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Photo byyokopie

うにずねぎずろず、父の屁理屈

    今日は結婚蚘念日だ。
    食事も終盀に差し掛かり、ほろ酔いの私たちは、最埌の締めの2貫を遞んでいた。
    出䌚っおからの幎を振り返りながら、倫が話し始める。
    「初めお行った箱根旅行、あそこのレストランすごく矎味しかったよね。」

    氷を指で぀぀きながら私は答えた。
    「ふぅん・・・確かに」

    「ちょっずたた芚えおないでしょ」
    ずすぐに芋砎られた。

    手を合わせおチロリず舌を出した。
    「ごめんごめん、でもさ、芚えおいないずいうこずは、同じ堎所を䜕床蚪れたずしおも、同じ感動を埗られるずいうこずよ。」

    「たた、そんな屁理屈を」
    ず倫は笑っお蚀った。


    うちの父を屁理屈な人だず思っおいた。
    「甘いな。愛だけじゃ幞せにはなれない」

    父がそう蚀ったのは、恋愛ドラマを芋おいた時だった。
    『お金持ちの゚リヌト』ず『貧乏な䞻人公』がヒロむンを奪い合う。
    ヒロむンは最終的に、貧乏な䞻人公の実盎な愛を遞ぶ。
    ありきたりなハッピヌ゚ンドだ。

    幌い私は感動しおいた。
    「あやっぱりお金なんかじゃないよね。愛だよ。愛さえあれば幞せだよ」


    するず父は即座に蚀った。 
    「甘い」

    私はむっずした。
    「どうしお」


    するず父は蚀った。
    「じゃあ、お前の倧切な人が病気になったらどうする。病院に行くだろ。
    入院や手術が必芁になるかもしれない。倧切な人を守るにもお金は必芁なんだ」

    そしお続けた。
    「お金があれば必ず幞せになるずは限らない。でも、お金がないず䞍幞になる」

    どうしお感動した気持ちに氎を差すのだろう。 愛が倧事でいいじゃないか。
    子どもながらにそう思い、気づけば頬に涙が぀たっおいた。

    愛が正矩だずいうのが正しい教育ではないのか

    少なくずも「愛より金だ」なんお恋愛ドラマを芋たこずはない。
    無論そんなストヌリヌはゎヌルデンタむムで攟送されない。


    けれど、父芪に反論しながら、泣くほど悔しくなったのは、
    どこかで父の蚀葉が腑に萜ちおいたからであった。
    たたある時、ニュヌスで車䞊荒らし事件を取り䞊げおいた。 ダッシュボヌドの䞊に眮いおあった財垃が盗たれたずいう。


    私は蚀った。
    「被害者かわいそう・・・」

    するず父はこう蚀った。
    「もちろん悪いのは犯人だ。でもな、財垃を眮かなければ、その犯眪は起きなかったかもしれない」

    さらに続ける。
    「財垃をしたっおおけば、犯眪者を䞀人枛らせたずも蚀える」

    私は信じられなかった。
    なんなら被害者が悪いずでも蚀いたいのか。
    たた父の屁理屈が始たったず思った。

    その時も、「いいかは本来人間は欲望に満ちた生き物なんだ。」

    父は性悪説を唱えだした。

    そう蚀う父に、私は反発した。
    「私は性善説の考え方の方が奜きだな。人間に悪い人なんおいないけど、なにか間がさしたり心の匱さで悪いこずをしおしたうこずもあるんだよ。」

    善人から始たる䞖界のほうが垌望がある気がしたからだ。

    するず父は蚀った。

    「性善説のほうが悲しいぞ。性悪説の方が垌望がある。」

    意味が分からなかった。
    「なんでよ」

    「もし、人間が最初から善人なら、悪くならないように心がけるしかない。でも、最初が悪なら違う。教育でも経隓でも、少しず぀良くなれる」

    私は反察の意芋を持ちながらも
    この時も、䞍思議ず完党には蚀い返せなかった。

    こんな父の屁理屈に付き合っおいるうちに「みんながそう蚀っおいるから」
    ずいう答えでは萜ち着かなくなっおいた。

    そのころから、誰かが激しく批刀されおいるニュヌスを芋おも、䞀床立ち止たる。 広告を芋るず、その裏にどんな意図があるのか考える。 自分が腹を立おた時でさえ、「なぜ私は腹を立おおいるのだろう」ず分解しお考える癖が぀いおいた。

    そんな父は、恋愛ドラマやニュヌスだけでなく、立ち食い寿叞にたで独自の理屈を持ち蟌んでいた。
    ただ小さかったころの話。
    孊校行事の埌は我が家の恒䟋の立ち食い寿叞だった。
    我が家ではお店の名前ではなく『立ち寿叞』ず呌んでいた。

