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Photo bymedetaico

なんでもない日、おめでとう。

    星トラ子

     今日は、なんでもない日だ。忙しさを理由に書かなかった。ストックも無いので投稿もしなかった。
     当然、いいねはつかない。感想も来ない。通知欄は、静まり返っている。

     それでも私は、翌日にはいつも通り画面を開いて、いつも通り自分だけの物語を始める。誰に頼まれたわけでもないのに、書いて消して、もう一度書いて消して。ひとりでニヤニヤしてしまうんだ。
     時々、止まることはあるよ。こんなこと、いつまで続けるんだろうって。誰にも届かない文章を、毎日毎日、懲りもせずに書いて、意味なんて、あるんだろうか。無くても書くことが、何になるのだろうかって、ね。
     でもそのときに、ふと思い出す。とある、物語で、誰かが言っていた言葉。

     ──なんでもない日、バンザイ。

     HAPPY UNBIRTHDAY。誕生日じゃない日を祝おう。子供の頃は全く理解できなかった。なんでもない日を祝う?冗談じゃない。特別だからこそ、お祝いっていうのは楽しいんだ。
     そんなに毎日毎日楽しいことばかりでは、正しい大人にはなれない。疑うことすらなかったのに。

     いつ頃からだろう。そんな正論に苦笑いをするようになったのは。

     喉まで出かかった言葉が、形にならなかったとき?憧れていた誰かの物語が、ぷつりと途絶えたとき?魂の一行が、指の隙間からこぼれ落ちたとき?

     良くわからないけど気づいたときにはもう笑っていた。祝うしかねぇな、って。

     誰も祝ってくれない日を、生き延びた自分を。誰にも見つからなかった文章を、それでも書ききった夜を。
     だって、そうでもしなければ、この静かな積み重ねは、なかったことみたいに消えてしまうじゃあないか。

     画面の向こうには、誰もいない。でも、それでもいいと思った。
     ゲストのために隣の席をひとつ空けておく。まだ名前も知らない誰かのために、言葉を置いておく。テーブルを整えて、素敵な食器を並べ、お茶とお菓子を用意しよう。
     淹れたてのお茶が一口も飲まれずに冷めても、何度だってお湯を沸かすのさ。
     その扉を開く誰かのために、精一杯おもてなししようじゃないか。

     私は小さく息を吐いて、もう一度キーボードに触れた。たぶん明日も、何も起きない。同じように書いて、同じように流れていく。それでもきっと、また書いてしまうのだろう。

     だからせめて、今日くらいは。誰にも見つからなかったこの一日を、自分で祝ってやってもいい。
     素敵なグラスなんて無いけれど、とびっきりの紅茶を入れて乾杯って空高くマグカップを上げるのさ。乾杯の音なんてしないのだけれど。いや、音なんていらない。

     ──なんでもない日、バンザイ。

     今日も、誰にも見つからなかったあなたへ。















    灯火さん、お待たせしました。
    参加させて頂きましたよ〜。

    ギリギリ間に合った。もう無理かと思ったよ。テーマが難しく、なんか悩んじゃった。やっと書けたのでこのあと私は祝杯をあげますよ。

    これを読んでくれたあなたにも、こっそり乾杯。


     
     
     
    36歳プロ社畜。腰痛と四十肩。欲しいもの余白。 ダークファンタジーと恋愛、時々ホラー。 第三期サンクチュアリ出版正直レビュアー♡ 創作大賞2025中間選考通過/エブリスタRising Star選出/カクヨムコン11中間選考通過

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