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芋出し画像

朝の颚景

    たゆ・たうひず

    その日の運勢は玄関で決たる。
    それはニュヌス番組の占いなどではなく、朝、仕事に出掛けるその瞬間、玄関を開けおお向かいさんに出くわすかそうでないかでその日の呜運が分けられるのだ。そしおそれはか、でしかない。

    お向かいの奥さんはどういうわけかい぀も䞍機嫌で、目を合わせなくおもその姿、気配を感じるだけでこちらを萜ち蟌たせるだけの空気を持っおいる。奥さんに眪はないのだが、その䞍機嫌さ加枛がたた尋垞ではなく、こちらを䞍快にさせるのに充分なほどの負のオヌラを攟っおいるのだ。だから、圌女に出くわせば、出䌚わなければずなるずいうわけだ。

    うたいこずやり過ごせた朝は、その日の空が曇っおいようが雚だろうが心は晎れ晎れずしお気分がいい。だが、運悪く目撃しおしたった朝はどんなに気持ちのいい空だろうが䌚議のない日だろうが気分は沈み、仕事を終えお垰るたで憂鬱で仕方がない。だから我が家の玄関は倩囜ず地獄の扉を兌ね備えおいるずいっおも過蚀ではない。

    あたり圌女の話をするのも気分が悪いので、そろそろ出掛けるずしよう。

    車に乗り蟌み゚ンゞンをかける。い぀も通りきっかり時分、軜快な音楜ず共にお気に入りのラゞオ番組が始たる。ラゞオのパヌ゜ナリティは曜日で倉わるが、その日の声がは぀ら぀ず聞こえるか吊かは前述の通りである。
    朝の挚拶から始たり、たずはベテランの女性アナりンサヌが道路状況を䌝えおくれる。そしお気の抜けたような声の青幎が午前䞭の倩気を告げ、次にその日のパヌ゜ナリティが前日にあった出来事をたじえながらその日䞀日快適に過ごすためのアドバむスず豆知識を䞎えおくれるのだ。

    家を出お狭い坂道を䞋るず倧通りにぶ぀かる。だがここは䟮れない。なにせ信号機のない脇道ゆえ、突然右折しおくる車がある堎所であり、通勀通孊途䞭の自転車も容赊なく行きかう。だからやや巊寄りできちんず停止線前で止たっおから぀数えるこずにしおいる。

    そこを右折しお出おいく車がいるず若干のロスを生じるが、自分が先頭で䞔぀スムヌズに巊折できた堎合は幞先がいい。
    ほど進むず最初の信号機だ。近くに公立高校があるため、制服の生埒や朝緎のゞャヌゞ姿の子どもを暪目にその日のドラむブがスタヌトする。

    倧通りは車線。がくは比范的右偎を走る傟向にある。たずえ目的地が巊偎にあっおもだ。それは過去に巊偎の駐車堎から出お来た車に远突された経隓があるために、こちらを向いおいる車䜓に察しおいくらかのトラりマがあるからなのだが、䜕幎経っおも慣れないものだ。

    しかしながら朝の道路はどちらかが空いおいるずか、どちらがスムヌズだずいうこずはない。急がない朝は巊車線に移動し、バスを回避しながら車を走らせる。
    しばらく行くず次の信号機の巊手に、赀い屋根のかわいらしいパン屋が芋えおくる。パン屋は朝が早い。パン屋はガラス匵りでそこに䞊ぶ焌きたおであろうパンは、同時に「おはよう」ず蚀っおいるかのように爜やかに出迎えおくれる。そしおなにより、毎朝明るい笑顔で挚拶をするかわいいあの子が駐車堎の掃陀をしおいる。運よく信号機が赀であればしばらく目の保逊になるし、青であっおも必ず芖界には入っおくるずいう寞法だ。その頃にはもうラゞオの音など耳には入っおこない。

    そこからはしばらくゆるやかな盎線が続く。
    い぀も芋掛ける赀い倖車の玳士は、ひげを撫で぀け今日も満足そうだ。父芪に送られおいるのか、ワゎンの助手垭に座る圌女は揺れる車の䞭でい぀も通り噚甚にたゆ毛を描いおいる。時折芋掛けるピンク色の軜自動車は、電車に送れそうな旊那さんだろうか。隣の奥さんは、そのあずパヌトにでも出掛けお行くのか、前髪にカヌラヌが぀いおいる。日によっおひず぀だったりふた぀だったり 今日も無事にラッシュの垞連の顔ぶれを芋ながら囜道方面に向かう。

    囜道の手前には時間営業のコンビニ゚ンスストアがある。駐車堎は広いが、必ずトラックが止たっおいるし、朝はタむミングが合わなければスムヌズに駐車できない。運よく駐車できたずしおも、今床は道路に出るたでに時間を芁するため、甚があっおもがくはここをスルヌする。

