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カルボナーラさんのカポナータ

    2018年にイタリアトスカーナ地方
    ルッカで学び、私が次に
    イタリアの地を踏めたのは
    その5年後、2023年だった。

    この5年間の間に
    私はイタリア語を学んだ。

    オンラインレッスンで出会った先生は
    シチリアに住む日本人の女性。

    私は先生の住むラグーサという街を
    訪問することになった。

    「シチリアといえば海の幸だけど
    山の中の料理も面白いんだよ」

    先生が案内してくれたのは
    カルボナーラさんという女性が
    営むトラットリア。
    (カルボナーラという苗字みたい)

    お店もやりながら空き時間で
    お料理も教えてくれるらしい。

    山道をしばらく走って農村地区にある
    石造りの建物が今日の学び舎だ。

    「じゃあまずはカポナータを作りましょうか」

    レシピはない。

    カルボナーラさんの手元をみながら
    分量はなんとなく大さじ小さじに換算して
    メモしていく。

    たっぷりの水を入れた小鍋に
    人参だけ入れていく。

    「人参は固いからここで
    じっくり柔らかくするのよ」

    カポナータは野菜を炒めるという
    レシピしか知らなかった私は
    この時点で目からウロコだった。

    それからいくつかの野菜を
    しっかり炒めていく。

    小さなフライパンの中で
    ナスやズッキーニ、玉ねぎが
    甘い香りを放ちながら
    旨味を凝縮した形になっていく。
    トマトは使わない。

    いつしか小鍋の水は蒸発して
    少なくなっていた。

    そこへフライパンの野菜たちが合わさる。

    「これはたっぷりいれて」

    白ワインのボトルを手に取り
    ドボドボと注ぎ始めた。

    え?と驚いてる間もなく今度は
    ビネガーの瓶を手に取り
    ドボドボ‥‥

    え?そんなに?
    思わず声が出る。

    うふふ、と彼女が少し
    笑った気がした。

    しばらく煮た後、
    少し味見をして
    魔法をかけるように塩を入れる。

    「さぁできたよ!」

    野菜のスープのような見た目。
    でもしっかりと野菜は形を保っている。
    器に注ぐと酸味と野菜の
    甘い香りが鼻をくすぐった。

    いざ食べてみると
    不思議なくらいまろやかで
    どの料理ともよく合う。
    この時は他に豚肉の煮込みやスカッチェ、
    パスタも学んだ。

    どれも美味しかったが
    このカポナータが一番印象に残った。

    日本で料理教室をしている話をしたら

    「まぁ!それじゃあ私の料理が
    日本でも食べられるのね!」

    と彼女はパっと顔を輝かせた。

    私は一瞬言葉を失った。

    レシピは「教える」「教わる」ものだと
    思っていたけど
    「受け継がれて」「広がっていく」
    ものなんだと。

    ***

    夏野菜がおいしい季節になると
    わたしはいつもカルボナーラさんを思い出す。

    生徒さんの前に名寄の新鮮な野菜を並べて
    レシピの説明をする。

    「このレシピは、
    イタリアのラグーサという...」

    海を渡ったカルボナーラさんのカポナータ。
    今日も誰かの食卓で日常になっていく。

    #創作大賞2026 #フード部門

     
     
    北海道名寄市で地域と食をテーマに料理教室・レシピ開発をしています。イタリア語の勉強中。趣味は旅行。国内外問わず美味しい物を食べに行きたいです。好きな国はイタリア、マレーシア、台湾などなど。都市はトリノ、長野、秋田などなど。

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