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【クロスレビュー】武田と哲也『LOVE SHOT』

    ゴスペラーズの村上てつやとSkoop On SomebodyのTAKEによるジャパニーズ・セクシー・ソウル・デュオ「武田と哲也」が、2026年1月28日に3rdミニアルバム『LOVE SHOT』をリリースした。
    これを受けてGroovin' Fileではhari・aoiによるクロスレビュー企画を開催。アルバム全体、収録楽曲のレビューに加えて、お互いイチオシ楽曲も選曲した。

    総評

    hari

    スーツ姿にラケット片手のアートワークで予想の斜め上を勢いよく突き破った今作。蓋を開けてみると、大人が楽しめる音楽を届ける側が、自由気ままに音楽で遊んでしまっているような、変化球的な楽曲を取り揃えてると思えた。だが……ただ好き勝手やっているわけではない。実力派な二人が本気で楽しんでるからこその聴き応えがあり、「大人の遊び」のような一枚と言えるだろう。
    また、新進気鋭の【Meteor】による提供楽曲に関しては、歌詞に結構辛辣なレビューを添えました。日本語は漢字の使い分けや、ひらがな、カタカナの使い方によって印象も変わってくるので、もっと文章力を磨いたり、言葉の引き出しを増やすと、より魅力的な楽曲を生み出せるに違いない(と、どんな文章よりも歌詞が好きな私は思いました。)

    aoi

    TAKE・村上共に此処がメインの所属バンド・グループでは無いからこそ、Soulを基点とした挑戦ができるのが「武田と哲也」だ。その挑戦は新たな領域へ。色濃いミッド80sから2020sらしい(複数の意味での)ベッドルームなサウンドまでを5曲24分とコンパクトに収めた結果、一聴するとインパクトの強い楽曲群に他の楽曲が押されてしまう印象は否めない。だが、繰り返し聴くことでそのこだわりを紐解く楽しみが用意されている。何より、「Sweet Soulの門番」こと村上に音楽家のみならず愛好家としての信頼をも寄せている身としては、彼が同士として愛し、Soulファンに紹介してきた音楽家達との共作は無視できないのだ。


    TWILIGHT

    hari

    いわゆるアーバン(Urban/都会的)なサウンドとなっているが、これまでの武田と哲也のアーバンサウンドはすごくラグジュアリーな雰囲気をまとっていたナンバーばかりだ。けど、TWILIGHTにはアーバンではあるけどラグジュアリーさは無い。そこに挑戦を感じた。
    TR-808を中心に作られたビートの緻密さはKO-HEYのエッセンスたっぷりなので、歌だけではなくビートの動きも全集中で感じてほしい。

    aoi

    2曲目以降のショットの強さに気を取られてしまう本作だが、週末近い木曜深夜か、或いは土曜の夕べの入り口か、ラジオから流れてきたら思わず振り返ってしまうのがこの曲。熱心なSoulファンやラジオリスナーの耳に留まったであろう確かな80s-90sオマージュのサウンドは、前作に引き続き参加となる盟友・SWING-Oのアレンジとプログラミングあってこそだが、その後ろには作曲を担当したSkoop On SomebodyのKO-HEYの姿を感じずにはいられない。80sらしい打ち込みは勿論だが、仮にサウンドがアコースティックだったとしても活きる、しみじみと耳に残るようなメロディもまた、KO-HEYらしいものである。


    LOVE SHOT -deuce

    hari

    イントロの打球音が聴こえたときには、「そこ(曲)もテニスでいくんですか!?」と衝撃が強かった(し、英語での得点のコールに再び衝撃を受けた。)
    このアルバムの中で最も2人のボーカル歌声の違いを感じられるナンバーとなっている。普段は五声のハーモニーの一つとして歌う村上てつやは丁寧でしっかりとした歌声を聴かせており、普段は1人でバンドの花形的存在として歌うTAKEは抜群のリズム感とはっきりとした強弱のある、非常にグルーヴのある歌声となっている(し、そのうえ音階の動きもつけているため表現力豊かなものでもある。)
    ひとりの女性を振り向かせようと奮闘する様をテニスの試合になぞらえて表現された歌詞であるからこそ、コーラスグループとバンドのボーカルの歌のスタイルの違いを堪能できる1曲にしたのだろう。

    aoi

    先行リリースされたこの曲をラジオで聴くや否や笑ってしまった。打球音に、ではない。煌びやかなシンセやピアノ、重く跳ねるベースライン、余白を見せつつリズムを作るギターのカッティング、絶妙なBPM、サビの前ではフィルインから流れ込むようにユニゾンでキメる。1つ1つが華やかであるからこそ、構成はバースとサビが大きくは変わらぬシンプルなもの。2020年代後半にも関わらず、妥協無き80s愛に思わず笑みがこぼれる。ラスト20秒余り、2人の声が近い音域で同程度の音量で重なるのだが、TAKEの声が他のボーカリストとこうして交錯するような響きはSkoop On Somebodyでは聴けない為、新鮮である(というSOSファンの一言を添えて)。


