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シャむな圌氏が、1日100回「奜き」ず蚀う旊那になった理由。

    1幎間で、5回。


    これは、旊那が亀際䞭に「奜き」ず蚀っおくれた数。 

    それが結婚5幎目の珟圚は、1日100回。
    幎じゃない。1日に、である。

     
    目芚たしいほどの倉化に、本人の気分は、さながらむタリア人男性のようだ。
    愛情衚珟に照れるこずはなくなったし、「奜き」ずいう蚀葉も息を吐くように口にする。

     
    この話をするず、「なぜそこたで倉わったのか」ず必ず聞かれる。

    それは、付き合っお半幎頃に起きた“ある事件”がキッカケだった。



    付き合っおいたころの旊那は、驚くほど気持ちを衚に出さない人だった。

     

    「嬉しい」「楜しい」ず蚀葉にはするけれど、態床ではそうは芋えない。傍目には、萜ち着いおいお感情の波がない男性。

     

     䟋えば、付き合っお3カ月目のデヌトでミニチュア展を芋に行った時。

    「すごいねどうやっお䜜るんだろう」
    ず興奮する私の隣で、圌はじっずりず展瀺物を凝芖しおいるだけだった。

     

    たたらず、
    「今っお、“楜しいレベル”で衚すず、10段階でいく぀」ず私が聞くず、衚情を倉えずに「10、いや12くらいかも」などず蚀うのだ。

    いや、10越えおたんかい。

     
    䞀緒にいお、こんなにも感情を読み取れない人は初めおだった。
    ちなみに、この“感情レベル方匏”は、この埌しばらく採甚された

     
     そしお、付き合っお半幎、事件が起こる。



    それは秋の軜井沢。
    アりトレットでりィンドりショッピングをしおいた時だった。

     歩き疲れた私たちは、カフェでひず䌑みするこずに。

     䞊着を着おいた私はすっかり暑くなり、薄着だった圌は䜓が冷えおしたっおいた。

    「私は、冷たいゞュヌスにするね」
    「俺は、枩たりたいからスヌプにしよう」

    お互いに奜きなものを泚文し、垭で䞀息぀く。

     

       その頃の私は、圌ずの将来に぀いお迷っおいた。

     

    誰よりも穏やかで優しい。そんな圌が倧奜きだ。
    だけど、い぀たでも本心が芋えないこずに、寂しさも感じおいた。

    自分なりに努力はしおきたけど、これ以䞊深く螏み蟌めない気がしお、䌚話も沈黙が増えるようになっおきた。
    幎霢的に結婚も考えおいるのに、静かな結婚生掻しか想像できない。

    そしおなにより、「本圓に私のこずが奜きで付き合っおいるのかな」ずいう䞍安  。


     だから、最悪「別れる」ずいう遞択も芖野に入れおいた。


     
    圌は、盞倉わらず衚情を少しも倉えずにスヌプをすすっおいる。


     目の前の圌女が、「別れるかも」ず思っお自分を芋おるなんお、倢にも思っおないんだろうな。

     

    さお、そろそろ次のお店に行こうか、ず立ち䞊がった際、私は「スヌプ飲んだから、身䜓は枩たった」ず尋ねた。


    するず、完党に予想斜め䞊からの返事が。

      

    「ううん、冷補スヌプだったから」

     



     え

     

    聞き間違い

     

    「  枩かいスヌプが冷めたんじゃなくお、冷補スヌプだったっおこず」

     

    「うん。枩かいず思っお泚文したら、冷たいスヌプだった」

     

     

     

    たさか。

     

     

    スヌプが冷たいなんお、0,1mmも気付かなかった。

     飲み終わるたで黙っおいるなんお、私には絶察に出来ない。


     いやいや。

    それよりも、私が聞かなければ、スヌプが冷たかったこずすら知る由もなかったっおこずか

     

     私は戞惑い぀぀、「えヌ、あのメニュヌの曞き方は、絶察に枩かいスヌプっお思うよねヌ」なんお圌の二の腕をさすっおいた。

    その埌、スヌプのこずが頭から離れなかった。



    あたりにも気になったので、垰りの車䞭で、圌に思い切っお質問しおみた。お別れするかもしれないし

     

    「  なんであの時、『スヌプが冷たい』っお蚀わなかったの」

     

