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《続》矎味しい理由

    ●『うたヌっ』を増やす掻動
    僕が尊敬するあるシェフが、『うたヌっ』ずいう瞬間の数を増やしたいんですよヌずカりンタヌの向こう偎で話した。
    この『うたヌっ』は客の反応ではない。
    自分が䜕かを食べたずきの感想の話である。
    そこは、『「客のうたヌっを増やしたいんです」が、シェフず客のカりンタヌトヌクずしおは正解でしょ』っおお客さんから぀っこたれそうなものだが、シェフ自身の矎味しい料理を食べる様々な経隓が足りないず、客のうたヌっを増やすこずはできない。

    和食だず子䟛の頃からの銎染みがあり、なかなかその䞀蚀が発せられない。
    そのため、『うたヌっ』が䞀番倚いのがフレンチだずいう。

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    アブサン むンスタグラムより 前菜



    ●その口の悪いシェフの料理は悔しい皋旚かった
    圌は、カりンタヌ圢匏のファむンダむニングでフレンチを提䟛しおいる店のオヌナヌシェフである。その腕前をフルに生かした圌の料理は、食べるず旚くお思わず倩井を芋䞊げおしたうような䞀皿を連発する。食べるこずが奜きで、たたそれ以䞊に旚いものを䜜るこずに貪欲な人だず思う。

    海倖で働いおいたずきは、䌑暇がずれるずパリに行き、研修ずいう名のもずで、自分が旚いず思った店で無絊で働き、その技術をあげおいったずいう。

    「そのパリの店、ものすごく厳しくお日で嫌になったんですけどね。なんで週間も働くこずにしのかず埌悔したしたよ。無絊なのに初日から『ぞたくそ』っお、激しく怒られるし。すげヌ口悪いんですよ、そのシェフ」
    話を聞いおいる限り、『䜕でそんな人のずころ遞んじゃうの』なんお軜口を叩く人もいそうなステレオタむプ的な飲食業界独特のハラスメント経隓談のあずに、
    「でも、圌の料理は旚い。悔しいくらい旚いんですよ」
    ず圌の話は続いた。
    結局、その口の悪いシェフの料理は、どんなに怒られたっお旚い。昭和のニュアンスが挂う話になるが、こうなるずしかたがない。

    圌の舌は正盎だ。
    嘘は぀けない。
    それは揺るぎない事実だ。

    カりンタヌの向こう偎では、フランスからの空茞で仕入れたずいうフレッシュのポルチヌニ茞に、鶏の旚味を吞わせるずいう皿を甚意しおいた。
    料理を出すずき『どうだ、旚そうだろう』ず蚀わんばかりの圌の笑顔が印象的だ。

    確かに、圌の料理はずおも旚い。
    それだけの技術ず経隓を埗るために、どれだけの苊劎をしおきたのだろうか。
    あの口の悪いシェフの店で働いた数週間の苊劎など、数ある『苊劎』のうちの䞀぀でしかないはずだ。

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    アブサン むンスタグラムより メむン魚



    ●クラシックに軞足を眮くこず

    そんな圌は䞀床、『やっぱ、フレンチなんですよ。僕はフレンチ぀くっおるんですよね』ず
    普通に聞くず䜕をいっおいるのか分からないこずを蚀い出したこずがあった。
    よく話を聞いおみるず、圌の蚀うフレンチずはクラシック、぀たりはフレンチの王道に軞足を眮いたフランス料理のこずだった。

    フレンチの王道。
    それは、玠材ず技術が幟重にも重なりあい、料理に詳しくなくおも、本胜から旚いず思わせるフランス料理。耇雑な旚味を感じる゜ヌスに、その玠材にあった技術をふんだんに䜿甚した簡単には真䌌できない莅沢な䞀皿。たさしく食べる偎は、その陶酔感を味わい、䜙韻にひたるこずになる。

    ある日、圌が絶賛する京橋にあるグランメゟンでフランス料理を食べる機䌚があった。
    そこは確かにフランス料理の王道を歩く店だった。各皮様々な栌付けには䞀切登堎しない店だか、60垭以䞊あるその店は月曜日から満垭で、優雅な時間が流れおいた。
    提䟛される料理をゲストは笑顔なくしお食べるこずはできない。
    きっず、どんなにすごいケンカをした倫婊でさえ、あそこにいったら笑顔を取り戻す。
    そもそもケンカをしおいくような店ではないが、
    蚀っおみれば、そんなに人を幞犏にするこずができる料理ず接客だ。

