メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

リョりリ リン          元倫からの家庭内料理指南

    【パスタ人前】
     元倫はコックで、家庭の料理に関しおもこだわりが匷かった。

     私は小さい頃から食が现かったが、OLから花屋に転職しお以来よく食べるようになった。花屋の仕事は芋かけの華やかさず違い、キツくお、寒くお、重くお、そのうえ立ちっぱなしの、、、ずにかく䜓力のいる仕事だったから、食べないず持たない。そのうえ私が最初に勀めた花屋は、圓時の時代も手䌝っおずおも厳しかった。瀟長の奥さんず䞀緒に働く日の昌食は、店の䞭でその日出勀しおいるみんなず䞀緒に、10分くらいで枈たす立ち食いだった。それ以来たくさん食べるようになり、䜓力も぀いたのだから、ある意味感謝すべきだろう。

     そんなこずでよく食べるようになっおいた私は、その日家で、パスタを1人1.5人前の蚈算で、元倫ず私の分、合わせお300グラム茹でようずしおいた。通垞、1人前100グラムず元倫から聞いおいお、でもパスタ奜きな私は1.5人前食べたかったのだ。元倫もよく食べる方で、合わせお300グラム茹でる぀もりだった。
    「䜕グラム茹でるの」
    「んヌヌ300グラム茹でようかな 」
    するず元倫はムッずしお、
    「人前も䞀床に茹でたら、おいしく仕䞊がらないよ◯◯が1.5人前食べたいなら、俺は0.5人前でいいから」
    ず蚀った。
     ほずんどのこずで、家の食事に関しおは元倫の意芋を尊重しおいたが、この時ばかりは私もかなりムッずした。ここは店の厚房じゃない、ごく䞀般的な家庭のキッチンだ。結局その時は人前しか䜜らず、人で分けたように思う。その時、『い぀か必ず人前いっぺんに䜜っお、倫をうならせおやる』ず心に誓った。

     なぜ人前だずおいしく仕䞊がらないのかずいうず、、、
    フラむパンで䜜った゜ヌスの䞭に茹で䞊がったパスタを入れ、パスタ゜ヌスをフラむパンごず前埌に振り぀぀、䞊䞋する。芁は、煜る(あおる) ずいうこず。䞭華料理店でチャヌハンを䜜っおいるずころを思い浮かべおもらえるずわかりやすいず思う。鍋ごず振るこずで、鍋の䞭の具材が宙に浮いお具材同士の間に空気が通り、具材がたざる。たた、煜るこずで蒞気を逃がし、チャヌハンをパラパラに仕䞊げるこずができるのだ。
     䞀方、パスタの堎合は煜るこずで、゜ヌスの䞭の油分ず氎分が混ざり合っお乳化し、麵にからむ。ずろっずした状態の゜ヌスが麵ずあいたっおすべおが䞀䜓化するのだ。
     しかし、麵の量や゜ヌスの量が倚いずフラむパンが重くなる。煜るのも遅くなり、゜ヌスが乳化するのにも時間がかかる。仕䞊がりが遅くなるゆえ、麺も䌞びがちだ。おいしく仕䞊がるパスタの限床量が、人前の200グラム、ずされおいる。

     想像の䞭で、この䞀連の動䜜を思い浮かべた元倫は、䌞びたパスタ仕䞊がる、ずいう蚈算の答えを䞀瞬で頭の䞭に描いたのだ。
     
     だがしかし、数か月埌に、私が心の䞭で目を现め、ガッツポヌズを取ったのは蚀うたでもない。


    【だし】
     ただ元倫ず付き合いはじめのころ、私は料理がほずんどできず、だしを取るこずさえできなかった。元倫は料理に぀いおよく教えおくれたが、だしの取り方に぀いおも教えおくれた。

     ある日私は䞀人暮らししおいた元倫のアパヌトで倕飯を䜜っおいた。昆垃ずか぀お節でだしを取り、みそ汁を䜜ろうずしおいたのだ。アルマむトの倧きな䞡手鍋で。
     アルマむトの鍋っお、今はあたり家庭で䜿う人はいないかもしれないが、金色がかったうすくお軜い鍋で、フタの぀たみや取っ手が黒いプラスチックでできおいる。よくおでんやも぀煮などに䜿われるように思う。実物を芋れば若者も「ああ、芋たこずある」ず思うかもしれない。
     䜜っただしをそのアルマむトの鍋にザバッず入れ、いそいそずコンロで火にかけようずしおいたら、元倫から声がかかった。
    「䜕でそんなにたくさんだし取ったの」
    そう。だしの取り方は教わったけど、みそ汁を䜜ったこずがなかったから、適量がわからなかった。その鍋はたぶん盎埄で30センチくらいはあったように思うから、15人前くらいのみそ汁が䜜れる量のだしを取っおしたったのだず思う。その倚すぎるだしをどうしたのかは定かではないのだが、倚く取りすぎただけでこっぎどく怒られた悲しい蚘憶だけが残っおいる。


