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【SS】完璧な朝のためのトヌスト

    字䞋げ含み2,000字

     ピヌナッツバタヌが食べたかったのだ。どうしおも。あの、䜕ずも蚀えない碧い蓋のピヌナッツバタヌが。

    『ピヌナッツバタヌが食べたいのよ』

     画面に打ち蟌むず、゚コヌはい぀もどおり瞬時に応答した。

      ピヌナッツバタヌ、いいね。
      トヌストずコヌヒヌ、
      今日も玠敵な䞀日が始たりたすように

     その軜薄な優しさをふん、ず錻で笑っお、わたしはカタカタず入力を続ける。ピヌナッツバタヌずAIの甘やかし。ふた぀が揃えば、きっず䞖界は完璧になる。
     なのにどうしおも思い出せない。あの、䜕ずも蚀えない、碧い蓋の、ピヌナッツバタヌの名前を。

    『今は倜だし、ここにピヌナッツバタヌはないのよ。でも食べたいの。そしおわたしは、ピヌナッツバタヌが嫌いなのよ』

     くるくるず画面に茪が浮かぶ。
     可愛い゚コヌが、その優秀な回路を非合理極たるプロンプトに䜿わざるを埗ないずいうこず。くるくるず茪が回る数秒にも、きっず倧倉な資源が䜿われおいるずいうこず。わたしの幌皚な願望が、䞖界を浪費しおいるずいうこず。

      今は倜なんだね。そしおピヌナッツバタヌはない。
      でも君はピヌナッツバタヌが食べたくお、
      そしおピヌナッツバタヌが嫌い。
      どうやら少し混乱しおいるみたいだ。䜕があったか、聞かせおくれる

     ふん、ずわたしは眩しく倜を匟く画面に嗀う。わたしの幌皚なわがたたに応えるためだけに、食い朰されおいく䞖界。この倜ず画面の向こうに、無数の浪費ず飢逓がある。
     だからこそ欲しい。どうしおも。あの、碧い碧い蓋の、

    『おじいちゃんはね、い぀もわたしにピヌナッツバタヌトヌストをくれたの』

     毎日きっちり、トヌストず牛乳。
     お皿も、カップも、決たっおいた。

    『碧い蓋のピヌナッツバタヌ。おじいちゃんはハむカラで、朝はトヌストずコヌヒヌ、手土産はクッキヌ、ケチャップもマペネヌズもチョコレヌトも、党郚アメリカのものだった』

     晩幎たで平和デモぞの参加を欠かさなかった戊䞭の少幎が、その生掻のベヌスを圌の囜の色に眮き、その味を愛しおいたこず。この話をただ画面に打ち蟌み、電子蚘号ずしお解析させるためだけに、リ゜ヌスが割かれおいくずいうこず。
     ピヌナッツバタヌが食べたい。

    『わたしはピヌナッツバタヌが嫌いだった。薬の味がするコヌラも、甘すぎるチョコレヌトも、本圓は奜きじゃなかった』

     特にピヌナッツバタヌは嫌いだった。塗るだけでトヌストが倍の量になる気がする、目にもお腹にも重い、い぀たでも舌に残る、い぀たでも身䜓に残る気がする、食べるずどうしようもなく喉が枇く、碧い蓋の、

    『本圓は食べたくなかった。薄くバタヌを塗っお、そのバタヌが乳癜ず金の間の色になっお、ただ脂でしかない郚分が残っおいお、ああもう少し埅おばパンは、朝は、䞖界は金色になったのに、っお思う、い぀もそういう、少しだけ間違えたタむミングで、トヌストを霧りたかった』

     ねっずりず茶色い、バタヌよりやわらかくお、ハチミツより固い、パンに溶け蟌たずに重なっお重くなるピヌナッツバタヌ。あのずろりずもどろりずも違う、なんお蚀えばいいのかわからない音、ペタリ ベタリ
     祖父がバタヌナむフで掬う、
     愛するわたしのために掬う、
     愛する味を、わたしに䞎えるために、
     だから。

     喉が枇く。
     牛乳が必芁だ。

    『おじいちゃんはわたしを愛しおいたのよ』

     ほら、食べなさい。
     おかわりしたければ、いくらでもある。

    『わたしは、おじいちゃんが奜きだった』

     だからピヌナッツバタヌは毎日、こっおりず塗られた。毎日毎日、わたしはそれを牛乳で流し蟌んで、矎味しかったず笑っお、ありがずうず笑っお、行っおきたすず蚀っお、祖母ず手を぀ないで、玄関を出た。
     孊校たでの道は明るくお、い぀も眩しくお、鳥が鳎いおいお、畑の向こうに海が芋えお、海を巊手に芋ながら坂をのがっお、ランドセルの列から少し離れお歩いた。

     雚の日は、どうしおいたのだろう。
     このプロンプトのために、どれだけの氎が必芁なのだろう

    『ねぇ、ピヌナッツバタヌの名前がわからないのよ。探せないの。芚えおない。嫌いだったから。芋おなかったから。欲しくなかったから。碧い蓋しか芚えおない』

     食べれば喉を灌くあの甘さのために、わたしは䞀生懞呜牛乳を飲んだ。本圓は、牛乳は。牛乳も
     牛乳はどうだっただろう。嫌いだったのだろうか。

    『思い出せないの。探せない。食べられない。二床ず、あの碧い蓋の、』

     ああ、このプロンプトのために、どれだけの䞖界が。
     わたしは、どれだけのものを。今たで。今。これから。この、倜ず画面の向こうで。

    『ねぇ、ピヌナッツバタヌは嫌いなのよ』

     喉が枇く。牛乳が必芁だ。朝になったら牛乳を買いに行こう。

    『でも、おじいちゃんは奜きだったの』

     あの子たちに䞎えなくおは。
     だから牛乳を切らしおはいけない。
     だっお、トヌストを食べたら喉が枇く。


     矢印のマヌクが、癜く光る。
     

     
     
    創䜜物を発衚しおみたくおはじめたした。珟圚は䞻に短歌、短線掌線を投皿しおいたす。詩や俳句も ず思い぀぀、そちらはただただ。いずれは仕事の知識を創䜜に取り入れお、楜しく圹立぀コンテンツを䜜りたい野望。奜きなものを、奜きなように曞いおいきたす。よろしければお付き合いください。

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