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北浦和・和牛ひつまぶしと甘美な追撃の顛末記

【おたなの旦那様のエキスに溺れて 〜北浦和・和牛ひつまぶしと甘美な追撃の顛末記〜】


ママ友のお姉さまたちとランチをして参りました。お姉さま方は共に同学年、そして、私よりも4学年上で、今年なんと古希(70歳)でございます。


いつもはファミレスで、ランチとデザートandドリンクバーでの宴でございますのに。
今回、お姉さまの1人がご予約なさったのは、有形文化財に指定された歴史のある邸宅でのランチでございました。


ファミレスからいきなり、ごぼう抜きの格上げでございます。玄関先ではお姉さま方も少し腰が引き気味でございました。こういう時は、1番歳下の切り込み隊長・葉月が先陣を切りまする。

はぁ〜、ドキドキでございます。

とても広いお玄関の土間には奥行きのある木製の沓脱石が置かれ、式台、上がり框(かまち)を上がった取次にスリッパが用意されておりました。


と、とぉぃ〜(゚o゚;;  


「どうぞ」と声がかかります。
私は沓脱石の前で靴を脱ぎ、上り框の先のスリッパを履き、お姉さまたちのために数歩進んで振り返り……

と、同時に、「お履物はそのままで大丈夫ですよ」と聞こえました。


振り向けば……。
あぁ、お姉さまが……。


靴を掴もうと、神聖な空間にご立派なお尻を向けて前屈みになっていらっしゃる。

こんなに格式の高いお店は生まれて初めての私でございます。スタートダッシュは良かったものの、とても緊張いたしまして、女子のランチは「ファミレスで良くねぇ」と頭の中で悪態をつきました。

通されたお部屋は、重陽の節句は過ぎたものの、歴史ある調度品と菊を設えてございました。
そして、とぉ〜っても小さい蓋付きの入れ物が厳かに運ばれて参りまして、お料理のひとつ一つに説明が入ります。


「千利休がなんたらかんたら……」と。
蓋を開ければひじきの胡麻和えの上に、枝豆がちょこんとお座りになっておりました。


「利久和え」「冬瓜スープ煮鶏そぼろあん」


「戻り鰹サラダ仕立て特製ドレッシング」「甘味 ココアプリン」


後に調べれば、胡麻好きの利休さんの和えものを「利久和え」と言い、お商売がお休みになっては困るからと、「休」から「久」に変わったということのようでございます。



さて、ランチのメインは、鹿児島県産黒毛和牛のひつまぶしでございました。
肉の脂身が苦手な私。ダイエットで食事管理中の私。

「ここがどれだけ高級なお店か分かってるのか?」と、ツッコミを入れられてしまいそうな庶民代表の私の頭の中。脳裏の画像には、ペラペラのお肉の脇に白い脂身の固まりがギラギラしております。


ところが、蓋を開けてみれば、まぁなんとも良い香り。ギラギラなんていうお下品さではなく、しっとりと、そして艶っとした佇まいでございました。


「鹿児島県黒毛和牛ひつまぶし 薬味四種 だし汁」


体に邪魔な脂身さえも、そこらの安直な下足番と、お店(おたな)の奥に鎮座する大旦那さまとでは、天と地ほどに格が違う。のちに体重計の上で青ざめる定めが同じなら、この上品な旦那さまにどっぷりと溺れてみるのも悪くない。そう、覚悟を決めたのでございました。



まずは、A5ランクとお見受けする上品な旦那様の、「素のままのレアな生身」をお味見。お口の中でとろける高貴な肉質を堪能した後は、うるっと艶かしく光るお肌の側に、ゾクっとするような緑の刺激(わさび)を添えて、二杯目をいただきます。



そしていよいよ、三杯目の佳境へ。
うるっとしたレアな旦那さまと、上品な炭火の香りを漂わす旦那さまのお肌に、香り豊かなお出汁を熱々に注いで差し上げました。



お出汁の中には、旦那さま方のエキスのようなお上品な脂がじんわりと溶け出し、さながら神仙の愛飲する『瓊漿玉液(けいしょうぎょくえき)』か、はたまた艶やかな『回春の滴(しずく)』のよう。



お出汁を吸った旦那様はさらに色気を増し、私はその極上のエキスごと、最後の一滴まで夢中で啜り(すすり)尽くしたのでございます。


――と、これだけで終われば、まだ私の胃袋も耐えられたのかもしれません。



お大尽遊びの余韻に浸る私を、お姉さま方がさらに「素敵なお店があるのよ」と、近くの有名なケーキ屋さんへと連行されたのです。

「幻の黒いちじくのすごいショートケーキ」



そこで目の前に現れたのは、これまた美しくサシの入った……ではなく、見事な「いちじくのショートケーキ」ネーミング以上の美味しさにうっとり。
お口の中でとろけるクリームと一緒に私の心も溶けていくようでございました。



普段はカフェインレスの飲み物しか口にしない私ですが、お姉様方との楽しい宴、ついついケーキと共に香り高い紅茶をいただいてしまいました。



「名のあるおたなの旦那様(和牛)」の極上エキスに、高貴な生クリーム、そして久々のカフェイン。



トリプルパンチを食らった私の胃袋が、夜更け前に悲鳴を上げたのは言うまでもございません。
夜中に這うようにお腹を抱え、現代の霊薬(胃薬)を必死で流し込む羽目になりました。
体重計の上で青ざめ、胃薬を握りしめて悶絶する結末。



されど、後悔など微塵もございません!
どのみち痛い目を見る定めなら、そこらの下足番の脂にやられるより、名のあるおたなの旦那様と、美しいケーキの誘惑に溺れて身を滅ぼす方が、女冥利に尽きるというものでございましょう?(笑)
お後がよろしいようで。


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🕊️本日のおたな(お店情報)
今回、私を五感のすべてで翻弄してくださった素敵なお店のご紹介です。皆さまもぜひ、胃薬をそっと忍ばせて足を運んでみてくださいね。

★【お食事】国登録有形文化財二木屋(にきや)    
   * 住所: 埼玉県さいたま市中央区大戸4-14-2(JR北浦和駅西口より徒歩8分)

   * 葉月メモ: 大正ロマン漂う素晴らしい日本家屋。平日限定ランチの「鹿児島産黒毛和牛ひつまぶし」は、脂身が苦手な方でも感動する美しさです。お靴は脱いだらそのまま上がって大丈夫でございます(笑)。


★【甘味】アカシエ(ACACIER)北浦和本店
   * 住所: 埼玉県さいたま市浦和区常盤10-6-11(JR北浦和駅西口より徒歩7分)

   * 葉月メモ: 浦和が誇る超有名パティスリー。季節のフルーツをふんだんに使ったケーキは、お腹がいっぱいでも別腹に収まってしまう罪深い美しさです。




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