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CNAプロジェクト - Prologue -

    第1話|3/1|「アンナデビュー翌日」

    昨日のことが、まだ夢みたい。

    ステージに立つ直前、
    あの白いライトが降りてきた瞬間、
    時間が止まった気がした。

    怖くなかったって言ったら嘘になる。
    でも、それよりもずっと――
    「やっとここまで来た」って気持ちの方が強かった。

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    拍手の音、
    光の粒、
    少し震えた指先。

    全部、ちゃんと覚えてる。

    花束をもらったとき、
    泣かないって決めてたのに、
    目が熱くなった。

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    うれしいって、
    あんなに静かで、あんなに強い感情なんだね。

    帰ってからも眠れなくて、
    ヘッドホン外せなかった。

    今日、鏡を見たら
    ちゃんと“アンナ”がそこにいた。

    でもまだ始まったばかり。

    もっと歌いたい。
    もっと強くなりたい。
    もっと光の中へ。

    昨日は“はじまり”。

    今日は――
    覚悟の日。

    アンナ

    第2話|3/3|「アンナの覚悟」

    デビューしてから、時間の流れが少し変わった気がします。
    早いようで、ちゃんと重い。

    あの日のライトの眩しさも、
    ステージに立つ前の静かな緊張も、
    まだ鮮明に残っています。

    でも不思議と、
    もう戻りたいとは思わない。

    “準備中”だった頃は、
    どこかで守られていた気がする。
    今は、全部が自分の名前で動く。
    それが少し怖くて、少し誇らしい。

    まだ小さな一歩。
    でも、確実に前に出ている。

    私は、ここから強くなります。

    見ていてください。

    ― アンナ

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    第3話|3/5|「スタジオ練習」

    あの日から、毎日が濃い。

    少しだけ不安もあったけど、
    スタジオに入った瞬間、
    全部音に溶けた。

    鏡越しに、
    もうひとつの影が動く。

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    揃えるわけじゃないのに、
    呼吸が合う。

    強いなって思う。

    私は声で前に出るけど、
    後ろから押してくれる動きがある。

    一人じゃないって、
    こういうことなんだね。

    充実してる。

    まだ荒い。
    まだ足りない。

    でも、ちゃんと進んでる。

    アンナ

    第4話|3/7|「アンナのオフ」

    今日は久しぶりに、ちゃんとしたオフ。

    カフェに入って、
    提出期限が今週末の
    学校のレポート…できるかな…

    テーマは
    「パフォーマンスにおける“間”の演出効果」。

    アンナの実体験
    あの日のライトを思い出しながら…書いた。

    歌い出す前の、あの一瞬の静けさ。

    あれが一番、心臓がうるさい。
    次の瞬間爆発する光…

    いいレポートが書けた気がする。
    少しだけ達成感。

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    そのままピラティスへ。

    オフに激しい運動はしない。
    ゆっくり体のメンテナンス。

    体を伸ばして、呼吸を整えて、
    ちゃんと自分を感じる時間。

    余計なことを考えないで済む
    贅沢なひとり時間。

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    夜は友達とごはん。

    たくさん笑った。

    なんでもない話をして、
    なんでもない時間を過ごして。

    ひとりもいいけど、
    やっぱり仲間がいると力強い。

    たくさん共感できる時間を共有し、
    一緒に泣いたり笑ったり…

    満喫。

    本当に贅沢な時間。
    また明日から、ちゃんと走れる。

    アンナ

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    第5話|3/9|「授業」

    今日は学校。

    “間”の授業。

    今日はあえて、
    声を出さない練習。

    無音の中で立つだけなのに、
    これが意外と怖い。

    声がないと…不安!
    でもその分、
    呼吸とか視線とか、
    全部がはっきりする。

    先生が言ってた。

    「間は止まることじゃない。
    エネルギーを溜めること」

    なるほどって思ったけど、
    やってみると難しい。笑

