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自分で「上手い」と言ったらおしまいだ!

    ずんず|美容師歴50年

    職人は、自分で「上手い」と言うのか


    「私、上手いから」


    営業中、時々そんな言葉が聞こえてくる。


    お客さんに褒められた時も、そうでない時も(笑)。


    しかも、他のスタッフにも聞こえるように。


    僕はそのたびに、少しだけ居心地が悪くなる。


    いや、上手いこと自体は悪いことじゃない。


    自分の技術に自信を持つことも、職人には必要だと思う。


    でも、僕はどうも「自分で自分の評価をする」ということに、昔から馴染めない。


    美容師として長く仕事をしてきたけれど、僕の中ではずっと、


    職人の評価は、お客さんが決めるもの。


    そう思ってきた。


    昔、尊大な寿司屋の親方が、


    「この味が分からないのは素人だな」


    と言った、なんて話を聞いたことがある。


    その時、僕は思った。


    「素人以外、誰がいるんだ?(笑)」


    お客さんは職人になるために寿司を食べに来ているわけじゃない。


    美味しいと思えば食べる。


    また食べたいと思えば、また来る。


    それでいい。


    美容師だって同じだと思う。


    「この人に切ってもらいたい」


    そう思ってもらえること。


    何年も通ってもらえること。


    それ自体が、その人からもらった評価なんじゃないだろうか。


    ---


    先日、10年以上通ってくれているお客さんが来た。


    いつも4週間に一度、僕のところへ来てくれる人だ。


    その日は、どうしても僕のところへ来られず、前日に別の美容室でカットしてきたらしい。


    だから今日は、ほとんど切るところなんてない(笑)。


    いつものように全体を見て、少しだけ手を入れた。


    その時、前日に担当した美容師さんが、そのお客さんに僕の仕事について何か言っていたと聞いた。


    その話を聞いて、もちろん嬉しかった。


    嬉しいんだけど、同時に、


    「まぁ、そんなふうに見えることもあるんだな」


    くらいに思った。


    僕自身は、今でも自分のカットを「これで完璧だ」と思ったことなんてない。


    特に刈り上げなんて、


    「ここ、もう少し詰められたな」


    と思うところが、必ず残る。


    だから、人から褒められても、


    「そうですか。ありがとうございます」


    とは思うけれど、


    「やっぱり俺は上手いんだ」


    とはならない(笑)。


    むしろ、


    「まだまだだな」


    と思っている。


    ---


    昔、「カリスマ美容師」という言葉が流行ったことがある。


    僕は、あの頃から少し苦手だった。


    もちろん、周囲からそう呼ばれること自体は何も悪くない。


    でも、自分から「私はカリスマです」と名乗るのを聞くと、なんだか恥ずかしくなった。


    カリスマって、自分で名乗るものなのかな。


    誰かがその人を見て、


    「あの人はすごい」


    「あの人に切ってもらいたい」


    そう言い始めた時に、いつの間にか付いてくるものじゃないのかな。


    技術も同じだと思う。


    「私は上手い」


    と自分で言うより、


    目の前のお客さんがどう感じたか。


    また来てくれるのか。


    誰かに紹介してくれるのか。


    何年経っても、自分を選んでくれるのか。


    その積み重ねのほうが、ずっと正直だ。


    ---


    もちろん、僕だって承認欲求はある(笑)。


    人から何かを認めてもらえれば、そりゃ嬉しい。


    ただ、その評価を自分の胸にしまって、


    「じゃあ、次はもう少し上手く切ろう」


    と思う。


    それくらいが、職人にはちょうどいいのかもしれない。


    自分で自分を大きく見せるより、


    目の前のお客さんの髪を見て、


    「ここ、もう少し何とかならないかな」


    と考えているほうが、僕には性に合っている。


    だって、


    職人の「上手い」は、自分の口から出す言葉じゃない。


    それは、鏡の前に座ったお客さんの表情や、


    「またお願いします」


    という一言の中に、


    いつの間にか置かれているものなのだから。

     
     
     
    美容師歴50年。 数店舗経営を経て、50歳で激安店勤務。 訪問施術を30年継続中。 美容師という仕事、美容室の在り方を探ってまいります。

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