メインコンテンツへスキップ
見出し画像

箱

    1. それを見てはならない
    2. それを開けてはならない
    3. それを知ってはならない

    記録
    父が死んだ。自殺らしい。
    彼は浜辺で
    服を全て脱いで
    乾いた砂を口に含んでいた。

    あの人の部屋には段ボールが積み重なっていて
    しかしそこには段ボールしか無かった。
    生活も、匂いも、全ての痕跡が
    まるで最初から無かったかのように。

    記録
    「この花はなんて言うの?綺麗な青色だね。」
    「それはデルフィニウムだ。もう咲く季節になったのか。時間の流れは早いね。」
    「?
    僕には、15年は長かったなあ。」
    「いずれお前もわかるだろうさ。
    この花は、君にぴったりだ。」
    「…今日は暑いなあ。
    ねえ、この後カフェに行こうよ。
    クリームソーダが飲みたい。」

    記録
    「誕生日おめでとう。
    これ、プレゼント。」
    「ありがとう!
    21歳かあ、気づいたら僕も大人の年齢になっちゃったなあ。」
    「ははは。いずれ追いつくさ。
    君も大人っぽくなる日がくるよ。」
    「そうだといいけど。」

    記録
    死んだのは朝方らしかった。
    ちょうど、私の誕生日だった。
    父の部屋を整理していると、
    それはほとんど段ボールを縛るだけの作業だったのだが
    ──1つだけ、妙に綺麗な箱が見つかった。

    記録
    6月21日、〇〇邸。
    操作を開始する。
    部屋は綺麗に片付いている
    というよりかは、物が何もない。
    空っぽだ。

    2階に上がる。
    書斎を発見した。
    …

    箱が、ある。
    確かめる。

    …

    空っぽ。





    デルフィニウム
    花言葉は「清明」、「あなたは幸福を振り撒く」

    元来多年草であったが、近年はこの国の暑さに耐えられないため、園芸店などでは一年草として扱われている。

    毒を有し、摂取すると、死に至る場合がある。

    あなたへのおすすめ