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「今日、怒られた?」と聞いてしまう夜に

    寝る前の布団の中、四年生の息子の隣に横たわる。

    一日の終わり、あとは眠るだけという時間。
    私は何気なく、こう聞いた。

    「今日、学校で怒られた?」

    前々から、先生によく怒られていると聞いていたからだろう。癖のように、口からこぼれ落ちた質問だった。

    聞いた瞬間、自分の中で何かがぴたりと止まった。

    ——いや、これはダメだ。

    寝る前に、
    わざわざ嫌な記憶を掘り起こしてどうする。
    これから見る夢は、いい夢であってほしいのに。
    私は今、息子の眠りに、小さな棘を刺し込もうとしていた。

    慌てて言い直す。


    「今日、褒められた?」

    言い換えながら、頭の片隅で小さな違和感が疼いた。

    自分だったら、絶対に聞かれたくない質問だ。
    「今日、失敗したことは?」
    「今日、嫌だったことは?」

    ——そんな風に聞かれたら、私はきっとその夜、どんよりとした気分のまま眠りにつくことになる。

    なのに私は、息子には平気でそれを聞いていた。

    母親だから、心配しているから。
    そんな言い訳は簡単に浮かぶ。
    けれど本当は、ただの癖だったのだと思う。
    誰かを気にかける時、無意識に「悪いこと」の方から先に探してしまう癖。

    人にかける言葉は、褒め言葉でいい。
    愛のある言葉でいい。


    そう思い直した夜、
    ふと、もう一歩先があることに気がついた。

    人から褒められることを、待つのではなく。

    自分で、自分を褒める。

    今日一日の中で、褒めてあげられることを、一つでいいから見つけてみる。

    家族が、無事に一日を過ごせた。
    それだけで、実はとてつもなく大きなことだ。

    食器を洗った。
    子どもの宿題に丸をつけた。
    散らかったダイニングテーブルを片付けた。
    本を一ページだけ読んだ。
    今日、笑った瞬間があった。

    そのくらいで、いい。ハードルを上げる必要なんて、どこにもない。

    息子に「褒められた?」と聞き直したあの一瞬は、
    きっと息子のためだけの言い換えではなかった。

    自分自身に向けて、優しい質問を投げかけた夜だったのだと、今はそう思う。

    明日の夜も、同じように聞くだろう。

    「今日、褒められた?」

    そしてその質問は、いつからか、息子にではなく、自分自身に向けたものになっているかもしれない。

    #創作大賞2026 #エッセイ部門

     
     

    セイ

     
     
    ママの笑顔の再起動家🌸せいちゃん。 頑張りすぎて疲れたママが 自分らしく笑顔で生きるヒントを届けます✨ シンママ/3人育て中/福岡/26年接客経験

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