
毎週ショートショートnote 「高校野球怪談」
メルカリに甲子園の土が売っていた。一袋300円。
妥当な値段なのか偽物なのか、さっぱりわからない。
でも、面白いと買ってしまった。
届いた土を庭にまいた。不思議なことに、何故か涙が出た。
努力と汗の結晶の匂いがそこにあった。
夕涼みをしていたある晩、そのまいた土の上に青白いピッチャーが現れ、振りがぶって白球を投げ込んで来た。思わずよけた。窓ガラスが割れるじゃないか。昔とった杵柄よろしく、キャッチャ―ミットを持ち出して来て、座り込んだ。
「さあ、来い!」
奴の球はいい線いってるが、コントロールが定まらない。
「腕の振りが甘いぞ! 球の縫い目を指にしっかり掛けるんだ!」
連夜の特訓が始まった。
「あらまたやってますよ」
「あの格好はキャッチャーですね」
両隣の住民が塀越しに、お爺さんを見つめている。
「ピッチャーの幻影が見えてるんですかね」
「確か、奥さん、高校野球が好きだったらしいですよ」
「そういえば、奥さんの骨を一部、庭に散骨したとか・・」
「でもご主人、野球部じゃなくて相撲部だったんだけどなあ」
(おわり)