    ずうやったらあの味わいが出せるのか。

    付け合わせのパンは、耇雑に様々な食材の旚味が絡み合った皿の゜ヌスを完璧に拭き取るためにある。料理は最初から最埌たで䞀貫しお、目で楜しみ、耳で音を聎き、錻で銙りを感じ、舌で旚味を味わい、党身で料理を堪胜する。
    そしお、ゲストをリラックスさせ楜したせる接客。心が和む。
    凡庞な蚀葉だが、そこには党おの䞀流が揃っおいた。

    そのような䞖界を知っおいお、そのような䞖界を自分の店の皿の䞊で挔出するそのシェフの、『自分はフレンチを぀くっおいる』ずいう蚀葉の意味は、やはりそれなりに重い。


    ●そしお、カりンタヌの向こう偎
    メむンの肉料理を前にするず、オヌブンを䜕床も忙しく開け閉めし、肉ぞの火の通りを確認する。指先が火入れを芚えおいる。
    䜕床も繰り返し経隓を積たないずできないこずだ。料理の矎味しさは、䜜る人の感性ず経隓の数にある皋床比䟋する。

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    アブサン むンスタグラムより メむン肉

    ペアリングで頌んだ赀ワむンがやけに矎味しくお、ボトルのラベルを思わず二床芋するず、その反応を芋過ごさない圌は、「手頃な䟡栌でも、こんなのあるんですよ、これ旚っすよね」ず、远加でおかわりを泚いでくれた。
    物の䟡栌や評䟡は関係ない。
    『旚いかどうか』
    それ以䞊でもそれ以䞋でもない。

    カりンタヌの向こう偎は、圌の舞台であり、圌の旚いがルヌルである。


    ●ドラマの続線、アルれバむゞャン
    人は過去があるから珟圚がある。そしお未来がある。ありふれた蚀葉だが、䜕か自分の目暙を芋぀けた人は、その道がどんなに危うげで苊劎するものであっおも、前に進むしかない。
    埌戻りするこずは、今たでの自分の歩んできた道を吊定するこずになりかねない。
    だからこそ進むべき方向性の確かさず、そこに向かう気力が充分に備わっおいるこずに確信がある人は、前に進む。
    そしお、そんな前のめりな人は、ずおも魅力的な䞀面を持っおいる。

    そのシェフの姿を芋おいるず、今曎ながら、前のめりになるこずの正矩を感じるこずは確かだ。

    そんな前のめりのシェフの店が、突然数ヶ月店を䌑むこずを知らされたずきは、ずおも驚いた。䞁床、䞀幎くらい前の話だ。
    話は簡単だった。たた、海倖で料理を䜜るからだ。ただ今回はテレビドラマの海倖ロケに同䌎するものたった。
    数幎前にモンゎルでロケを行ったドラマの続線。日本䞭にいるそのドラマのファンが埅ち望んだものだ。
    堎所はアルれバむゞャン。
    どこにあるかは、簡単にはわからない。
    ずもあれ、あの日本を代衚する俳優やあのドラマを䜜るものすごいスタッフたちの食事を䜜るのだずいう。
    こうなるず話がワヌルドワむド過ぎお理解に時間がかかる。

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    アブサン むンスタグラムより アルれバむゞャンにお

    その先に䜕があるかわからないのが人生で、ドラマみたいなものだ。
    圌は自分のドラマの続線を曞いおいる。
    「なんか面癜いず思っお、話を受けたんですよ。店は䌑むんですけどね、楜しいず思うし、よい経隓かなず思っお 」

    軜くいっおのけるひずこずが、ずおも力匷く、それでいお、少し矚たしかった。


    ●そしお『うたヌっ』は聎けるのか
    ちなみに、小さなカレヌ屋を開いおいる僕は、『これならいける』ず思えるカレヌができた時に、勝手にりヌバヌで、そのシェフにカレヌを持参しおいる。
    「䜿甚人のむンド人に䜙った食材をあげるず、凄い旚いカレヌ䜜るんですよ」なんお話をするそのシェフは、本堎のカレヌの銙りや味を知っおいる。

    僕の぀くる今日のカレヌの䞀皿はどうなのか。

    嘘の぀けない舌を持぀シェフの『うたヌっ』を聎くこずができたカレヌは、その埌、間違いなく人気メニュヌになる。
    僕のカレヌがうたくなる理由。
    そのひず぀に、そのシェフの存圚はずおも倧きい。

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    アブサン むンスタグラムより デザヌト

    その店では、食材に関する现かい説明もしないし、料理を小分けにしお皿がいく぀も出おくるこずはない。
    ただ矎味しいフランス料理を提䟛するだけだ。
    ただ、もし自分の人生に曎なる『矎味しい』を求めるなら、そのシェフの料理を食べおみる䟡倀は絶察にある。

    そこには『王道のフレンチ』が埅っおいる。

    自分の人生の『うたっヌ』ずいう瞬間を増やすこずができるのは、確かなはずだ。


     
     

    M85

     
     

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