
スプーン一杯から灯す未来
「もし、今日の食事が手に入らなくなったら」という問いを前にしたとき、中学校の英語教師である私は、生徒たちと作った一枚のポスターを思い浮かべた。生体発光バクテリアを利用し、電気のない地域に明かりを灯す架空のランプ「BioGlow」のコンセプトだ。開発背景を調べる中で、私たちは世界で十四億人もの人々が電気のない暗闇の中で暮らしているという現実に直面した。

毎日、生徒たちと当たり前のように食べている学校給食。温かいスープ、清潔なお皿、そして明るい教室。この「当たり前の一食」の背景には、安全な水や調理するためのエネルギーという、目に見えない強固なインフラが存在している。もし今日、食べ物が手に入らなくなるとしたら、それは単に空腹になることではない。私たちの生活を支える社会基盤や、人としての尊厳、そして未来への希望そのものが絶たれることを意味する。
国連WFPが届ける学校給食支援は、子どもたちの命を繋ぐだけでなく、彼らが学校へ通い、教育を受ける機会を生み出す「未来への投資」でもある。電気のない暗闇の地域でも、一食の給食があるからこそ、子どもたちは学校へ行き、学び、自分の人生を変える力を手に入れることができる。
エシカル、つまり倫理的な選択とは、服や買い物の話だけではない。目の前の給食や日々の食事が、世界のどこかで暗闇と戦う誰かの命や環境と、どう繋がっているかを想像することだ。
日本の教室でスプーンを口に運ぶとき、私はその一口の重みを噛み締めたい。私たちの食卓は、世界の裏側と地続きだ。漫然と食べることをやめ、持続可能な未来のために今何ができるかを生徒と共に問い続けること。それこそが、今日を当たり前に食べられる大人としての、私の責任であり、一歩なのだ。
※本記事のショートエッセイは上記のコンテストに投稿した内容になります。