
今夜も召し上がれ 手作りミートソースでB級グルメ「イタリアン」を作る
第61夜 手作りミートソースでイタリアンを作る
里心のついた新潟県民が食べるもの、と(俺が勝手に)呼んでいる食べ物がある。
イタリアンである。
こいつ何を言い出したのか、という目で見ないでいただきたい。
新潟県には「イタリアン」というB級グルメがあるのだ。
簡単に説明すると、焼きそばにミートソースをかけた料理である。
駅ビルの中やショッピングモールのテナントにも出店しているので、俺のような出不精にもなじみのある飲食店のひとつ。
B級グルメなので、古くから伝わる郷土料理のように敷居が高くなく、ちょっと新潟したいなあと思ったときに気軽に手を出しやすい。
まさにゲートウェイ新潟。
先日作ったミートソースを使って、今日はイタリアンをこしらえてみようと思う。
別に里心がついたわけではないが、単純にこの食べ方はおいしいので、ひとつ紹介しようと思った次第だ。
イタリアンを提供しているお店は2軒ある。長岡市を中心とする「フレンド」と、新潟市の方に地盤のある「みかづき」だ。
俺がよく食べていたのは「みかづき」の方である。
自転車で行ける範囲にあったからだ。あったというのは、今はもうないということでもある。
とはいえ、「みかづき」の味を再現しているわけでは全くない。
していないというか、できないというか。
要素をいくつか押さえてはあるが、別物であると明記してから、いよいよ台所に向かおうと思う。
まずは麵を用意する。
「みかづき」の麺はやや太いのが特徴だ。
スーパーマーケットで簡単に手に入る食材で近いのは、ちゃんぽんの麺だと思う。
余裕があるときはちゃんぽんの麺を用意するが、焼きそば麺で全く問題はない。
それから、もやしとキャベツを少々、キャベツは邪魔にならない程度のざく切りにする。
こいつをフライパンでわしわしと炒めている間に、冷凍しておいたミートソースを解凍する。
俺が作ったミートソースはひき肉がごろごろしているタイプだが、本当はもっと液体っぽく、レトルトパウチのナポリタン(ピーマンのにおいがしないやつ)なんかがけっこういい線を行っていると俺は思う。
いい具合に炒まってきたら、ウスターソースをひと回しする。
ちなみに、中華などは普段作ってみないので、このためだけに買った。
なければ中濃ソースでも、いい隠し味になる。
本当はラードも使うらしいが、そこまでこだわるほどの頻度では里心がつかない。導入はまだだ。
麺とモヤシにざっと火が通ったら、粉チーズをばさっとかける。
ちなみに、粉チーズもこのために買った。
白い深皿に移して、余熱で粉チーズをなじませている間にミートソースをフライパンで温める。
別に温めなくたっていいのだが、本来はここに缶詰のスイートコーンが入る。
コーンを入れない分少しケチャップや、場合によって砂糖を足し、甘さのバランスを取ることになる。そうすると、冷凍庫に入れやすいコンパクトなタッパーよりもかき混ぜやすいフライパンで、ついでにレンジの加熱ムラを解消するという2つの利点があるというわけだ。
前述したように、イタリアンには「みかづき」と「フレンド」の2つの店があり、派閥といって差し支えない。
簡単に言うと、新潟市の「みかづき」は太麺をフォークで、長岡市の「フレンド」は細麺を箸で食べる。そのほかにも、サイドメニューや付け合わせでずいぶんと差があるが、全く別の店なのでそれも変なことではない。
ひと口にプリンアラモードと言っても、喫茶店によってずいぶん様子が違うのと同じだ。
ちなみに、この2軒の分布に従うと、俺は「フレンド」のおひざもとで育っているのだが、なにせ近くにあったのが「みかづき」だった。そのせいで、親が慣れ親しんだ「フレンド」のイタリアンを買って来てもなんとなく違和感がある。
ちなみに、「フレンド」はソフトクリームの種類が大層豊富なのが売りのひとつで、バイト帰りに抹茶とチョコレートのソフトクリーム(当時は150円)をぺろつきながらバスまでの時間を調整するのが常だった。
なので俺の中で「フレンド」はソフトクリーム屋さんだ。
今となっては「フレンド」の抹茶のソフトクリームもないし、実家から自転車で行ける「みかづき」もないし、どの店も一緒に行った友達もいない。
20代になった俺だけが、狭い台所に立っている。
ミートソースが温まった。味を確かめ、火を止める。
粉チーズといい具合になじんだ麺の上に、ミートソースをたっぷりかける。
やはり、めったやたらにひき肉がごろごろしていて違和感があるが、これはこれでおいしいのでありだ。
新潟県を遠く離れた坂の下の街で作る、第4のイタリアン。
こういう故郷の想い方もやり方のひとつだろう。
フォークを添えたら、手作りミートソースのイタリアンの完成だ。
「いただきます」