    静かなはずなのに、
    自分の心臓の音だけうるさい。

    でも、
    ほんの一瞬だけ
    空気が変わった気がした。

    あ、今だ。

    難しいけど、
    ちょっと楽しい。

    そんなにうまくはいかなかったけどね。笑

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    帰り道、公園でスケボーの音。

    カタン、って
    アスファルトに当たるあの音。

    子どもたちの真ん中で、
    あの人が普通にトリック決めてた。

    派手じゃないのに、
    ちゃんと難しいやつ。

    歓声。

    目を丸くして、
    「もう一回!」って囲まれてる。

    「さすがオリンピック候補。」

    って言ったら、

    「もう違う。」

    って。

    少しだけ間を置いてから。

    すぐ言い直さないところが、らしい。

    でも、
    できない子がいたら
    さりげなく横にしゃがんで、

    「今の、ここだけ直せばいけるよ。」

    って。

    声は静か。
    でも目はちゃんと見てる。

    自分のことは
    あんまり話さないのに、

    人のことはちゃんと見る。

    うまくいかない日もあるけど、

    なんか大丈夫な気がした。

    アンナ

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    第6話|3/11|「ネイル」

    今日はネイル。

    いつものネイリストさんにお願いした。

    いつもかわいいネイルをしてくれるから、
    今日は「お任せ」で。

    「じゃ、アンナのイメージでやるね!」

    アンナのイメージ……
    なんだろ?

    アイドル?
    光?
    ステージ?

    考えてるうちに、日頃の練習の疲れからか、
    ちょっとうとうと……

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    「完成!」

    えっ…………

    親指に、
    まあまあ大きめの雷。

    しかも立体。
    しかも黄色。

    「今に見てな、落ちるから。」

    って。

    ……何が?

    全く意味が分からない。

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    でも、
    ライトの下で見たらちゃんと光ってる。

    角度を変えると、雷の縁がキラッて光る。

    しかも、
    よく見ると細かいラメが入ってる。

    ……こだわりすごい。

    「絶対そのうち落ちるから。」

    意味は分からないけど、
    本人はすごく自信ありげ。

    帰り道、
    コンビニのガラスに映った手を見た。

    ……やっぱり派手。

    でも。
    なんか、ちょっとだけ元気出る。
    悔しいけど、ちょっと好き(笑)

    不思議。

    ネイルってこういうものなのかな。

    まあいいや。

    しばらくこの雷と付き合ってみる。

    アンナ

    第7話|3/13|「いつもの友達」

    今日のスタジオ練習。

    いつもの友達とダンスレッスン。

    さすが“元”オリンピック候補だけあって、
    動きはキレキレ。

    体の止め方とか、
    ターンの速さとか、
    …なんかもう、別次元。

    私はというと、

    …完全にオイテケボリ。

    同じ振りなのに、
    なんであんなに軽いの。笑

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    「コツある?」

    って聞いても、

    「見て。」

    だけ。

    やってみる。

    「もう一回。」

    それだけ。

    なかなかうまくいかない…
    ( ノД`)シクシク…

    でも、

    横にいると不思議と焦らない。

    できないところは、
    黙って何回でも合わせてくれる。

    言葉は少ないけど、
    背中で引っ張るタイプ。

    うまくいかなくても、
    ちゃんとついていこうって思える。

    心強いパートナー。

    アンナ

    第7話|3/15|「ドライブ」

    今日はちょっとだけ
    ドライブに付き合った。

    赤い小さめのオープンカー。


    低めのシートに座ると、
    なんかレーシングカーみたい。

    本人は
    めちゃくちゃ楽しそうに
    風を浴びてる。

    走ってるだけで
    風がすごい。

    髪ぐちゃぐちゃ。

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    途中で、
    海の見える小高い丘に車を止めた。

    エンジン止めたら、
    今度はまた違う風。

    静かな風。

    髪がふわっと揺れて、
    空がすごく近い。

    ……

    (…絵になるね)

