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嘘つきな占い師と絶対に騙されない女⑧

    雨の降る夜だった。

    バーの奥。

    薄暗い照明の下で、ホタルは静かにカードを混ぜていた。

    カラン。

    その時、扉が開いた。

    「……あの」

    入ってきたのは、一人の女性だった。

    黒髪を後ろでまとめた、真面目そうな雰囲気。

    スーツ姿。

    年齢は三十前後。

    どこにでもいそうなのに、どこか疲れ切って見えた。

    ホタルは柔らかく笑う。

    「いらっしゃい。占い?」

    女性は少し迷ってから、小さく頷いた。

    席に座る。

    指先が、落ち着かないようにカップを触っていた。

    「何を見ましょうか」

    優しい声。

    女性はしばらく黙り込み

    やがて、小さく口を開く。

    「……会社の人、なんですけど」

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    ホタルの手が止まる。

    「ずっと嫌がらせをされてて」

    視線は下を向いたまま。

    「最初は些細なことでした。書類を隠されたり、陰口だったり……」

    声が少し震える。

    「でも最近は、帰り道まで付いてきて」

    バーの空気が、静かに冷える。

    ホタルは何も言わない。

    ただ、カードを並べる。

    女性は続ける。

    「警察にも相談しました。でも証拠が弱いって……」

    笑おうとした。

    だが失敗した。

    「……私が気にしすぎなのかなって」

    その瞬間。

    ホタルの背後。

    暗がりの中で、“もう一人”が笑った。

    見えてはいけない存在。

    同じ顔。

    同じ声。

    だが目だけが黒い。

    『へえ』

    ホタルだけに聞こえる声。

    『典型的だね』

    カラン。

    氷が鳴る。

    『こういうの、放っておくと面倒になる』

    ホタルは無表情のままカードを見る。

    だが、指先だけが止まっていた。

    女性は気づかない。

    「最近、眠れなくて……」

    小さな声。

    消えそうな声。

    その時。

    もう一人のホタルが、楽しそうに囁く。

    『駆除する?』

    空気が、凍る。

    ホタルの視線がわずかに揺れた。

    『害虫みたいなものでしょ』

    黒い目が細くなる。

    『一匹いるだけで、周り全部腐る』

    ホタルは静かにグラスを持ち上げる。

    氷が鳴る。

    カラン。

    「……名前は?」

    女性が顔を上げる。

    「え?」

    「嫌がらせしてる男」

    静かな声だった。

    優しい声。

    だが、その奥に何かが沈んでいる。

    女性は少し迷い

    男の名前を口にした。

    その瞬間。

    ホタルの脳裏に、映像が流れる。

    暗い路地。

    割れたスマホ。

    血。

    赤信号。


    そして

    黒いダイヤ。

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    一瞬で消える。

    ホタルは目を閉じた。

    “予測”が始まっている。

    もう一人のホタルが、嬉しそうに笑う。

    『見えた?』

    沈黙。

    『なら、どうする?』

    ホタルは答えない。

    ただ

    並べたカードの中に、一枚だけ。

    黒いダイヤが混じっていた。

     
     
     

    Kuro

     
     
    小さい時から映画で学び生活に映画が欠かせない。 インドアandアウトドア派のソロ好き  趣味  カフェ巡り、料理、コーヒー、ラーメン巡り、アイス巡り、クレープ巡り、映画、読書、ドラマ、漫画、アニメ、岩盤浴、サウナ、キャンプ、車中泊、釣り、スノボー、ゲーム、ドライブ、自転車

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