの納屋の梁なら懸垂ができる。
牛乳缶はファーマーズウォークに使える。
薪は前で抱えてザーチャースクワットなんてどうかしら。
井戸の桶でワンハンドロー。
あの大きな石はゴブレットスクワットにちょうどよさそう。あの丘を丸太を引いて登れば、きっと臀筋が希望に満ちあふれるわ!」

こうしてアンは、男の子の代わりにグリーン・ゲイブルズへ置いてもらえることになった。

労働力として即戦力だったからである。


アンは島にあるものすべてに名前をつけた。

胸を張って歩く雄鶏は「アーノルド」(※1)
脚の太い雌鶏は「トム・プラッツ」(※2)
黙々と荷車を引く馬は「ドリアン・イェーツ」(※3)
納屋の梁は「天空へ羽ばたく背中の祈り」。
牛乳缶を二つ提げて歩く畑への道は、「大筋群が歓喜する祝福の道」と名づけた。

「普通に畑への道と言いなさい」

とマリラは言った。

「でもマリラ、名前をつければ、ただの苦しい作業も物語になるでしょう?」

アンにとって、プリンス・エドワード島は巨大な屋外ジムだった。

岩を見れば持ち上げられる重さを考えた。

木の枝を見ればグリップを考えた。

坂を見れば、大臀筋と心肺機能への負荷を考え胸をときめかせた。

夜、ベッドに入ってからも空想は続いた。

明日は、あの大きな石を担いでスクワットかしら。

石の重さと自分の体重を合わせた力が足裏に乗り、その重さをボトムまで垂直に移動させ、大地を踏む。すると地球は、アンが押したのと同じだけの力を返してくれる。

「なんて素敵なのかしら。地面反力をもらっている時、私は地球と一緒になった気がするの」


学校へ通い始めたアンは、すぐに目立つ存在になった。

赤毛だからではない。

制服を内側から押し上げる、鍛え上げられた体のせいである。

ある日、後ろの席に座っていたギルバート・ブライスが言った。

「お前はどれだけ背中が広いんだ。本当に人間なのか?翼でも隠しているのか?」


ギルバートは大円筋を鉛筆の先でつついた。

そしてギルバート・ブライスは手をのばしてアンの長い赤い髪のはしをとらえ、腕をのばしたまま「にんじん! にんじん!」と言った。  

アンはゆっくりと立ち上がった。

振り返り、ギルバートの体を上から下まで眺め、言った。

「お前の脚こそニンジンなんだよ」

次の瞬間、アンはスレート板をギルバートの頭に叩きつけた。

乾いた音が響き、板は真っ二つに割れた。

教師は叫び、同級生たちは息をのみ、ギルバートは頭を押さえながらアンを見つめた。

アンには、その気になればギルバート・ブライスを闇に葬るだけの力があった。

けれど、今日でなくてもよい。

必要なら、いつでもできる。

そう思うと、アンの胸には穏やかな余裕が戻ってきた。

真に強い者は、己の力をむやみに振るわないものである。

アンは十一歳にして、すでにそのことを知っていた。

それに、翌日は脚の日だった。

余計な疲労を残すわけにはいかなかった。

(おわり)


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