    恥ずかしくて
    本人には言わないけど。

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    帰る前に、
    コンビニでひと休み。

    ブラックコーヒーを
    買っていた。

    私は
    ホットカフェラテ。

    夜風に揺られながら、
    2人で今日を振り返った。

    そういえば、
    初ドライブだったね。

    風、気持ちよかった…

    そんな日でした。

    アンナ

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    第8話|3/17|「橘さん」

    スタジオの外部講師、橘さん。

    ゴリマッチョだけど、
    すごく優しい人。

    不定期でスタジオに来ていて、
    オーナーのお気に入りらしい。

    素性はよくわからないけど、
    なぜか私のことをよく見てくれている。

    ちょっとお兄さんみたいな存在。

    レッスンが終わったあと、
    スタジオの外で少し立ち話をした。

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    「どう?」

    橘さんが聞く。

    「できてるのかできてないのか
     よくわかんないけど……楽しい」

    橘さんは少し笑って言った。

    「できてるよ」

    「ありがとう」

    少し間があって、
    橘さんが聞いた。

    「今後どうしていくの?」

    「……何も決まってない」

    そう答えると、
    橘さんは少し考えてから言った。

    「アンナ、ひとりでやっていくのって
     結構大変だと思うよ。」

    ……

    やっぱり、
    そう思うよね。

    私も
    なんとなくそう感じていた。

    すると橘さんが続けた。

    「ユニットっていう形もあるよ。」

    ユニット…

    想像してなかったから、
    最初は意味が分からなかった。

    「えっ?」

    「アンナは歌で、
    後ろで支えてくれる人がいたら安心じゃない?」

    「それはそうだけど…」

    橘さんが聞いた。

    「誰か心当たりない?」

    ドキッとした。

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    ピッタリな人が
    一人だけ…いる。

    でも、もし断られたら。

    正直、
    他にあてはない。

    ……

    ちょっとだけ
    怖くなった。

    そのとき橘さんが
    私の背中を軽く叩いた。

    「まぁ、聞くだけ聞いてみな。」

    橘さんが
    ふっと視線を向けた先。

    スタジオの奥で
    ひとりストレッチしている人。

    ……

    私も
    同じ方を見ていた。

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    第9話|3/19|「ユニット?」

    レッスンが終わって、
    スタジオの奥に…いた。

    ストレッチしている。

    声をかけるタイミングを
    ずっと探していたけど、

    結局
    普通に声をかけた。

    「ユイ」

    ユイが顔を上げる。

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    「ん?」

    何て言えばいいんだろう、
    一瞬戸惑った。

    でも
    言うしかない。

    「もしよかったら、一緒にやらない?」

    「え?」

    「その…ユニット」

    少しだけ沈黙。

    ユイは
    一瞬だけ戸惑った顔をした。

    やっぱりダメかも。

    そう思った瞬間。

    ユイが笑った。

    「もちろんいいよ!」

    その言葉を聞いた瞬間、

    全身の力が
    一気に抜けた。

    私はそのまま
    床にへたり込んだ。

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    ユイが笑う。

    「頼りないぞ、リーダー!」

    「だって…」

    言葉が続かない。

    視界が
    少しぼやけた。

    ……涙が出そうだった。

    第9話|3/21|「新メンバー ユイ」

    はじめましてユイです。

    アンナに誘われるがままに、
    一緒にやるって約束しちゃいました。

    ユニット、だって。

    私に何ができるかな?
    ―――――――――――—————
    アンナは幼馴染。

    小さい頃から
    ずっと妹みたいに思ってた。

    かわいいんだよ、あいつ。

    でもね、
    かわいいだけじゃない。

    ちょっと不思議な雰囲気がある。

    気づいたら
    自然と人が集まってくる。

    そんな不思議な魅力がある。
    ――――――――――—————
    あるときアンナが
    真剣な顔で言ってきた。

    「アイドルになりたい」

    びっくりしたけど、
    その時から私は

    アンナのファン第1号(笑)

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    私はというと
    ずっと運動ばっかりやってきた。

    スノーボード
    ハーフパイプ。

    4年前の北京は
    実力不足。

    そして今年の
    ミラノ・コルティナ。

    人生をかけて挑んだ。

    でも――

    選考されなかった。

    そして私の競技人生は
    ここで終わった。

    ……

    目標がなくなった…

    とりあえず体を動かすと、
    何も考えなくて済む。

    そんな毎日…

    (ちゃんとしなきゃな)



    そんな時に
    アンナが声をかけてきた。

    「一緒にやらない?」

    意味が分からなかった。

    (私がアイドル?)