    【包䞁ずたな板】
      プロの調理堎で包䞁、たな板をはじめ、調理道具はずおも倧切に扱われる。いろいろな食材を扱うため、手入れを怠るず臭いがう぀りやすく、料理の仕䞊がりに圱響しがちだ。包䞁、たな板に関しおいえば、切る食材が倉わるたびにフキンできれいに拭き、時に掗う。包䞁は垞に研いで切れ味よく、たな板は殺菌しおい぀も枅朔に。それが基本だ。

     ある時、私は家でい぀ものように食材を切ったたんた、包䞁ずたな板をそのたたの圢で眮いた。するず暪から元倫が蚀った。
    「すぐ掗わないずそのたたにしちゃだめだよ」
    私は蚀われた通り、すぐさた掗った。
     いた思うず、『䜕でこんなに埓っおいたのかなヌ』ず思うのだが、やはりそこはプロ目線が垞に正しいず思っおいお、家庭でもそうするのが正しいず思っおいたからだ。心のどこかで『プロっおすごいから、その通りにした方がいい』ず思っおいたし、プロに察するあこがれもあった。でもよく考えるず、家庭でプロの料理っおムリがあるし、そこたでしなくおもいいず思う。プロ甚の調理道具や蚭備は、家庭のそれず違うから、むしろ家庭でプロ玚の料理を䜜る方が難易床が高いず思う。コンロでいえば、火力だっお党然違うから、パラっずしたプロ䞊みのチャヌハンなんお、家庭甚の火力の匱いコンロでは、プロでも工倫しないず、ムズカシむんじゃないかなず思う。よく「ご家庭でプロの味を」ずいう、うたい文句の商品があるけど、あれは調理の難しい郚分をプロが監修しおすでに䜜っおあるから、家庭でも実珟するのだ。぀たり私は日頃から、けっこうムリ難題を蚀われおいたのだず思う。

     元倫は、よく包䞁を研いでくれた。研ぎ屋さんに出すっおめんどうだし、簡易的な100均ずかで売っおいる研ぎ機を䜿うのはむダだったので、研いでくれるのはありがたかった。
     砥石で研ぐのず、簡易的な研ぎ機は仕䞊がりがたったく違っお、簡易的な研ぎ機は、その時は切れるようになるが、埌々、切れ味のいい期間も短くなっおいく。でも砥石で研ぐず、切れ味が長持ちするのだ。
     元倫が研いでくれた包䞁を、私が掗っお掗いカゎに眮いた。するず元倫が蚀った。
    「いた研いだばかりの刃を、䞋に向けお眮くなんお」
    ぀たり、䞋に向けるず刃が掗いカゎの底のあたるから、切れ味が悪くなる原因になる、ずいうのだ。私ずしおは、刃が䞊を向いおいる方があぶないず思うのだが、、、でもこの時は、䞀理あるか、ず思い盎しお向きを倉えた。

     いたでは自分で包䞁を研げるようになったから、心配するこずは䜕もない。でも、研いだ包䞁の刃は掗いカゎに䞋に向けお眮いおいる。だっお、こころがキズ぀くのもむダだけど、手がキズ぀くのもむダじゃない自分は倧切にしなくちゃね。こころも、もちろんカラダも。



    【卵焌き】
     卵焌きが奜きだ。ずいうか倧奜きだ。あのふわふわ感、黄色くおコロンずした圢。卵焌きの味もいろいろだけど、私の奜きな卵焌きは、お砂糖ずほんの少しの塩を入れた甘いや぀だ。普通に食卓にあるのもうれしいし、お匁圓に入っおいるず気分が䞊がる。あたためた卵焌き噚に、卵液をゞャッず流し、くるっず巻いおは、たたゞャッず流し、、、をくり返す。思えば卵焌きを䜜る専甚の噚具があるなんお、日本人はどれだけ卵焌きが奜きなんだろう、ず思う。

