
第122話|左脚を使わない1週間。家の中を作り替えた
左脚を休ませるために、外に出ない。
そこまでは決めた。
でも、次に考えたのは、
「じゃあ、家の中ではどうやって生活する?」
ということだった。
病院での回復のスピードを考えると、
今の身体の状態は、ずっと同じではない。
1週間後には、また少し変わっているかもしれない。
だから、最初から完璧な生活を作る必要はない。
まずは、
この1週間、左脚をできるだけ使わずに生活できる形をつくる。
そう考えた。
そこで、家の中を見渡した。
朝起きる。
歯を磨く。
ごはんを作る。
食べる。
食器を洗う。
食器をしまう。
洗面台を使う。
洗濯をする。
洗濯物を干す。
仕事をする。
飲み物を取りに行く。
トイレに行く。
シャワーを浴びる。
掃除をする。
片付ける。
朝から夜まで、自分が家の中で何をしているのかを書き出してみる。
移動するだけなら、
右脚を中心にして、左脚を添える。
それなら、なんとかできそうだった。
でも、問題は「その場に立ち止まること」。
料理。
洗面台。
洗濯物を干す。
こういう作業は、思った以上に左脚を使っている。
特に料理はそうだった。
包丁で切る。
冷蔵庫から食材を出す。
鍋を持つ。
調味料を取る。
今まで何気なくやっていた動作で、脚に力が入っていた。
「歩かなければいい」
だけではない。
立っていること自体が、左脚を使っている。
それが見えてきた。
じゃあ、どうするか。
家の中をもう一度探した。
すると、仕事で使っていたキャスター付きの椅子があった。
これだ。
この椅子を、今週1週間の家の動線の主役にすることにした。
座ったまま移動できる。
だったら、椅子が通れる家にすればいい。
まず、椅子の動きを邪魔するものを取り除いた。
動線上にあったマットレスを移動する。
家具も少し動かす。
棚の位置を変える。
収納も見直す。
しかも、立って作業するのではなく、
椅子に座ったまま、家のレイアウトを変えていった。
「ここにあるから使う」のではなく、
「今の身体なら、ここにあるほうが使いやすい」
という基準で置き場所を変えていく。
収納棚の中も整理した。
今まで何となく置いていたものをしまう。
必要なものを取り出しやすい場所に移す。
すると、少しずつ家の中が変わっていった。
そして、思わぬ変化もあった。
家の動線から、小物が見えなくなった。
今まで何となく目に入っていたものが減った。
歩くための障害物を減らしていたはずなのに、
家の中まで、すっきりしてきた。
ちょっと気持ちがいい。
身体を休ませるために始めたことだった。
でも実際にやってみると、
「今までの生活では、必要だと思っていたもの」
「何となく置いていたもの」
「何となく歩いていた場所」
が、少しずつ見えてきた。
今週は外に出ない。
だからこそ、家の中を見渡してみる。
朝から夜までの自分の動きを考えてみる。
そして、
左脚を使わなくても生活できるように、生活のほうを変えていく。
身体の回復に合わせて、
暮らし方も週単位で変えていけばいい。
今までの家に、自分の身体を合わせるのではなく、
今の自分の身体に、家のほうを合わせてみる。
そんな1週間を始めることにした。