    なんでだろう。

    理由はよく分からないけど、

    アンナのためになれるなら
    そんな気持ちで、つい

    「もちろんいいよ!」

    って言っちゃった(笑)。

    私に何ができるかわかんないけど、
    何の目標もない私を
    もう一度動かしてくれた。

    第2の人生を
    アンナにかけるのも

    悪くないんじゃないかと思う。

    第10話|3/23|「ユイのダンス」

    スタジオ練習

    今日はスタジオ。

    ユイも一緒。

    ユイは
    ダンスなんてやったことないって言ってたけど、

    私は前から
    何度か見ている。

    やっぱり
    すごい。

    体の動きが
    自然なんだよね。

    リズムの取り方も
    変に考えてない感じ。

    アスリートって
    こういうものなのかなって思う。

    私は
    そんなことを考えながら見ていた。

    橘さんも
    腕を組んで見ている。

    橘さんは
    ユイのことを知っている。

    元オリンピック候補。

    スノーボード
    ハーフパイプ。

    身体能力が高いのは
    最初から分かっていたみたい。

    でも――

    今日は
    少し様子が違った。

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    途中で橘さんが言った。

    「ユイ」

    「ダンスやってた?」

    ユイは
    首を振る。

    「いや、全然」

    橘さんは
    少しだけ笑った。

    「嘘だろ」

    そして

    「テンポがいい」

    「指先の動きが
     素人じゃない」

    私は
    ちょっと驚いた。

    そこまで見てるんだ。

    橘さんは
    スタジオの鏡を見ながら言った。

    「少しやれば」

    「ダンスだけで食っていける」

    私は思った。

    やっぱり。

    ユイは
    すごい。

    でも――

    橘さんは
    少し考えている顔をしていた。

    「面白くなるな」

    そう言ったあと

    橘さんは
    小さく続けた。

    「ただ…」

    「もう一人欲しいな」

    第11話|3/25|「橘の独り言」

    もう一人。

    誰を入れるか。

    ユニットを作るなら
    三人は欲しい。

    アンナとユイ。
    この二人はいい。

    ただ――
    あと一人が決まらない。

    いろいろ考えてみる。

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    清楚系。
    いかにもアイドル、
    って感じの子。
    ……違うな。

    お笑い担当。
    場を回すタイプ。
    それもなんか違う。

    音楽系。
    歌や楽器が強いタイプ。
    悪くないけどしっくりこない。

    活発なダンス路線。
    ユイと並べてパフォーマンスを強くする。
    それも悪くない。

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    でも――

    どれもピンとこない。

    俺が欲しいのは
    多分そういうのじゃない。

    もっと

    空気をかき回すようなやつ。

    予定を壊してくるやつ。

    少し破天荒なくらいでいい。

    それでいて

    ビジュアルもいい。
    身体能力も高い。

    ……

    そんなの
    いるわけないか。

    でも

    もう一人は
    慎重に選ばないといけない。

    せっかく
    いい流れができてる。

    この流れを
    ちゃんと形にしたい。

    あと一人。

    ……

    いないかな。

    第12話|3/27|「ユイ改造計画」

    今日はユイとお茶。

    というか
    ユイ改造計画(笑)

    ユイってさ、

    ずっとスポーツばっかりで
    オシャレとか全然気にしてこなかったらしい。

    服とか見ても

    「これ動きやすい?」

    まずそこ。

    いや、そこじゃない(笑)

    だから今日は

    オシャレ講座。

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    スケスケトップス当ててみたり
    短いスカート当ててみたり

    そのたびに

    ユイの顔が
    どんどん困っていく。

    それが面白くて

    ちょっと遊んでた(笑)

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    ユイが泣きそうなので、
    ちょっと休憩でカフェへ

    疲れた顔のユイ。
    ブラックコーヒーで一息ついたところ

    私の手を見て
    「それ、かわいい!」

    稲妻のデザイン。

    ちょっと派手だけど
    私は結構気に入ってる。
    アンナ
    「でしょ?」
    ユイ
    「なかなかそのネイルは見ないよね」
    アンナ
    「ネイリストの友達にやってもらった」

    そして言った。
    アンナ
    「ちょっと変わってるけど、腕は確か」
    ユイ
    「私もかわいいネイルの挑戦したいな」
    アンナ
    「うん!紹介する!」
    「ちょっとクセあるけどさ…面白いよ?」

    ユイは
    その時は、軽く聞き流してた…

    第13話|3/29|「ネイリスト ≪カナ≫」

    後日。

    ユイを連れて
    ネイルサロンへ。

    ユイはネットで色々調べてきたらしく
    カナにスマホ見せながら
    「こんな感じとか」
    「こんなのもいい」
    「これもいいな」

    完全に浮かれてる

    いろいろ言ってたけど

    カナはニコニコして

    「うんうん」

    って言いながら…

    多分
    半分くらい聞いてない。

    そして最後に一言。

    「あたしに任せて!」

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    ユイが
    「う、うん…」
    って顔してる。