    BETWEEN THE SHEETS/COME AND TALK TO ME

    hari

    前作『Love On Delivery』では村上てつやが鈴木雅之に提供した「Evony&Ivory」のCoverをしていたが、今作ではより熱く濃厚なソウル/R&Bの名曲を、2曲メドレー形式で8分という聴き応えたっぷりの長さで世に放ってしまった。
    TAKEは「BETWEEN THE SHEETS」の冒頭では微かに笑い声が聴こえたり、「COME AND TALK TO ME」の歌い始める前に「Listen!」って小さな声で言っているが、ヒップホップとは違う、(いい意味で)ワルい感じの雰囲気を纏っている。「悪=排除されるべきもの、淘汰されるべきもの」いうクリーンな現代だが、かっこよく見えてしまうワルい感じはもっと現代にあってもいいと思える。
    あと、柴山哲郎のギターだけを全集中で聴くことを勧めたい。イントロ等で聴こえる渋くて熱い音色や、アウトロの熱いギタープレイが印象的だが、それだけでない。時には歌声と縦のリズムを揃えたり、一人で細かくリズムを刻んだり、尾を引くような音を響かせたり、フェイクに添えるような音も聴かせている。

    aoi

    スタンダードと侮るなかれ。同曲をレパートリーとするだけではなく、ライヴタイトル自体にも「シルクの似合う夜」を掲げてきた彼らだ。時折Ronald Isleyばりのファルセットは聴こえてくるものの、ボーカリスト2人で掛け合い、重ね、シルキーという形容詞とは真逆の、熱を帯びた歌声。長年彼らとステージを共にしてきた本間将人によるアレンジは、ライヴ演奏を前提としたであろう、原曲とは対照的なバンドサウンドだ。敢えてトラックを分けずに次のJodeciのカバーへと畳み掛けることで臨場感は増すばかり。自身のルーツに丁寧に向き合い、自分達なりの解釈を、ライヴアレンジで。これが武哲流のソウルマナーである。


    1 a.m.

    hari

    再生した瞬間、たとえ真っ昼間であっても心は夜、それも真夜中に連れ去ってくれる楽曲。TAKEと村上てつやの歌声にくわえて厚みのある【Meteor】のコーラスに包まれると揺らめく熱を感じるし、後半で間奏の部分でトークボックスが差し込まれているが、その無機質な感じが夜を濃くしている。
    けど……歌詞が惜しい。Aメロの最後のフレーズはどちらも違和感があるし、順番が逆な気がする。まず、無くなるのは理性よりも躊躇いや恥じらい、迷いの感情だと思う。そういう気持ちが無くなり、痛みと快楽が交わった結果、理性が失われたり本能を曝け出してしまうのでは?
    あと、サビは『その罠落ちてみよう』よりは『その罠堕ちてゆこう』の方が、相手との肌の距離感が縮まると思うし、もう帰ってこれない場所にいってしまうと、受け手は感じるかと。

    aoi

    ベッドルーム・ミュージックという呼称を知った時、Skoop育ちの私はその意味を勘違いしていたのだが、打ち込みが基となるこの曲はその意味をも含むのではないか。但し、2020sらしい内向的なサウンドに留まる筈も無く。その歌声を熱く引き出すのは、柴山哲郎の、甘さと苦さが入り混じったような、時にギラギラと、特にふくよかに響くギターの音色だろう。本間将人のアルトサックスとの掛け合いでの、核心に迫るようなフレーズも聴き逃せない。また、リズムパターンにはM-3のJodeciのカバーとの連続性も伺えるが、これは全体のプロダクションを担う【Meteor】のR&B愛あってこそ、と推測する。故に、今後彼らとのコラボは濃厚にもう一歩踏み込んでほしいとも思う。


    Sick Of This Love

    hari

    100%打ち込みで作られたサウンドだが、イントロのストリングスが楽曲の世界に引き込む。そして、なんといってもフェイクやおっかけコーラスマシマシの構成。歌詞カードに無い部分を本気で歌う二人は、食べ物で例えるならこぼれいくら丼ぐらいの贅沢であり、日本国内では武田と哲也にしかできない所業だ。
    なのに……この曲も歌詞が惜しい。Aメロで目を閉じて見えた情景が描かれてない。3フレーズあれば主人公にはどんな風景を見ていたのか、聴き手に伝えることができるだろう。だがしかし、歌詞カードに無い歌詞が絶妙にいい味を出してることは評価したい。2サビの(信じてた)嘘の愛は(その言葉を)嘘の日々は(もう)終わりにしよう。歌詞カードにない部分をおっかけで歌うから胸にくる。アウトロの(愛してた その笑顔 忘れないよ さよならも その笑顔も 抱きしめて 生きていく I'm Sick This Of Love.)は、歌詞カードでは思い出にできてない気持ちを完全に過去形にしてる。
    レコーディング中に武田と哲也の2人が考えたのかな?と、勝手に想像してます。