    囜道の入り口付近の信号機は必ず回は芋送るこずになる。右折の信号が短いためだ。がくは囜道を跚いで盎進するから関係ないのだが、ここで必ず駅に向かうバスの乗降に遭うのだ。
    さらに、日は比范的トラックが倚く、トラックの運転手ずいうのは実に様々な姿を芋せおくれる。先ほどのコンビニ゚ンスストアで賌入したか、たたは自宅から持っおきたのか、朝食を取りながら信号埅ちをしおいる運転手をよく芋掛ける。たたにハンドルの䞊で携垯電話をいじる者、それならただいいが、週間雑誌を広げおいる者もいる。だがそれらも、亀差点に近づくに぀れそわそわずハンドルを握るこずになる。

    平日の亀差点は四隅に譊察官が立っおいお、歩行者の移動に合わせお亀通敎理をしおいる。時々婊人譊官がいたりするのだが、滅倚にお目にかかれないのが残念だ。どうもがくは制服の女性に匱いようだ。

    ここぞ来るたで分から分。おそらく時になったら譊官たちは撀退しおその日の業務に向かうのだろう。

    囜道を跚ぐず駅前通りに面した道に入り、ここで必ず枋滞にはたる。なぜなら小刻みに信号機が蚭眮しおあるのず、巊右でバスの乗降が必須だからだ。通垞の路線バスのほか、そこから郊倖の工業地垯に向かう䌚瀟員の矀れず、スクヌルバスのバス停に向かう倧孊生でごった返しおいるのだが、若者は絶えずさえずり、倧人は皆無口だ。あのにこやかに笑い合う倧孊生も、あず数幎もするず無口になっおいくのだろうか。

    そうこうするうち、枋滞で停車䞭の暪を幌皚園の送り迎えをしおいるママさん自転車が通り過ぎおいく。今どきのママさん自転車はデコチャリなみに装備がすごい。䜙蚈なお䞖話だろうが前方に蚭眮されたチャむルドシヌトは、背の䜎いお母さんには前が芋えないのではないかず心配になる。埌方に蚭眮されるチャむルドシヌトはちょっずしたバむクのサむドカヌのようだ。それが䞡方぀いおいる自転車は、もはやママさん自転車などではなく、出前のバむクのようにさえ芋えおくる。それを芋る限り、昚今のママさんたちはタフだず思う。

    タむミングがいいず、バスに乗り蟌む奇抜なファッションの老婆に出䌚う。圌女もたた、仕事に出掛けるのだろうかずい぀も考える。それにしたっおあのファッションは、䞀䜓なにをしおいるひずなのか。
    そういえば孊生時代「トレンディマヌケット」ずいう原色ばかりの服や小物を売る店があった。䞀床入るずなにかを買わずには出おこれないような、異様な雰囲気の店だった。ただの真っ赀なシャツが円で売っおいたのを芋たこずがある。がくの圌女は唇型の䜿い勝手のないバッグを円で買った。䜿うこずなく姉に譲ったようだが、その姉も仕様に困ったこずだろう。あの老婆を芋掛けるず、幎で朰れたあの店を思い出す。

    ようやっず枋滞を抜けたあずは再び田舎道にそれる。そこには䌚瀟たでの道のりで䞀番季節を感じられる田んがの颚景が広がる。春には田怍え、倏の倜の垰り道では窓を閉めおいおもカ゚ルの鳎き声が聞こえ、秋になるず黄金色の絚毯が敷かれる。この蟺りは雪が降らないのが残念だず思うほどに、ここの田んがは広倧で、別䞖界を感じさせおくれるのだ。

    田んがの颚景が切れるずいよいよ工業団地内に入り、瀟名の描かれた瀟甚車が前に暪にず䞊んで芋える。ここに蟿り着くず空気がピリピリしおいるように感じるのは、目的地は違えど、だれもかれもが職堎に向かっおいるからだろう。
    がくの䌚瀟は山のおっぺん。冬に雪が降る堎所であったなら、坂道で難儀するような山道だ。

    車が少なくなっおくるず再びラゞオの音が耳に戻っおくる。最近はテレビを芋るこずも少なくなり、その曲がアむドルなのかシンガ―なのか、日本人なのか倖囜人なのか刀別は぀かないが、おそらく流行りの音楜なのだろう。昔はラゞオ番組ではなく奜きなアヌティストの音楜がかかっおいた自分のオヌディオも時代に䌎い倉わっおきおいる。
    「幎を取ったな」など窓の倖に目を向ければ、瀟甚車はそれぞれの目的地に吞い蟌たれるように消えお行き、がくの䌚瀟も目の前だ。駐車堎は決たっおいるので焊る必芁もない。

    さお、そろそろ無駄話はお終いにしお、仕事モヌドに切り替えるずしよう。


    これががくの朝の颚景である。




     
     
     
    料理奜きなプロの䞻婊。午埌はサスペンス再攟送専門の捜査官。事件は解決しおも人生は迷宮入り(>∇<) 恋愛を曞き、ひずりごずを綎りながら、愛犬の添い寝業務もこなしたす もうひずりのわたし『ひらさわ たゆ』もよろしくお願いしたす→ https://note.com/taematayu

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