    私は小声で言った。
    「大丈夫…多分」

    そして。

    「はーい完成!」

    「えっ………」

    しばし沈黙

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    それもそのはず
    ユイの爪は見事に真っ黒…

    「これ?……」

    完全に固まってる。

    カナが言う。

    「黒が似合う人って、

    絶対かっこいいから!」

    そうだけど…

    でもよく見ると

    親指にだけ
    細い渦巻のモチーフ。

    細かい。

    めちゃくちゃ細かい。

    ユイが

    「……」

    「……」

    「かっこいいかも」

    って言った。

    カナはどや顔。

    「だから言ったじゃん。」

    そのあと。

    ユイはずっと
    自分の爪を見てた。

    帰り道も。

    信号待ちでも。

    電車の窓でも。

    ……

    なんだかんだで、
    気に入ってるみたい。

    紹介してよかった…のかな?(笑)。

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    第14話|3/31|「ユイの変化」

    スタジオ帰り。

    ユイとお茶して帰るのが
    最近の日課になりつつある。

    ユニットの話は
    正直、何も進んでない。

    でも

    橘さんに任せておけば
    いいか…

    なんて

    ちょっと吞気に考えてる。

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    ユイは最近

    すごく笑うようになってきた。

    あの時のこと

    少しは
    乗り越えたかな。

    だとしたら

    私も
    少しはいいことしたのかも。

    ……だったらいいな。

    ユイは最近

    オシャレにも
    結構熱心。

    自撮りしたり

    スマホの着せ替えアプリで
    色を合わせたり
    組み合わせを考えたり。

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    でも

    結局最後は

    黒。

    やっぱり
    黒に落ち着くんだけど(笑)

    まだまだ
    これからだね。

    今は

    充実した毎日。

    でも

    現状に満足したら
    前には進めない。

    もっと
    高みを目指すために。

    あと

    もう一人。

    第15話|4/2|「ア・タ・シ」〖神回〗

    今日はお休み。

    朝の弱いアンナは
    起きたらもうお日様かんかん…

    見にいこうと思ってた映画、
    ギリギリ間に合いそう!

    急いで準備して
    行ってきます。

    すっごく良かった!

    めちゃくちゃ泣いた

    事故物件ゾク 恐い間取り(笑)。


    映画館を出て
    まだ余韻に浸りながら歩いていたら

    あれ?

    ……ユイ?

    見たことないくらい
    おしゃれしてる。

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    思わず

    「ユイー!」

    ユイがびっくりして振り向く。

    「アンナ、どうしてここに…」

    ちょっと
    恥ずかしそう。

    なんか

    いつもと違って
    大人っぽいユイ。

    でも

    ちょっと
    似合ってるかも。

    立ち話していると

    急に

    「アンナ、ユイ!」

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    え?

    誰?

    奇抜なスタイルで
    一瞬わからなかったけど

    「カナ!」

    カナが笑う。

    「何してんの?」

    「立ち話してるなら
    そこの喫茶店行かない?」

    「美味しいクレープあるよ!」

    ユイと顔を見合わせて

    「行こう!」(笑)

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    喫茶店。

    クレープを食べながら

    私は聞いた。

    「カナは何してたの?」

    カナは平然と答える。

    「ただの食べ歩きだよー」

    「まだ3軒目」

    「……」

    ユイと
    顔を見合わせた。

    「そういえば2人は何してるの?」

    カナが聞く。

    ユイが答える。

    「ユニットの最後の一人
    探してる」

    カナ

    「へー」

    「あたし
    心当たりあるかもー」

    ユイと私は

    「誰?どんな子?いくつ?」

    思わず
    食い気味。

    カナ

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    「ア・タ・シ」

    「………」

    しばし沈黙。

    ユイが言った。

    「何やるか、わかってんの?」

    カナは

    ナポリタンをほおばりながら

    普通に言った。

    「わかんないけど」

    「楽しそうだから」

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    私は思わず言った。

    「そんなに簡単なことじゃないよ」

    ユイも続く。

    「練習だってきついし」

    「歌も踊りもだよ」

    「運動したことある?」

    「休みだってほとんどないよ」

    矢継ぎ早に

    ちょっと諦めさせるつもりで
    説明する。

    でも

    カナは

    ナポリタンをほおばりながら

    「大丈夫だよー、あたしは」

    ……。

    ユイと目が合う。

    (アンナ、どうするの?)