     するず、さらに想像もしおいない返事が。


     「関係ないず思ったから」

     

    圌は本圓に、䜕でもないこずのように蚀った。

     

     

      関係ない

     

    その瞬間、私の目から鱗がボロンボロンずこがれた。

     

     

    そうか。

     圌にずっお、感情を衚に出すこずは「盞手に関係ないからする必芁のないこず」なのだ。

      

    「蚀っおも意味がない」ずいうあきらめずも、ちょっず違う。

     自分の感情は、自分の䞭で凊理をする。
    それが、圌の䞭で“疑うこずすらない習慣”になっおいたのだ。

     ぀たり、

    ・「スヌプが冷たくお䜓が枩たらない」のは、自分が寒いだけ。
    ・今さらお店に蚀っおも、スヌプは枩かくならない。
    ・圌女私に䌝えおも困らせるだけ。

    ずいう結論を、自分の䞭だけで枈たせおいたわけだ。


    それに気付いたずき、「感情が芋えない圌の蚀動」すべおが腑に萜ちた。

      

    圌の䞭で、

    倧人になるに぀れお、そういう気持ちを隠しおしたうようになったのだろう。きっず、本人すら気付かないうちに。


    ならば、今回のように、

     「これを蚀ったら圌女私を困らせおしたうかもしれない」
    「りザがられるかもしれないから、蚀わないでおこう」

     ず無意識に飲み蟌んだ感情は、この半幎間でいったいどれほどの数だったのだろうか。


     それを知っお、「寂しい」ずか、「ガッカリした」ずか、そういう負の感情は、私の䞭からなぜか䞀切湧かなかった。

    代わりに、 

     私は、圌のこずをただただ知らない。

    だずしたら、ただただ奜きになれる。


    そう確信した私は、圌に想いの䞈を䌝えた。

     「スヌプ、『なんだよ枩かいず思ったら冷たいじゃん』っおあの堎で蚀っおよかったんだよ」
    「そんな些现なこずも笑い合える関係でいたい」
    「だから、楜しいな、ずか、ムカ぀く、でもいいから、感情が動いたら教えおほしい」

     

    突然の䞻匵に戞惑う圌に、私はダメ抌しするようにこう蚀った。
     

    「関係あるかないかは、私が決める」


     
      


    あの事件から、少しず぀、圌は私の前で感情を芋せおくれるようになった。

    するず、自然ず䌝えたい気持ちがどんどん溢れおくるように。
    衚情がコロコロ倉わり、少幎のような無邪気さたで芋せるたでになった。

    私も、そんな圌がどんどん愛おしくなり、お互いに愛情をたくさん蚀葉にしおきた。時に「私俺の方が奜きだから」ず冗談を亀えお。


    その結果が、幎5回から1日100回「奜き」ぞの倉貌である。


      埌々わかったこずだけれど、
    旊那はあの時「感情を閉じ蟌めなくおもいいんだ」ず思えたこずが、人生がひっくり返るくらいの衝撃だったそうだ。

     

     確実に、あの䞀杯のスヌプが私たちの関係を倉えおくれた。

    この事件がなければ、圌ず結婚しおいなかったずすら思っおいる。


    今ではあの時のこずを「スヌプ事件」ず呌び、時折思い出しおは笑い合える、倧切な思い出だ。




    すっかりむタリア人旊那になった圌は、たたに呪文のような蚀葉を぀ぶやく。

     「チェ・りンバル・クむビチヌノ」

     むタリア語で「近くにバルはありたすか」ずいう意味らしい。

      

    高校生の頃、NHKの『むタリア語講座』で、唯䞀芚えられた䟋文なんだよね。い぀か珟地で尋ねるのが倢なんだ

     

    結婚埌、圌は溢れる笑顔でそう語っおくれた。

    圓の本人は、お酒が党く飲めない。
    バルの堎所、聞いおどうする。


     だけど、そんな情けない自分をさらけ出せるパヌトナヌに遞んでくれたこず。
    それが私にずっお、人生最倧の喜びだ。

     

    い぀かむタリアで、「芚えおた䟋文、通じなかったね」ず、二人で笑い合っおいるだろう。

    その様子が、すでに目に浮かんでいる。



     
     

    るか

     
     
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