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雨は降る降る 人間濡れる

コントみたいだった。

長い人生、生きていれば晴れの日もあるし雨の日もある、などと言う時の晴れや雨というのはたいていの場合好不調の比喩であり、天気のことをイメージする場合は少ないだろう。そんなめんどくさいことを考えるまでもなく、天気というのは晴れたり曇ったりする。そして当然、出社時間と大雨がバッティングすることだってある。
ただそれが、よくコントなんかで芸人がかぶって水浸しになるような勢いの雨風というのは、そうそうあることではないだろう。

とはいえ、たとえそんな天気であろうとも社会人というのは仕事に出かけなければならない。えてして、不要不急の外出というものに出勤は含まれない。車社会ならなおのことだ。
そういうわけで俺は雨をかき分けて車に乗り込み、フロントガラスを滝のように流れていく雨越しに前方を視認し、スプラッシュマウンテンのそれのように派手に水を飛ばしながらついでに車も飛ばして会社にたどり着いた。これが遊園地のアトラクションならひとまずこれで体験終了だが、職場とかいう大人の……えーと、なんだ?ともかくそれは、これからが体験本番である。だから車を降りて傘を差し、ICカードをかざして電子ロックを解除し、傘と体をすぼめて回転ドアをくぐろうとした。
そして、傘がドアに挟まった。

そりゃもう慌てた。ここは遊園地ではない。雨やらなんやらで殺気だった大人たちが大勢集まる地獄みたいな場所の、出入口ゲートだ。駅の自動改札で引っ掛かるのとはわけが違う。急いで傘を押したり引っ張ったり、ドアを軽く押し戻して隙間を作ったりして、何とか傘をドアの隙間から引きずり出せた。だが、その代償として傘の骨が折れた。まさに骨折り損である。
そんなコントみたいなこと起こらないでほしかったが、これが大人の社会の冷徹な現実というものである。ここは遊園地ではない。来場者は保護されてなどいないのだ。
そんなわけで傘の骨と引き換えに俺は記事ネタを手に入れた。何かを得たければ、何かを失わねばならない。これもまた大人の社会の冷徹な現実だ。
さて、明日の俺は何を失い、何を得るのか。
できれば頭髪を失うのは、勘弁していただきたいところだ。

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