    (わかんないけど…)

    (1回連れて行ってみる?)

    (そしたら諦めるよ、きっと)

    私はカナに言った。

    「わかった」

    「じゃ、まずは研究生ね」

    「できそうなら続ければいいし」

    カナは

    にこっと笑って言った。

    「はーい」

    まさかカナが
    やりたいなんて…

    でも

    無理だよね、絶対。

    第16話|4/4|「カナ初練習」

    今日はカナが初めて
    スタジオに来る日。

    ……とはいっても
    正直、あんまり本気にしてなかった。

    この前だって
    「楽しそうだから」
    って感じだったし。

    きっと今日も
    軽いノリで来て

    ちょっと見て
    やっぱ無理かもーって
    帰るんじゃないかなって。

    ユイもたぶん
    同じこと思ってる。

    スタジオの入口で待っていると
    遠くからこっちに歩いてくる人影。

    ……え。

    画像

    ピンクのTシャツに
    黒の短パン。
    そしてサングラス。

    どう見ても遊びに来た人。

    私は思わず
    ユイに小声で言った。
    「……ねえ、あれ本当にカナ?」

    ユイも真顔で
    「たぶん」
    って。

    近づいてきたカナは
    いつもの調子で手をあげた。

    「おはよー」

    いやいや。
    その格好で“おはよー”じゃないのよ。

    私はちょっと笑いそうになったけど
    なるべく真面目に言った。

    「ここ遊びに来る場所じゃないからね?」

    するとカナは
    「わかってるよー」
    って言いながら
    サングラスを外した。

    ……ほんとにわかってるのかな。

    スタジオに入って準備を始める。

    ユイはストレッチ。
    私は音の確認。

    でもカナは
    鏡の前で
    自分を見ながら一言。

    「このスタジオ、盛れるね」

    私は思わず
    振り返った。

    「盛れるとかじゃなくて!」

    ユイはもう
    こめかみ押さえてる。

    「アンナ、たぶん今日長いよ」
    そんな予感しかしない。

    画像

    とりあえず基礎の動きから。

    まずは経験者ならだれでもできる
    簡単なステップ。

    ……のはずだったんだけど。

    カナ、
    余裕でできてる。

    「え?」

    私とユイ、同時に止まる。

    ユイが小さくつぶやく。
    「……今の、合ってたよね?」

    もう一回やってもらう。

    やっぱりできてる。

    それもちゃんとリズムに合ってる。

    私はちょっとだけ
    嫌な予感がした。

    次は上級レベルの少し難しいステップ。

    普通はここでつまずくところ。

    ……のはずなのに。

    カナ、
    普通にできる…
    どころか

    アレンジ入れてきた。

    「……なに?」

    ユイが完全に固まる。

    カナは楽しそうに
    くるっと回って
    最後に軽くポーズ。

    画像

    スタジオが

    一瞬、静かになる。

    みんなポカーン。

    カナだけ
    めちゃくちゃ楽しそう。

    ユイは
    なぜかちょっと悔しそう。

    私は思わず言った。

    「カナ、すごい!」

    「……やってたの?」

    するとカナは
    首をかしげて

    「何を?」

    ……。

    私は言葉に詰まる。

    ユイも無言。

    カナは普通に
    「なんか体動かすの好きだから
    適当にやってるだけだよー」

    って笑ってる。

    いや、
    “適当”のレベルじゃない。

    私はユイと目を合わせる。
    (これ、どうする?)