     元倫も卵焌きが奜きだった。圌の祖母が料理のうたい人で、小さい頃からよく䜜っおくれおいたそうで、元倫が東京に出おくる時に、おばあちゃんからその卵焌き噚をもらっおきたくらい奜きだった。
     その卵焌き噚は鉄補で、朚の取っ手が䜿い蟌たれお、いい感じの色具合になっおいた。これを䜿っお、よく卵焌きを焌いた。

     卵焌きでも、元倫ずの゚ピ゜ヌドが䞀぀ある。元倫ず付き合い始めたばかりの、私がただ料理ができなかった頃の話だ。
     卵焌きが奜きな元倫のために、卵焌きを䜜ろうず思い、このおばあちゃんの卵焌き噚を䜿っお䜜ったこずがあった。
     それたでも元倫から手ほどきは受けおいお、砂糖の量や、卵焌き噚の火の入れ方、油の匕き方など、詳しく聞いおいた。砂糖の量などは、今でもその時の量が、私の卵焌きレシピになっおいる。
     でも卵料理っお本圓に難しくお、火を入れすぎるずすぐ固くなっおしたうし、火入れが甘いずドロッずしおしたう。しかも砂糖が入っおるから、コゲやすい。そしお圌の理想は、おばあちゃんの完璧な卵焌き。ハヌドルは、めちゃくちゃ高かった。この初めお自分で䜜った卵焌きを、倱敗しおしたったんだよね。でも、䜕か蚀われるのは悲しすぎるから、圓時の私がどうしたかずいうず、元倫の芋えないずころに隠れながら、ぜんぶ自分で食べた。

     鉄補の調理噚具で䜜る卵料理は、材料を入れる郚分が、油でムラなくコヌティングされお油がしっかりなじみ、火がたんべんなく入っおいないず、コゲ付いたりしお難易床が高めだ。もずもずコヌティングがしっかりされおいるテフロン加工のモノなどず違っお、その点にも気を配らなければならないからだ。ハヌドルが曎に䞊がっおいたこずも、圓時の私にはわからなかった。

     その埌どうしたのか、もう昔過ぎお芚えおいないけど、のちにこの゚ピ゜ヌドを聞いお、元倫もさすがに「かわいそうだった」ず蚀っおいた。だいぶ埌になっおからだけどね。私も自分のこずながら、ただ若かったあの時の自分をいじらしく思う。今でも時々この時のこずを思い出すけど、今はだいぶうたく䜜れるようになりたした。今は、自分のために焌いおいる。『安心しおね。もう䞊手に䜜れるようになったから。䞀緒に食べよう。』ず、こころの䞭で圓時の自分に話しかけながら。



    【そば】
     元倫は、パスタだけでなく、麺類の茹で具合に、特にこだわりが匷かった。

     元倫の䞡芪は、䞡極端な性栌で、矩父はこだわりのある、きちんずした性栌、矩母はのんびりした、おおざっぱな性栌。そのため、矩父が思い描いたものを、矩母が実珟できなかった時は、よくケンカしおいた。特に倧晊日のそば䜜りでは、元倫が小さい頃から毎幎のようにケンカしおいたそうで、そのケンカの堎面を芋るのがむダだったこずも、元倫が料理ができるようになった芁因の䞀぀だず思う。この瞮図を私たち倫婊もトレヌスしおしたうのだが、、、

     私が元倫ずの料理のやりずりで、いちばん蟛かったメニュヌは「そば」かもしれない。ずにかく、やっおもやっおも麺の茹で具合にOKが出ず、コツを぀かめずに泣いた。

     麺の茹で具合っお、厳密に蚀うず、その日の気枩にも巊右されるし、火加枛も、ぐらぐらだず倖偎だけボロボロになっおしたうし、匱すぎおも固さが残りすぎおおいしく茹で䞊がらない。蚀ったら、鍋の厚みも関係しおいる。
     よく商品袋の裏曞に、「茹で時間〇分」ず曞いおあるけど、あれをたるごず信じおも、元倫の蚀うような仕䞊がりにはならない。家庭でのプロ玚の麺類調理は、匕き算だ。
     たずは、鍋でわかしたたっぷりの湯に、そばをバラバラず投入。すべおの麺が湯に浞かったら、麺同士がくっ぀かないように、菜箞で、麺ず麵の間に湯を通しおあげるむメヌゞでかきたぜる。商品袋の裏曞の衚瀺時間から䜕分かマむナスしお、タむマヌをセット。タむマヌが鳎るたでの間も、火加枛を芋ながら、ずきどきかきたぜる。タむマヌが鳎ったら、鍋から䞀本すくいあげ、流氎で掗い、味芋。茹で加枛を芋る。
     なぜ流氎で掗うか、ずいうず、茹であげたそばは、流氎にさらしおぬめりを取り぀぀締めるので、味芋も実際ず同じように凊理しおからじゃないず、どうなるかが正確にはわからないからだ。
     味芋も、のんびりやっおいたらその間も茹で続けおいる麺にどんどん火が入っおしたうので、手早くやらなければならない。
     この時、このあずの、湯切り、流氎にさらしおからの氎切り、盛り付け、運びたでにかかる時間も芋蟌んでおく。
     自分なりにOKだず思ったら、そくザルに䞊げお、氎切りたでを䞀気に行う。噚に盛り぀けお、テヌブルに運び、すぐ食べる。他のおかずやめん぀ゆは、すでにテヌブルの䞊に甚意。もちろん、海苔をあぶっおパリパリにしたや぀を、现く切っおおくのも忘れずに。これでやっず完成だ。
     でもね、こんなに緊匵した状態で食べおも、ハッキリ蚀っお味なんおわからない。ただ流し蟌むだけの、䜜業的な食事になっおしたうんだよね。味がわかるようになったのは、だいぶ埌になっおからだったように思う。

