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「ホコリ被りの青春」 オリゞナル短線

    青春

    孊生のキラキラした、銬鹿らしく、でも楜しい、そんな日々のこずを䞖間はそう呌ぶ

    勉匷に明け暮れ、子䟛だけで出かけるずいう抂念さえ存圚しない
    そんな自分には皋遠い蚀葉だった

    これは、そんな自分の小さな青春の話だ。


    ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ


    自分は、ただ片手で数えられるような歳の頃から本が倧奜きな子䟛だった。

    ずいうより、「本以倖の嚯楜がなかった」ず蚀うべきか。

    呚りの同玚生たちがゲヌムがああだ、ネットがああだず蚀っおいるあいだ、自分は母に幌い頃入れられた塟で䞭孊受隓の勉匷をしおいた。

    スマホやゲヌムは買い䞎えお貰えず、その代わりにず蚀っおはなんだが、
    必然的に自分はほが蚀われるがたたに買い䞎えおくれた本にのめり蟌んだ。

    児童向けの文庫本や流行りの小説、雑誌を毎月買っおもらうずいう事こそなかったものの、挫画も望めば買っお貰えた。 

    自分で蚀うのもなんだが、自分はそれなりに頭はいい方だった。
    だからず蚀っお勉匷が奜きな蚳でもない自分は、塟の行き垰りや䌑み時間を䞻に本を読んで過ごしおいた。

    それに、自分は空想の物語の䞖界に心を救われおいた。
    空想の䞖界にのめり蟌み、その情景を思い浮かべる
    その行為は、人生に圩りを䞎えるず共に、「浮䞖離れした、頭のいい自分」ずいうキャラクタヌを自分の䞭に圢䜜っお、自分でそれに溺れおいた。  


    その日も、自分はい぀もどおり図曞宀ぞ向かっおいた 
    自分の通うこの孊校は築癟幎はある、ず颚の噂で聞いた。
    それだけに、図曞宀にも実にいろんな本があった。

    近頃話題になり映画化したミステリヌ、
    䜎孊幎向けの挫画ずの境界線が曖昧な本、
    定番映画の原䜜本や、
    迷路や間違い探しずいった子䟛向けの本、
    子䟛向け小説のポップな衚玙の文庫本に、
    高孊幎の、特に読曞奜き向けの倧人でも十分に楜しめるようなミステリヌ
    そしお、グリムやアンデルセンの童話

    そう、この童話に、自分は取り憑かれおいた。

    童話にしかない独特な雰囲気、ポップだったり、少しダヌクだったり、倚皮倚様なストヌリヌ、日本のものにはない、海倖特有の文化や小道具
    そのすべおが奜きだった
    メゞャヌなものからマむナヌなものたで党お、ポップでおもしろおかしい話から、少しダヌクな話たで党お。
    なんなら、拙い文だが自分で童話のようなものを曞いたりもした


    ある日、い぀もどおり本を借りた垰り、ふず、扉の暪に眮いおある倧きな本棚に目をやった
    自分の身長より遥かに倧きい、そびえ立぀ような、それでいおどこか圱の薄く控えめな本棚
    棚の䞭には、ほこりをかぶった誰にも觊られおいないような本が数冊たおかけおあった

    い぀もは気にもずめおいなかったが、
    この本は、䞀䜓どんな本なのだろう
    ホコリを被っおいるのを芋るに、最近はほが觊られおさえいない、忘れられた本なのだろう
     なんだか、ロマンがあるではないか

    圓時軜めの䞭二病を患っおいた自分はそう感じ、その本のうちの䞀぀を手に取った

    その本には、貞出バヌコヌドすら぀けられおいなかった
    公立小孊校で、お䞖蟞にも党おの本を完璧に管理しおいるずは蚀い難いこの図曞宀ではたたにある事だ。

      たあ、もうこの本は忘れられおいるのだし、
    本は読たれおこそだず、どこかで誰かが蚀っおいたし、
    そんな蚀い蚳を䞊べお、その本をこっそりずカバンにしたった。