    ユイは小さく
    (知らない)
    って顔をした。

    さっきまで
    すぐ諦めると思ってたのに。
    なんか全然違う。

    この子ちょっと変。

    でも——

    なんか面白い。

    第17話|4/6|「橘の決断」

    今日のスタジオは
    ちょっと空気が違った。

    原因はユイ。

    カナの動きを見てから
    明らかにスイッチ入ってる。

    「もう一回」
    「そこ違う」
    「もっとこう」

    いつもより言葉も動きも強い。

    カナはというと
    それを楽しそうにマネしてる。

    真似して
    ちょっと崩して
    また笑ってる。

    それを見て
    ユイがさらにムキになる。

    「違うって言ってるでしょ」
    「だからこう!」
    どんどんヒートアップ。

    でもカナは全然引かない。
    むしろ楽しそう。

    画像

    そのやり取りを
    何回か繰り返していると——

    後ろで見ていた橘さんが
    小さくつぶやいた。

    「……この子だ」

    私は思わず振り返る。

    「え?」

    橘さんは
    すぐに私を呼んだ。
    「アンナ、ちょっと来い」

    少し離れたところで
    真剣な顔。

    「この子にしよう」

    「え?」

    思わず聞き返す。
    「本気で言ってる?」

    橘さんは即答だった。
    「これ以上ないくらい本気だ」

    その目、
    ちょっと怖いくらい真剣で。

    ……なんだか
    すごく興奮してる。

    私は一瞬
    言葉が出なかった。

    とりあえず
    ヒートアップしてる
    2人を止める。

    「ちょっと待って!」

    ユイは息を切らしながら
    「まだできる」

    カナは
    「楽しいねこれ!」

    この温度差…(笑)。

    そのまま
    4人で簡単なミーティング。

    橘さんが
    まっすぐカナを見てこう言った。

    「カナ……って言ったっけ?」
    「正式に採用だ」

    画像

    ……。

    一瞬、静まる。

    私とユイは同時に言った。
    「いきなり?」
    「ほんとに大丈夫なの?」

    だってまだ数回しか会ってない。
    練習も始めたばかり。

    なのに——

    カナは満面の笑みで
    「やったー!」

    ……。

    この温度差…

    ユイが小さくつぶやく。
    「軽ぅ……」

    でも橘さんは一切ブレない。

    「俺がイメージしてた子だ」
    「間違いなく最終ピースだ」
    「絶対に逃したくない」

    その言葉に
    私は少しだけ黙った。

    ユイも何も言わない。

    ……正直
    まだ不安。

    でも
    さっきの2人を見てたら
    なんとなくわかる。

    カナが入ると
    何かが変わる。

    空気もスピードも
    全部。

    私は小さくうなずいた。
    「……わかった」

    ユイも少しだけ考えてから
    「……私もいい」

    って。

    こうして
    私たちのユニットは
    3人になった。

    ……たぶん
    ここから全部変わる。

    第18話|4/8|「新メンバー カナ」

    カナだよ。

    ユニットメンバーになっちゃった。
    立候補したんだけどね(笑)

    1回目の練習で即採用。
    タチバナサンだっけ?
    見る目あるよねー(笑)

    あたしとアンナの出会いは、
    アンナがあたしの店にネイルしに来たの。

    どこの誰か知らないけど、
    あたしを紹介してくれたんだって!

    で、アンナ見た瞬間、

    あ、これヤバいなって思った(笑)

    画像

    だってこの子、
    普通じゃないオーラ出てるんだもん。

    なんていうか、
    奥にある魅力が
    隠しきれてない感じ(笑)

    あたし、すぐ決めた。

    この子と友達になるって。

    だから初回だけ半額にしちゃった(笑)

    ※普段はしないから、今から来てもダメだよ(笑)

    アンナはネイル気に入ってくれたみたいで、
    ちょこちょこ来るようになってさ。

    あたしもご飯誘ったりして、
    一緒にクレープ食べに行ったりしてね。

    アンナ、甘いものには目がないんだって(笑)

    そんな時に、
    ユニットメンバー募集してるって聞いて。

    あたししかいないじゃんって思った(笑)

    何やるか?

    正直、何にも知らない。

    でもさ、

    アンナと一緒なら
    なんでもいいかなって思ったんだよね。

    これから楽しくなるよ!

    画像

    そういえばタチバナサン?
    ゴリラみたいだよね。
    チャンゴリって呼ぶことにする(笑)

    ユイはさ、
    なんか真面目っていうか、
    ちょっと怖い(笑)

    でもね、
    ちゃんと見捨てないで教えてくれる。

    服、黒ばっかりだから
    今度プロデュースしてあげよう。

    でも黒似合うって、
    かっこいいよね。

    ところであたし、何やるんだろ?

    まだなんにも聞いてないし、
    決まってないっぽい(笑)

    これから作っていくなんて、
    楽しすぎじゃん!