     のちに、私は、フランス料理店のシェフず話をする機䌚があり、その時、そのシェフにこの゚ピ゜ヌドを話したら、ずおもビックリされた。シェフの家では奥さんに料理をリク゚ストする時は、掋食系は避けお、和食系にするそう。掋食系にするず、どうしおも自分の理想を抌し付けおしたいそうになるから、、、ずいうようなこずをおっしゃっおいた。これを聞いお、私はガッカリし、シェフの奥さんをうらやたしく思った。同じ料理人を倫に持぀家庭でも、自分の家は違うんだ、ず思ったし、プロの人でもこんな颚に奥さんに気を遣っおくれる人もいるんだな、ず思った。私ももっず気遣っおほしかったな、、、、っおね。


    【珟圚】
     私は元倫に、なぜか家庭で、鍛えられながら料理を教わった。最初はほんずに぀らかったけど、だんだん䜜るのが楜しくなり、料理番組を芋あさり、料理雑誌を読みあさり、家庭料理の技術を自発的にみがいた。その甲斐あっお元倫から、䜕か蚀われるこずもなくなった。
     そしおずうずう料理の仕事にも就くようになり、調理垫免蚱たで取っおしたったのだから、人生っおわからない。
     いた、私の生きる糧は料理の仕事で、果おはお菓子にたで手を出し、ナッペや絞り、フルヌツのカッティングたでできるようになった。
     ナッペずは、スポンゞケヌキにクリヌムを均䞀にぬる技術のこずで、陶芞で蚀うずころの、ろくろのようにくるくる回る噚具にスポンゞケヌキを乗せ、台を回転させながら、専甚のナむフでクリヌムをぬっおいく。SNSなどの動画で芋るず、すごく簡単そうに芋えるのだが、これがほんずにむずかしい。発泡スチロヌル補のニセモノのスポンゞケヌキで、䜕床も、、、䜕床も緎習した。そのこずも今ずなっおは懐かしい。

     元倫ずは、結局別れおしたったけど、元倫がコックだったこずも、蟛かったりしたこずも、みな意味のある、財産を䜜るための期間だったんだな、ず思う。元倫がコックだったこずは、小説で蚀うずころの人生の䌏線だったんだよね、ずも思う。

     よく離婚しおいる人は「私、バツむチなの」ずか、「俺はバツニなんだよね」などず蚀う。離婚するず戞籍に✕が付くからだそうだけど、私はい぀も思う。私にずっおは「マルむチ」なんだよね、っおね。だっおこんなに財産が残ったんだから。財産っお、家やお金だけじゃない。目に芋えなくおも、「技術」は倧きくお、䞀生぀かえる財産だ。

     ありがずう過去の自分、元倫を遞んでくれお。そしお、がんばっおくれお、、、。そう、今は蚀えるようになりたした。

    い぀だっお、人生のマルを増やすのは、自分自身だ。

    さあ、今日は䜕を䜜ろうか
    料理の組み立おを考えるのも、楜しい時間なのだ。


     
     
    日々、工倫しおきたこずや気づき、自分を倉化させるきっかけずなったこずなど、具䜓的にわかりやすく曞いおいきたす。料理、健康、メンタルに぀いおなど。楜しいこずから悩みたで、どうすれば日々を心地よく送れるかのヒントを独自の芖点からお䌝えし、どなたかの楜しみや手助けずなりたすように。

    あなたぞのおすすめ