    aoi

    Silk Sonicよりも先にデビューしていた武哲だが、彼らが巻き起こしたフィリー・ソウルのリヴァイバルに背中を押されたと語ったのは2ndミニアルバムをリリースした2021年頃。そこで改めて前面に打ち出したスウィート・ソウル路線を、今度は新たな仲間からの目線も加えて仕上げたのがこの曲だ。武哲・【Meteor】双方の偏愛っぷりをマイルドにブレンドしたであろう音だが、特筆すべきはコーラスの厚みだろう。M-4とは違い、プロダクションだけではなくコーラスとしても【Meteor】のメンバーが参加した結果、ただ切なく苦しいだけではない、全体に翳りの見える1曲となっている。特に、トラックの音が消え声のみとなるラスト1フレーズ、ここで落とす影の暗さを体感してほしい。


    イチオシ楽曲

    hari:「BETWEEN THE SHEETS/COME AND TALK TO ME」

    「BETWEEN THE SHEETS」を全力でおすすめしたい。
    個人的な話になるが、TAKEが歌う「BETWEEN THE SHEETS」が残ったのが嬉しすぎる。『Discotique Nite 2024』ではSkoop On Somebodyとしてこの曲をCoverし、ラジオではライブ音源がオンエアされたものの、ちゃんとした音源が残って欲しいと願ってばかりでした。
    それだけではなく、二人それぞれの多重コーラスも聴けるのもイチオシな理由です。時折、外側から多重コーラスが聴こえてくる部分があるが、村上てつやが一人で声を重ねるってゴスペラーズの楽曲ではほぼ無いと思うし、TAKEの多重コーラスには厚みがあって圧倒されるだろう。ぜひともリードボーカルではない声を全集中でじっくり味わって欲しい。

    aoi:「BETWEEN THE SHEETS/COME AND TALK TO ME」

    実質2曲となるM-3だが、敢えて後半の「COME AND TALK TO ME」を。先ずは、「BETWEEN THE SHEETS」からの流れを汲む熱の中、時折そっと横切るピアノの音に耳を傾けたい。キーボードは本間将人と、今作が初参加となる平手祐紀の2名がクレジットされているが、恐らくこちらは平手によるものだろう。原曲でもピアノはキーで、全体をキラキラと彩るような印象だ。対して、このカバーにおける静かな揺らぎをもたらすピアノの音色とフレーズは、バンドアレンジの肝と言っても良い。ボーカル面で言えば、1周目のサビ前の「Come on~」のフレーズを2人共が歌っていたり、サビの「I really want~」の部分はユニゾンとオクターブユニゾンを使い分けたりと、2人で歌う楽しさが存分に伝わってくる。好きなものを先ずは自分達が楽しんでこそ、大人の音楽なのだ。


    ◆「武田と哲也」とは?

    Skoop On SomebodyのTAKE(本名:武田雅治)と、ゴスペラーズの村上てつや(本名:村上哲也)による「ジャパニーズ・セクシー・ソウル・デュオ」。
    鈴木雅之、ゴスペラーズ、Skoop On Somebodyによる通称「ソウル・トライアングル」がホストとなって、2006年から開催していたSOUL MUSICの祭典『SOUL POWER SUMMIT』をきっかけに結成。2007年、鈴木雅之と黒沢薫(ゴスペラーズ)によるデュオ「エナメル・ブラザーズ」がリリースしたシングル『She’s My Girl』のカップリングとして収録された「母に捧げるバラード」(言うまでも無く海援隊のカバーだが、そのサウンドはJBオマージュという傑作!)でメジャー・デビュー。
    今年結成20周年を迎え、3rdミニアルバム『LOVE SHOT』をリリースし、大阪・横浜・東京を巡るツアー『SOUL POWER presents “シルクの似合う夜 part 8”』を敢行中だ。本記事投稿時点では残すところ、2月23日(月・祝)のBLUE NOTE TOKYOでの公演を残すのみ(チケットはSOLD OUT)。

    数年に一度しか活動しない彼ら。次作はいつになるか分からないので、是非今のうちに注目を。

    そして、本作に欠かせない武哲の仲間達も要チェック。



    なお、本記事投稿日に放送された、村上がパーソナリティを務めるNHK-FM『THE SOUL MUSIC Ⅱ 村上てつやのSoul Scramble』では、「武田と哲也」特集が組まれている。1週間は聴き逃し配信されているので、こちらも是非チェックを。配信リンクはこちら。

     
     
     
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