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Photo byslash_nt

プラセボの決断 

    梅田に来たらい぀も利甚する倧济堎付のビゞネスホテルの郚屋に荷物を眮き、備え付けの怅子に腰を萜ずしお、ふヌっず深く息をはいた。

    島本は倧阪圚䜏の柔道郚の先茩ず久々に䌚いたいず蚀っおいたので、倧迫さんずの打ち合わせ埌はフリヌにしおやった。俺もなんずなく䞀人でいたかったので䞁床良かった。郚屋には誰もいないはずのに、なんずなく人気のようなものを感じ右偎を向くず、怅子に座った自分の姿が鏡に映っおいた。反射的に右手が頭頂郚に䌞びた。

    行きの機内でコヌヒヌを配りに来た男性キャビンアテンダント、タクシヌ運転手の男性、ホテルのフロントにいた倖囜人、カフェコヌナヌのサラリヌマン二人組、そしお背筋を䌞ばしたりェむタヌ。みんな胞を匵り、自信ありげに芋えた。

    俺は身長168センチ、䜓重60キロず倪っおはいないし、筋トレもなんずか頑匵っおいる。が、最近頭皮から毛が日々卒業しおいるような気がしお、そしお卒業生が増え぀぀あるような気がしお、誰を芋おも぀い、ちらっず頭を芋るクセが぀いおしたった。

    今日、倧迫さんはヒヌルの高いパンプスを履いおいたのか、俺より背は高く、打合せが終わっお立ち䞊がったずき、おでこのあたりに芖線を感じた。ただ、それだけのこずだが、俺にずっおは党おのこずを繋げおしたうくらい、頭皮からの卒業生が増えおいないか気になる。気にし出すず止たらないので、トむレで鏡を芋る床に卒業しおいない圚校生の様子を確認しおしたう。毎日、䜕回も䜕回も。こんな自分が嫌になる。鏡を前にするず色々ず考えすぎお、このたた頭を抱えお動けなくなっおしたいそうだったので、わずかに残った力を振り絞っお、怅子から立ち䞊がった。そしお、ビゞネスホテル近くの䞭華屋でラヌメン逃子セットずビヌルのささやかな晩逐を枈たせ、倧きな鏡のある倧济堎には行かず、郚屋でシャワヌを济びお寝た。

    翌朝、ビゞネスホテルの枕には卒業生が11人いた。いちいち数を確認しおしたう自分が情けなかったが、1本500皎蟌み23䞇円の101さえ賌入すれば党おが解決するのに、ずも思っおしたった。

    宿泊したビゞネスホテルからは、䌊䞹空枯行きの盎行リムゞンバスが出おいる。このバスに乗り、朝入ったばかりのニュヌスをスマホでチェックするのが、梅田出匵時のルヌティヌンだ。ただ、最近スマホを芋おいるず同じ広告ばかりが入っおくる。ニュヌスが読みたいのに、勝手に割り蟌んでくるい぀もの広告には、始めにしょんがりず䞋を向いた20代䜍のパヌカヌを着た男性が出おくる。そこぞ黒猫がやっおきお、男性になにやら耳打ちする。次の瞬間、男性の頭の毛が䞀気に膚れ䞊がり、頭の倍くらいの倧きさになる。そこで黒猫が「すごいにゃ、101」ず曞かれたプラカヌドを男性の暪に出す。プラカヌドの文字は「察面販売のみ、ご予玄はこちら」の赀い倪文字に倉化しお、点滅を続ける。この広告を䜕床目にしたこずか。

    実は、取匕先の銀行に行く途䞭の地䞋街に101の札幌店はあり、広告ず同じくらい䜕床も目にしおいる。いきなり店舗閉鎖になっおしたったら気持ちの行き堎に困るので、店舗の前を通ったずきは、お客の入りや店舗の雰囲気をチェックしおいる。「101すごいにゃ」ずいう黒猫のおかげか、若いお客をよく芋かけるが察面で売りたいずいうのは、うちの䌚瀟ず同じ方向性であるず勝手に芪近感を持っおいる。

    欲しい物を手に入れるのに時間がかかるず、自分の物になったずきの高揚感はその分、増すだろう。欲しい物を即、その堎で手に入れた堎合でも、即効性が気持ちを高揚させるだろう。ずにかく、ごちゃごちゃ考えずに、さっさず101ぞ予玄をすればいいだけの事なのだが、倉化を受け入れる勇気がないのか、予玄を入れるず自分の悩みを正面から認めたこずになるのが悔しいのか、なかなか玠盎になれず、プラカヌドを持った黒猫を芋る回数ばかりが増えおいる。

    札幌に戻っおきた翌日、倧迫さんから早速メヌルが届いおいた。なんず「もみじ」1000袋の远加泚文、そしお今埌は毎月500袋定期的に賌入したいずのこずだった。いくらカリスマトリマヌずはいえ、発泚しすぎじゃないかずは思ったが、ポメ䞞が䞀心䞍乱に「もみじ」を食べおいる姿を思い出し、パ゜コンで圚庫があるこずを確認した埌、同じ敷地内にある工堎ぞず急いで向かった。工堎長に倧迫さんの倧量発泚の話を䞀早く䌝えたかったのだが、あいにく工堎長は猟垫ずしおヒグマ駆陀に駆り出されお留守だった。取り急ぎ、工堎長にはLINEで䌝えるこずにした。

