
自分で「上手い」と言ったらおしまいだ!
職人は、自分で「上手い」と言うのか
「私、上手いから」
営業中、時々そんな言葉が聞こえてくる。
お客さんに褒められた時も、そうでない時も(笑)。
しかも、他のスタッフにも聞こえるように。
僕はそのたびに、少しだけ居心地が悪くなる。
いや、上手いこと自体は悪いことじゃない。
自分の技術に自信を持つことも、職人には必要だと思う。
でも、僕はどうも「自分で自分の評価をする」ということに、昔から馴染めない。
美容師として長く仕事をしてきたけれど、僕の中ではずっと、
職人の評価は、お客さんが決めるもの。
そう思ってきた。
昔、尊大な寿司屋の親方が、
「この味が分からないのは素人だな」
と言った、なんて話を聞いたことがある。
その時、僕は思った。
「素人以外、誰がいるんだ?(笑)」
お客さんは職人になるために寿司を食べに来ているわけじゃない。
美味しいと思えば食べる。
また食べたいと思えば、また来る。
それでいい。
美容師だって同じだと思う。
「この人に切ってもらいたい」
そう思ってもらえること。
何年も通ってもらえること。
それ自体が、その人からもらった評価なんじゃないだろうか。
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先日、10年以上通ってくれているお客さんが来た。
いつも4週間に一度、僕のところへ来てくれる人だ。
その日は、どうしても僕のところへ来られず、前日に別の美容室でカットしてきたらしい。
だから今日は、ほとんど切るところなんてない(笑)。
いつものように全体を見て、少しだけ手を入れた。
その時、前日に担当した美容師さんが、そのお客さんに僕の仕事について何か言っていたと聞いた。
その話を聞いて、もちろん嬉しかった。
嬉しいんだけど、同時に、
「まぁ、そんなふうに見えることもあるんだな」
くらいに思った。
僕自身は、今でも自分のカットを「これで完璧だ」と思ったことなんてない。
特に刈り上げなんて、
「ここ、もう少し詰められたな」
と思うところが、必ず残る。
だから、人から褒められても、
「そうですか。ありがとうございます」
とは思うけれど、
「やっぱり俺は上手いんだ」
とはならない(笑)。
むしろ、
「まだまだだな」
と思っている。
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昔、「カリスマ美容師」という言葉が流行ったことがある。
僕は、あの頃から少し苦手だった。
もちろん、周囲からそう呼ばれること自体は何も悪くない。
でも、自分から「私はカリスマです」と名乗るのを聞くと、なんだか恥ずかしくなった。
カリスマって、自分で名乗るものなのかな。
誰かがその人を見て、
「あの人はすごい」
「あの人に切ってもらいたい」
そう言い始めた時に、いつの間にか付いてくるものじゃないのかな。
技術も同じだと思う。
「私は上手い」
と自分で言うより、
目の前のお客さんがどう感じたか。
また来てくれるのか。
誰かに紹介してくれるのか。
何年経っても、自分を選んでくれるのか。
その積み重ねのほうが、ずっと正直だ。
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もちろん、僕だって承認欲求はある(笑)。
人から何かを認めてもらえれば、そりゃ嬉しい。
ただ、その評価を自分の胸にしまって、
「じゃあ、次はもう少し上手く切ろう」
と思う。
それくらいが、職人にはちょうどいいのかもしれない。
自分で自分を大きく見せるより、
目の前のお客さんの髪を見て、
「ここ、もう少し何とかならないかな」
と考えているほうが、僕には性に合っている。
だって、
職人の「上手い」は、自分の口から出す言葉じゃない。
それは、鏡の前に座ったお客さんの表情や、
「またお願いします」
という一言の中に、
いつの間にか置かれているものなのだから。