
豊川稲荷|ヤマサちくわを自分で焼く。門前町で楽しむ日本酒とのペアリング
2026年11月、豊川稲荷では72年ぶりとなる御開帳が行われる。
その日を控え、門前町も少しずつにぎわい始めていた。
豊川稲荷の参道には、稲荷寿司の店や土産物店が並んでいる。
店先を眺めながら歩くだけでも楽しく、あちらこちらから食欲を誘う匂いが漂ってくる。
そんな門前町で今回体験したのが、ヤマサちくわの「ちくわ焼き体験」だった。
真っ白なすり身を自分で焼く
用意されていたのは、竹の軸に真っ白なすり身を巻き付けた、まだ焼かれていないちくわ。
いつも店で見かけるちくわとは、ずいぶん姿が違う。

これを、ちくわ焼き専用の電熱器に載せる。
焼き上がるまでの時間は、およそ10分。
ただし、電熱器の上に置いて待っていればよいわけではない。
一か所だけが焦げないよう、竹の軸を手で少しずつ転がし続ける。
少し回しては焼け具合を見る。
また少し回して、反対側にも熱を当てる。
やっていることは単純なのだが、きれいに焼こうとすると、これが案外気を抜けない。
最初は真っ白だったすり身の表面に、やがてうっすらと焼き色が現れた。
白から薄い狐色へ。
さらに転がしていると、表面がこんがりと色づくと同時に、すり身全体がふっくらとしてくる。
豊川稲荷の門前町で、ちくわが狐色に焼けていく。
少々できすぎた話だが、目の前では本当にそうなっている。
竹串を刺すと、湯気がじゅわっ
焼き続けていると、ちくわは次第に大きく膨らんでくる。
中にたまった蒸気で破裂しないように、竹串を刺して蒸気を逃がしてやる。
ぷすり。
竹串が入った瞬間、開いた穴から熱い湯気がじゅわっと噴き出した。
同時に、焼きたての魚の香りがふわりと立ち上がる。

普段スーパーで買っているちくわと同じ食べ物のはずなのに、焼きたてはまるで別物に見える。
表面には香ばしい焼き目がつき、中は熱々でふっくら。
ひと口かじると、弾力のある身から魚の旨味とほのかな甘味が広がった。
焼き目の香ばしさも心地よい。
自分で10分間転がし続けたこともあって、いつものちくわより、少しだけ大切に味わいたくなる。
豊橋の地酒「四海王」と合わせる
焼きたてのちくわに合わせたのは、豊橋の酒蔵、福井酒造が醸す「四海王」。
冷やでいただいた四海王は、口当たりがやや甘め。
すっきり軽快というより、米の旨味をしっかりと感じる、厚みのある味わいだった。
焼きたてのちくわをかじる。
表面の香ばしさに続いて、魚の旨味とふっくらした身の甘味が広がる。
そこへ、四海王をひと口。
少し甘めで分厚い酒の旨味が、ちくわの香ばしさや魚の味をしっかりと受け止めてくれる。
互いの旨味が重なり、口の中でもう一段、味が膨らむ。
これは、なかなかのマッチン・グー!
ちくわをひとかじりして、四海王をひと口。
またちくわをかじって、今度は少しゆっくり酒を含む。
焼きたてのちくわと日本酒の往復運動が、なかなか止まらない。

銘柄:四海王 上撰 本醸造
酒造:福井酒造株式会社
愛知県豊橋市 福井酒造
容量:180ml
東三河の代表選手がそろった
豊川稲荷。
ヤマサのちくわ。
そして、四海王。
東三河を代表する存在が、門前町の小さな一角にそろった。
豊川稲荷を歩き、豊橋のちくわを自分で焼き、豊橋の酒で味わう。
単に名物をいくつか食べたというより、東三河の歴史と食と酒が、一つの体験としてつながったように感じた。
東三河の代表選手たちの競演に、心が躍った。
旅先で名物を一つ味わうのも楽しい。
けれど、その土地にあるもの同士が結びついた瞬間は、もう少し深く記憶に残る。
自分で焼いたちくわの香ばしさ。
竹串を刺した瞬間に噴き出した湯気。
そして、四海王の分厚い旨味。
きっと次に豊川稲荷を訪れたときも、この日の味を思い出すだろう。
2026年11月には、72年ぶりとなる御開帳が行われる。
そのときには、今度こそ御開帳を目当てに、再びこの門前町を歩こう。
焼きたてのちくわと四海王を味わいながら、私は11月にまた豊川稲荷へ来ることを、ひそかに誓った。