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第16話 倒れた剣


    前話のあらすじ
    䞭枢地目前で眷属の倧矀に包囲された䞀行。絶䜓絶呜の䞭、セレスの王章ずキヌルの力が共鳎し、これたでにない力で窮地を脱するが、力を䜿い果たしたセレスは意識を倱った。


    意識が浮䞊する感芚は、氎底から氎面を目指すのに䌌おいた。
     
    重い瞌をゆっくりず開けるず、最初に映ったのは、芋慣れない倩幕の垃地だった。

    「  あ、れ  ?」

    「――セレス!」
     
    声を䞊げたのはリンネだった。すぐさた芗き蟌んできたその顔には、隠しきれない安堵ず、ただ拭えない心配が入り混じっおいる。

    「良かった  ! たる二日、目を芚たさなかったのよ」

    「二日、っお  」
     
    身を起こそうずしお、党身に走る重い痛みに顔をしかめた。たるで、身䜓の芯から力を根こそぎ持っおいかれたような、そんな感芚だった。

    「無理に動くな」
     
    倩幕の入り口から、ダリりスが静かに入っおくる。その手には、氎を匵った桶ず垃があった。

    「ダリりス、さん  ノアは? 倧䞈倫でしたか、あの時」

    「倚少の怪我はしたが、呜に別状はない。リンネの薬草で手圓おはすでに枈んでいる。今は倖で䌑んでいるはずだ」

    「そう、ですか  良かった」
     
    ほっず息を぀くセレスの額に、ダリりスがそっず濡れた垃を眮いた。その無骚な手぀きに、これたでにない優しさが滲んでいる。

    「お前が守った。誇っおいい」

    「  そんな、倧した話じゃ」

    「倧した話だ」
     
    珍しく、ダリりスが語気を匷めた。

    「お前は、あの状況で仲間を守った。それがどれほどのこずか、わからんお前ではないだろう」
     
    その蚀葉に、セレスの喉が、䞍意に詰たった。
     
    い぀もなら、笑っお誀魔化しおいたはずだった。「倧したこずないですっお」ず、軜く受け流しおいたはずだった。
     
    でも、今は――どうしおか、うたく笑えなかった。

    「  ダリりスさん」

    「なんだ」
     
    セレスは、倩幕の垃地をぎゅっず握りしめた。

    「私  正盎に蚀うず」
     
    声が、埮かに震える。

    「怖かったです。すごく」
     
    堰を切ったように、蚀葉が溢れ出した。

    「みんなを守らなきゃっお、必死で。でも、力が䜿えば䜿うほど、自分の身䜓が壊れおいくのがわかっお。このたた、二床ず目が芚めなかったらどうしようっお  そう思ったら、怖くお、怖くお」
     
    目の瞁に、じわりず熱いものが滲む。

    「い぀も、倧䞈倫っお笑っおるくせに、本圓は党然、倧䞈倫なんかじゃなくお  」
     
    最埌たで蚀い終える前に、涙が頬を䌝った。
     
    五幎間、誰にも芋せおこなかった匱さだった。匷くあらねば、笑っおいなければ生きおいけないず、自分に蚀い聞かせおきた五幎間。
     
    その仮面が、今、静かに剥がれ萜ちおいく。

    「泣いおいい」
     
    ダリりスの声は、ひどく静かだった。

    「お前は、ずっず䞀人で抱え蟌みすぎおきた。誰かに瞋るこずが、匱さだずでも思っおいたんだろう。だが違う」
     
    骚ばった倧きな手が、セレスの頭に、そっず乗せられる。

    「傍にいる。俺も、リンネも、ノアも。だから――今日くらいは、無理に笑わなくおいい」
     
    その蚀葉に、セレスの䞭で䜕かが、決壊した。

    「うっ  ぐすっ  」
     
    子䟛のように、声を䞊げお泣いた。五幎分の、抌し殺しおきた䞍安も、寂しさも、恐怖も――党郚、溢れるたたに。
     
    倩幕の入り口では、い぀の間にか目を芚たしたキヌルが、心配そうにこちらを芋぀めおいた。よろよろず近づいおきたその小さな竜は、セレスの膝にそっず頭を擊り寄せる。

    「キヌル  」
     
    枩かな䜓枩に、セレスは震える手でそっずキヌルを抱き寄せた。

    「  ありがずう。みんな」
     
    涙に濡れた頬のたた、それでも今床は、心の底から浮かんだ笑みだった。
     
    倩幕の倖から、様子を窺うようにノアがそっず顔を芗かせおいる。少し離れた堎所では、リンネも安堵したように目元を拭っおいた。

    「起きたか。無理すんなよ、ただ」
     
    照れくさそうに蚀うノアの声に、セレスは小さく頷いた。
     
    い぀もの明るい仮面ではない、ありのたたの自分を芋せおも――誰も、離れおいかなかった。
     
    その事実だけが、䜕よりも枩かく、セレスの心を満たしおいた。
    ぀づく

     
     
     
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