    第19話|4/10|「ユニット名決定」- Prologue 最終回 -

    練習が終わったあと。
    橘さんに呼ばれた。
    「ちょっと時間ある?」

    珍しく少しだけ柔らかい声。

    向かった先は
    ——あの喫茶店。

    「……ここ、また来たね」
    カナが言う。
    私は思わず笑った。
    「そういえば最初に会ったのここだね」
    ユイも小さくうなずく。

    画像

    席について注文して。

    ちょっとだけ
    落ち着いたところで
    橘さんが口を開いた。
    「今日は一つ決める」

    私たちは顔を見合わせる。
    「何を?」

    橘さんはまっすぐ言った。
    「ユニット名だ」

    ……。

    一瞬

    空気が止まる。

    ユニット名。

    それって
    本当に始まるってこと。

    カナがすぐに
    「いいね!」
    って前のめり。

    ユイは少しだけ考えて
    「ちゃんとしたのにしよう」
    って。

    私は
    ちょっとだけ緊張しながら
    「……どんなのがいいんだろう」
    ってつぶやいた。

    画像

    橘さんは少しだけ笑って
    「それを今から決めるんだよ」

    テーブルの上に
    ナプキンとペンが置かれる。

    なんだかすごく
    ワクワクしてきた。

    ここから
    “私たち”が始まる。

    最初に口を開いたのは
    やっぱりカナ。

    「はい!」
    「“もぐもぐスターズ”!」

    ……。

    ユイ
    「却下」
    「早くない!?」

    カナは止まらない。
    「じゃあ“激辛ファイターズ”!」
    「なんで辛いの」
    「さっきのクレープ美味しかったから」

    理由が軽い。

    私は笑いながらも
    「もっとこう……続けられる名前」
    って言う。

    カナは腕を組んで
    「じゃあ……“キラキラ無限大”!」

    ユイ
    「それはちょっと……」

    カナ
    「えーいいじゃん!」
    そのやり取りに
    少しずつ空気が和む。

    ユイが真面目な顔で言う。
    「ちゃんと意味がある方がいい」
    「コンセプトとか」

    私は

    2人を見ながら考える。

    明るくて
    自由で
    でも
    ちゃんと芯があって。

    その時——

    橘さんが静かに言った。

    画像

    「3人で1言ずつ決めたらどうだ」

    ……。

    私たちは一瞬止まる。

    カナがすぐに反応する
    「いいねそれ!」

    ユイも少し考えて
    「……悪くないね」

    私は2人の顔を見る。
    ……うん。
    その方が、私たちらしい。

    カナがペンを取る。
    「じゃあ、あたしからね」
    迷いもなく書いた。

    「CRAZY」

    予想外のことに私は思わず絶句

    カナは笑う。
    「普通じゃないってこと」
    「まずはインパクト」

    ……。

    ユイが小さくつぶやく。
    「うん、いいと思う」

    次は私がペンを持つ。

    私は
    最初から考えていた文字を書く

    「ANGELS」

    カナが言う。
    「アンナらしいね」

    ユイも納得してる顔

    「CRAZY ANGELS」
    響きがいい

    でも、まだユイがいる

    少しだけ考えてから
    静かに書いた。

    「CRAZY NOISY ANGELS」

    一瞬体に電気が走った気がした

    言葉がぴったりはまる。

    カナが笑う。
    「これ、いいじゃん」

    ユイは何も言わないけど
    少しだけ口元が緩んでる。

    私はナプキンに書かれた文字を見つめる。

    CRAZY

    NOISY

    ANGELS

    バラバラなのにちゃんと一つになってる。

    まるで私たちみたいに。

    橘さんが
    静かにペンを取る。

    3つの言葉を一つにつなげて
    少しだけ整えた。

    CRAZY NØISY ANGELS

    Oに棒が入る。
    少しだけ違和感。

    でもそれがいい。

    私は思った。

    これが私たちの名前。

    まだ何者でもない。

    でも——

    ここから
    何かになる。

    カナが言う。
    「かっこいいじゃん!」

    ユイも小さく
    「……うん」

    って。

    私はナプキンを見ながら
    少しだけ笑った。

    「よろしくね」

    私たちの名前。

    店を出ると
    夜の空気が少し冷たかった。

    でも胸の奥は
    少しだけ熱い。

    まだ何も始まってないけど。
    でも
    確実に何かが始まった。

    CRAZY NØISY ANGELS— Begin.
    ――Prologue Complete.

    To be continued...
    Next:Season 1
    We’ll be back soon… please stay tuned.


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