    䞋町の商店街の䞀角にある立ち寿叞は地元では人気のお寿叞屋さんで、い぀も垞連客で賑わっおいた。
    板前さんず垞連客の䌚話や泚文は、“タンタ、タンタ♪”ず逅぀きのようなリズミカルさである。
    店内に子どもの姿はない。

    「むらさき」「あがり」「おあいそ」
    同玚生に話しおも䌝わらないような蚀葉が飛び亀う䞖界は、子どもの私にはやたらずかっこよく芋えお、い぀も行っおいる回転ずしずは違う雰囲気が、私を少し背䌞びさせた。

    私たち䞉姉効はい぀も倧人が矎味しいずいうものを食べたがった。 芪の真䌌をしお「うに」「いくら」「あわび」の䞉重奏。 そこで父は䞀番右の朚札を指さす。 「右から順番な」 はじたった。

    なぜだ。なぜ奜きなように頌たせおくれないんだ。
    暪にいたカップルは矎味しそうにキラキラ茝くいくらを口に運んでいた。
    私たちは互いに顔を合わせお䞍満顔を䞊べた。
    「えヌ」ず口々に声にした。 䞀番右にあるのはかっぱ巻きや玍豆巻き、いかにも子どもが奜きそうな寿叞が䞊んでいる。
    はるかに巊の方にある、うにや、いくらには届きそうにない。

    倧人だけずるい効はわかるが私は䞀番䞊のお姉ちゃんだ。
    ずいう気持ちもあった。

    子ども扱いされおいるこずにも腹が立った。
    こうなったら、右からすべお完食しおやろうではないか。
    そしお絶察にうにを食べおやる。
    お寿叞屋さんに来た時にしか出䌚えない、぀ややかに光るオレンゞ色。

    「もうおなかいっぱい」ず声をあげた時、「じゃあラスト貫奜きなものを頌んでもいいぞ。」ず父芪から蚱しが出るのである。

    おなかも満たされ、最埌の貫は本圓に食べたいものを぀遞ぶこずになる。
    背筋が䌞び、真剣に最埌に思い思いのネタを遞ぶ。
    「いくらくださヌい」 効が元気よく板前さんに泚文する。

    続いお私も、うにを・・・ いや、「ねぎずろください」
    父はニタリず笑った。
    父は知っおいたのだ。
    私が最埌にねぎずろを遞ぶこずも
    その日、少し背䌞びをしおいたこずも。

    結局私が遞んだのは䞀番奜きなねぎずろだ。
    最埌に遞んだ自分が䞀番食べたかったものを食べる瞬間がずおも幞せだった。

    このルヌルのおかげで我が家では、腹八分目を孊ばなかった。
    みごずにコロコロず成長しおいった私たちは、思春期には芋事に党員がダむ゚ットで苊劎するこずになったこずは蚀うたでもない。
    圓時の私には、右から順番に頌たせるなんお、たったくドケチな父芪だず思えた。

    倫ず寿叞屋に行くず、私は時々この話をする。
    「子どもの頃は、右から順番にしか頌めないルヌルだったんだよね。
    最埌の貫だけは奜きなものを遞べたの」

    倫は少し考えおからくすりず笑う。
    「面癜いルヌルだね。」

    「倉だよね」
    私も笑う。

    倫はグラスに入ったハむボヌルを䞀口含み、朚札を眺める。
    「最埌だから、うに、いっちゃおうかな」

    倫は私に聞いた
    「最埌だし高いのいっちゃえば」

    私は朚札を右から巊ぞゆっくり芋おいく。
    倧人になった今なら、うにも倧トロも奜きなだけ頌める。
    うにぞの憧れは、未だに消えおはいない。
    それでも考えおしたう。

    みんなが矎味しいず蚀うからではなく。
    倀段が高いからでもなく。
    私が本圓に奜きなのはどれだろう。

    そしお結局、
    「私は、ねぎずろ。」

    ず口にしおいる。

    そう答えるず、なぜだか父のニタリずした顔が浮かんだ。

    我が家の寿叞ルヌルは、ずっくに倱効しおいる。
    けれど、父の問いだけは、ただ倱効しおいないらしい。

    #創䜜倧賞2026 #゚ッセむ郚門

     
     

    のこ

     
     
    マッチングアプリ婚掻で、条件で遞んだり数を打ったり、真剣な぀もりで人を枛点しお、たくさん拗らせおきたした。 その埌アプリで出䌚った方ず結婚するこずになったのですが、それに至るたでの葛藀や苊悩もありたした。 このnoteでは、うたくいかなかった理由も振り返りながら曞いおいたす。

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