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しゃべるピアノ

    たゆ・たうひと

    「ね、ちょっと。そこの…そこのおにーさん」
    誰もいないはずのホールの上から声がする。
    「ぁ聞こえた?」
    「ハイ…?」
    「ねぇピアノ弾いてみなぁい?」
    妙に艶っぽい声だ。
    「ぴあの?」
    「そう、そう、ピアノ」
    言われて振り返ると舞台上にグランドピアノ。
    「あぁ~ん。そっちじゃない! こっち」
    どうやら声は舞台袖からするようだ。
    「そうそ、こっち。あたしよ」
    舞台袖、壁際の暗がりに木造のラップピアノが見える。
    「あたし? え、ピアノ?」
    「だからそう言ってるじゃない?」
    確かにピアノの方から声がする。
    「よかったわ~。さぁ蓋を開けて弾いてみて」
    「弾いてみてって」
    「弾けないの?」
    「弾けますけど」
    キョロキョロと周りを見渡し、ピアノの前に立つ。
    「さぁ蓋を開けて、弾いてみて」
    言われるまま、オレはいったいなにをやってるんだ…と小首をかしげ、いち音。

    ぽ~ん…

    「だめだ、調律がなってない」

    「え、ちょっと。ちょっ待ちなさいよ! ちょっと」

    「空耳だ。空耳」

    「え~」









     
     
     
    料理好きなプロの主婦。午後はサスペンス再放送専門の捜査官。事件は解決しても人生は迷宮入り(>∇<) 恋愛を書き、ひとりごとを綴りながら、愛犬の添い寝業務もこなします もうひとりのわたし『ひらさわ たゆ』もよろしくお願いします→ https://note.com/taematayu

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