    元々うちの「もみじ」は、゚ゟシカ駆陀で発生した゚ゟシカ肉を加工しおできた商品だ。゚ゟシカは囜内では北海道のみに生息する鹿で、オスの䜓長は倧きいものは190センチ、䜓重150キロ、メスはオスより少し小ぶりずいう皋床で、いずれにしおも本州の二ホンゞカに比べるず倧きい動物である。2メヌトルを超える柵を飛び越えおしたうほどの跳躍力があり、泳ぐこずもできる。朚の芜やドングリを食べる草食動物で基本的には倧人しいが、個䜓数の増加にずもない、蟲䜜物を食べおしたう被害が倚くなり、幎間玄14䞇頭駆陀されおいる。そしお、駆陀したあずの゚ゟシカの掻甚方法が近幎課題ずなっおいお、食肉ずしお加工する斜蚭も色々な堎所にあるが、ペットフヌドずしおの加工から取り組むケヌスも倚いらしい。蟲林氎産省も珟圚、鳥獣被害防止察策亀付金たで甚意しお、゚ゟシカを含めたシカやむノシシずいったゞビ゚の掻甚をすすめようずしおいる。

    そういった䞖の䞭の流れもあり、゚ゟシカのペット甚ゞャヌキヌぞの加工は珍しい話ではないのだが、猟垫が工堎長を兌任しおいるのは他では聞いたこずがない。工堎長自ら゚ゟシカを射止めおすぐに加工する新鮮さが「もみじ」の䞀番の売りであり、生呜線でもある。ゞャヌキヌになっおしたうので鮮床は関係のないように思えるが、嗅芚の優れおいる犬たちにずっおは、どうやらそうでもないらしい。商品詊食䌚に集たっおもらった近所の犬たちが、奪いあっおたで「もみじ」を食べおいる様子を芋お確信した。゚ゟシカから「もみじ」に仕䞊げる䞀連の流れがどこよりも早くできるのは、ひずえに工堎長のお陰で、本圓に感謝しおいる。

    工堎長の山本英雄ず出䌚ったのは、7幎前になる。俺がただ札幌で補薬䌚瀟の営業瀟員ずしお働いおいた頃、営業成瞟がなかなか䌞びず、疲れ果おおいたこずがあった。ある日、営業先の病院の先生に
    「顔色があんたり良くないね。ちゃんず食べおる」ず声をかけられた。
    「お昌にちゃんず、牛䞌食べたしたよ。」
    「あ、そう。牛肉もいいけど、鹿肉なんかも鉄分が取れおいいよ。」
    ず䞖間話皋床に先生がアドバむスしおくれた䞀蚀を真に受け、その日の晩は鹿肉を食べに行くこずにした。今思うず、本圓に疲れおいたのだろう。

    調べおみるず鹿肉料理はステヌキ、ハンバヌグ、シチュヌ、ロヌストなど、思っおいたよりも皮類が豊富であるこずが分かり、鹿肉料理を出すお店も自宅の近くに䞀店舗あった。それが山本英雄が店長を務める、ゞビ゚レストラン「もみじ」だった。

    せっかく食べるのなら、鹿肉本来の味がしっかり分かる料理がいいず思い、「もみじ」で゚ゟシカ肉のステヌキずスペアリブのロヌストを泚文しおみたずころ、自分の味芚が牛肉よりも゚ゟシカ肉奜みであるこずに気が぀いた。スペアリブの骚たでむしゃぶり぀いお、おいしく頂いたのち、テヌブルでのお䌚蚈時「牛肉より゚ゟシカ肉が奜みだず今日分かった。」ずお店の人に䌝えるず、倧喜びで店長の山本英雄を店の奥から連れ出しおきた。なんでも、「もみじ」で出されおいる゚ゟシカ肉は山本自ら狩猟しお、食肉加工したものずこずで、「゚ゟシカの骚たでむしゃぶり぀いお喜んで食べおくれた人物に出䌚えお、心底嬉しい。」ず蚀っおくれた。

    そこから、山本さんは珟圚のゞビ゚を取り巻く環境に぀いおや、最近狩猟した゚ゟシカの話などをしおくれお、気づくずお䌚蚈の終わったテヌブルで1時間ほど、゚ゟシカレクチャヌを受けおいた。䞀番気になったのは、駆陀された゚ゟシカのほずんどは、埋められたり、償华されお凊分される話で、それをなんずか少なくしたい䞀心で、レストラン「もみじ」を始めたのだず、右手に力こぶを䜜っお、山本さんは話し続けた。山本さんず䞀緒にお䌚蚈の終わったテヌブルで話をしおいるず、鹿肉が鉄分があっおいいよ、ずいう事前知識の暗瀺のお陰だったのかもしれないが、䜓が熱くなっおくるのが分かった。こんなに熱を持っお話す人に觊れるのは、本圓に久しぶりで、今たで冷凍されおいた人肉が解凍されるみたいに、䞀時間埌にはすっかり俺も熱を垯びおいた。そしお、これからぱゟシカ肉の加工をもっず増やしお、食肉甚だけではなく、ペット甚ゞャヌキヌも䜜りたい、亀付金を䜿っお工堎を広くするこずを蚈画しおいるず、ぜろっず蚀っおしたった山本さんの蚀葉を俺はしっかりず拟っお、䌚瀟を退職するこずを決意した。

    退職しお1幎くらいは、゚ゟシカ肉の加工工堎で珟堎の手䌝いをしながら、ペット甚ゞャヌキヌの詊䜜を䜕床も繰り返し、株匏䌚瀟ドギヌラブを蚭立する芋通しが立ったのは、山本さんず出䌚っおから2幎埌のこずだった。

    山本さんにさっき送ったLINEに既読が付いた。倧迫さんの倧量発泚の話を知っお、今頃驚いおいるこずだろう。


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