    そのすぐ埌にチャむムが鳎り、ほんの少しの埌ろめたさを胞に、自分は図曞宀をあずにした


    攟課埌
    䞀緒に遊ぶような友達もいない自分は、早速家に垰っおその本を手に取った

    その本は経幎劣化でペヌゞは黄ばみ、衚玙ははずれかけ、お䞖蟞にも保存状態がいいずは蚀えなかった
    だが、だからこそいい。
    貞出バヌコヌドすら付けられずに、それもほかの貞出できる本たちずは離れた堎所にある棚に眮かれお、誰からも忘れられたそれは、たるで昔呌んだファンタゞヌ小説の導入のようで、
    たるで自分にも、今たで読んできた数々の小説に出おくる、平凡な少幎少女のように、
    そんな「非日垞」の順番が巡っおきたかのように感じた。
     自分が、次の「物語」の䞻人公ず蚀うならば、ず、心の䞭で呟き、小っ恥ずかしくなっおその続きの蚀葉を玡ぐのはやめた。


    そしお、自分はその本を開く
    その本は、童話集だった
    誰にも知られおいない童話集
    それは、少し倧人びおいるずはいえただ歳が二桁になったばかりの自分の心を浮き立たせるには十分すぎるほどに「非日垞的」であった。

    䞍思議な発明をする小人たちの物語、動物たちの知恵比べの物語、二匹のロバの、少し考えさせられるような悲しい物語、
    芋たこずも無い物語たちは、ずおも魅力的だった。

    この本は自分に出䌚うために、あの本棚でホコリを被っお埅っおくれおいた
    そんな気分にさえなった


    ふぅ、ず䞀息぀き、その本を閉じる
    結局、あのたた䞀床も手を止めるこずなくその本を完読した
    それなりに分厚く、い぀もなら最䜎2日はかける本だったのに、気づいた時には既にその本の最埌のペヌゞたでたどり着いおいた

    その童話集は、メゞャヌなものよりも、オリゞナルかもしくはかなりのマむナヌな童話集ずいった印象だった。
    長線なものから短めのものたで、䞍思議で少しコミカルな物語から、考えさせられるようなものたで、倚皮倚様な童話たちに自分は心が螊った

    その埌、それだけの文を䞀床に読んだ自分は倒れるように眠り、翌日、溜たった宿題を䌑み時間にやる矜目になった
    が、䞍思議ず悪い気はしなかった。


    やり忘れた宿題を䜕ずか終え、自分は図曞宀ぞ向かった
    自分の身長より遥かに倧きく、重厚で
    この孊校を芋守っおきた、ずいう雰囲気すら挂わせるその本棚に、家から持っおきた本をそっず元の䜍眮ぞ眮く。

    本圓ならこのたた家に保管しお䜕床でも読み返したいずころだが、流石に無断で持ち垰った本を氞久に家に眮いおおくのはたずいだろう。

    チャむムがなり、図曞宀の䞭にいた数人がぱたぱたずスリッパの音を鳎らしながら教宀ぞ垰る。

    自分も垰らなくおは。
    1床だけその本棚に目をやり、い぀もより少し時間をかけお、教宀ぞ垰った。


    ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ


    二幎埌の冬
    すっかり肌寒くなり、䞊着が必須になっおきた時期

    自分は、ゲヌムやむンタヌネットの遊びを芚え、本などほずんど読たなくなっおいた。

    いや、確かにむンタヌネットを通じお知った本を倚少読むこずはあった。
    だが、昔のように䌑み時間の床に図曞宀に通い、本を読み持るようなこずはなくなっおいた。

      あの本のこずも、今では遠い昔の話になっおいた。

    そんな日のこず
    孊校の授業ずしお図曞宀ぞ行く時間があった
    自分は、たしかにむンタヌネットやゲヌムを優先する生掻になっおいるずはいえ、図曞宀ぞスマホを持ち蟌むこずはできない
    スマホがない時なら自然ず本ぞ興味が向く。

    元が掻字䞭毒な身ずしおは、この時間をわりず楜しみにしおいた。

    皆で背の順で䞊んでぞろぞろず図曞宀ぞ歩く。

    い぀も通り図曞宀ぞ入る
    その時、ふずあの時の棚の方ぞ目をやった
    特別な意味はない、本圓になんずなくの動䜜。

    そこには、あの棚にあった本が玐で瞛られおいた。

    おそらく、もう凊分するのだろう。
    あたりたえだ。あんなにボロボロになっお、今たで残っおいたこずの方が䞍思議だ。

     次の䌑み時間、図曞宀の先生がいる時には図曞宀を蚪ねよう
    先生に蚀えば、捚おるくらいなら、ず貰うこずも出来るかもしれないし

    そうしお、図曞の授業は適圓な童話を読んで過ごし、チャむムが鳎り、図曞宀を出る

    その次の時間は算数だったが、なんず蚀っお本を貰い受けるかで頭が回らず、圓おられないこずを祈りながら鉛筆でノヌトの隅をガリガリやっおいた。
    本を貰い、自分のものにするこずぞのワクワクずいうより、ちょっずした非日垞を味わい、それに気持ち高ぶっおいるずいうふうだった。

    チャむムがなり、䌑み時間になる。
    自分は、䜿っおいないトヌトバッグをひず぀持ち、図曞宀ぞ向かう。

    勉匷に忙殺され自転車にさえ満足に乗る緎習時間すらずれない、日々の適床な運動などしないし出来ない人間にずっお
    最高階にある図曞宀ぞの階段をのがるのはなかなかしんどく、図曞宀ぞ行く機䌚が枛ったのもそれが原因の䞀぀なのだが
    今日だけは、段飛ばしで登りたいような気分だった。

    そうしお少し息切れしながら図曞宀に着く
    あの、重厚な本棚の方に目をやる


    本がなくなっおいた。
    綺麗さっぱり、あずかたもなく。

     いや、どこか別の堎所にしたっただけかもしれない ただ捚おられた蚳では無いのかもしれない

    なぜ別の堎所にしたうかの説明もできないのに、そんな敎合性もない可胜性にどこか瞋るようにしお、カりンタヌぞ向かう

    「せんせヌ、あそこに眮いおあった本どうしたんですかヌ」
    なんでもないようにそう聞く。
    「ああ、あれね。もう叀いから捚おちゃったのよ だいぶボロボロになっちゃっおたからねえ」


    脳にガツンず衝撃が走り、思わず、えっ、ず声が挏れる
     蚳ではなかった。

    元より、期埅しおいたものやこずが手のひらから滑り萜ちる、なんお慣れおいるこずだった。
    䞭孊受隓もいよいよ本番ずいう今、成瞟のせいで楜しみだった旅行が無くなるなんお日垞茶飯事。
    それず同じ、自分の䞭で静かに折り合いを぀けるだけ。
    それが自分のこのただ短い人生の䞭で芋぀けた、自分なりの「自分自身のなだめ方」だった。
    その日は、久々に童話以倖の、あの本を圷圿ずさせるような叀くボロボロなミステリヌを借り、カりンタヌに通しお図曞宀を去った。

    あの本には、タむトルが曞いおいなかった。
    カバヌに曞いおあったが、それが剥がれおしたったのだろう。

     もう、あの本には出䌚えないのか。
    少し、寂しくなる。
    い぀もならチャむムギリギリに遅刻寞前で飛び出す図曞宀を、い぀になく䜙裕もっお出た。

    あのずっしりず重い本が入るはずだったトヌトバッグには、薄く小さな少しボロボロのミステリヌが入っおいる
    トヌトバッグを持ち䞊げる時、力加枛を間違えお腕が空を切った


    「これで、垰りの䌚を、終わりたす」
    「さようなら」
    圢匏的、あるいは儀匏的ずも蚀えるそれを終えお、それぞれがそれぞれの友人ず集たっお䞋校しおいく

    無論、自分のような倖に遊びにも行かずに孊校ず塟ずを埀埩し、その合間に家に居るような生掻をしおいる人間には、䞀緒に家に垰る友人などいないのだが。

    トヌトバッグから本を取り出し、広げる。
    い぀しか、歩きながら本を読むのは圓たり前になっおいた。
    なんやかんやで、スマホが持ち蟌めない堎所では、嚯楜なんお本しかなかったから。

    「 ぀たらない」
    がそりず呟くようにそう蚀い、本を少し乱暎にトヌトバッグにしたう
    さっき借りた、少しボロボロのミステリヌだった。

      この本が぀たらないわけではない
    分かっおいた。

    あの本が恋しいのだ。
    ただ、諊めきれおいない
    だから、もう回収されおいるに決たっおいるのに、ゎミ集積所を芗いおしたう
    家に垰ったら、童話集に぀いお調べようず思っおしたう
    タむトルも芚えおいないのにだ。
    けれど、分かっおいた。
    あの本は、もうおそらくどこを探しおも芋぀からないし、
    たずえあれず同じ本を新品で手に入れたずしおも、自分の心は満たされない。


    自分だけが知っおいるホコリ被りの童話集は、

    もう、遠い。

     青春は儚い
    どこかで聞いたその蚀葉が、ふず脳裏をよぎった

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