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急いで種を蒔いてきた人へ──何年頑張っても積み重ならない本当の理由

    「今がチャンス」と言われるたびに動いて、秋になると畑がスカスカになっている人のために書いた。

    夜11時、また下書きを閉じた。 書いたのに、消した。書いたのに、消した。 それがもう、何ヶ月続いているだろう。
    あなたにも、そういう夜がありますか。 頑張っていないわけじゃない。むしろ頑張りすぎているくらいなのに、何かが積み重ならない。一年前と今を比べて、変わった気がしない。疲れているのに、焦っている。そのくせ何もできていない気がして、また夜中に手帳を開く──。 この記事は、そういう人のために書いた。

    はじめに:わたしが誰かを先に言う
    わたしは62歳で、30年間農業指導の仕事をしている。農家さんの畑を見て、土の状態を読んで、何をいつ植えるか一緒に考える仕事だ。
    ただし、自分自身の人生の畑は長い間ぐちゃぐちゃだった。それは今だから言える。 専門家が失敗を語ることは最初怖かった。でも今は、その失敗があるから書けることがあると思っている。30年のプロとしての目線と、何度も同じ場所に戻ってきた個人の経験。その両方がないと、この話は書けなかった。

    「早く育てなきゃ」という呪いが、土を壊していた
    農業の現場で30年見てきてわかったことがある。一番収穫が少ない農家さんは、一番急いでいる人だ。
    春になると、地温が上がりきる前に種を入れる。「今年こそ早く蒔こう」という焦りで。発芽はする。でも根が弱い。弱い根のまま夏を迎えると、少しの乾燥で倒れる。台風が来たら終わり。秋の収穫期に畑を見ると、見事なほどスカスカになっている。
    「もっと丁寧にやればよかった」とおっしゃる。 違う、とわたしは思う。丁寧さの問題じゃない。土の準備が、追いついていなかった。それだけだ。
    わたし自身も、同じことを人生でやっていた。 50代のころ、何かを積み重ねたくて、三つのことを同時に走らせた。ブログ、ハンドメイド販売、コーチング。どれも「いけそう」と思って、同時に。半年後には全部中途半端で、疲弊して、なんのために動いていたのかわからなくなっていた。
    土ができていないのに、三枚の畑に同時に種を蒔いたのだ。 発芽はする。でも根が張る前に倒れる。秋になると、スカスカになる。人生も、畑と同じだった。

    「今がチャンス」に乗り続けた50代後半の、みっともない正直
    SNSを開けば、誰かが毎日「今がチャンス」と言っている。AIが来た、副業ブームが来た、発信者の時代が来た。そのたびに「乗り遅れたら終わりだ」という気持ちになる。 50代後半になってからも、わたしはそれをやり続けていた。
    農業指導という本業があるのに、「もう一つ何かやらなきゃ」という感覚が消えなかった。老後の不安もある。でも正直に言えば、もっとぼんやりしたものだった。「このままでいいんだろうか。わたしはこれで終わりなんだろうか」という、形のない焦りだ。
    ある年の春、ずっと担当していた農家さんにこう言われた。 「先生の畑、見たことないけど、たぶんきれいじゃないでしょう」 笑えなかった。図星だったから。
    その焦りのまま始めた発信も、最初の数ヶ月で挫折した。フォロワーは増えず、反応もない。その時の気持ちを正直に書く。「やっぱり自分には無理だ」という諦めと、「どうせ農業のおじさんの話なんか誰も興味がない」という、口に出すのも恥ずかしい僻みが、ぐちゃぐちゃに混ざっていた。情けなかった。でもそれが、本当のことだった。
    隣の畑が早く芽を出しても、自分の畑の地温は別の話だ。土の質も、日当たりも、違う。それを無視して「今がチャンス」の波に飛び乗っても、やっぱり秋には空になる。
    では、なぜ私たちはこれほどまでに焦り、空回りを繰り返してしまうのか。 59歳の秋、30年間担当したある農家のおじいさんが廃業した日、わたしはその「本当の理由」を突きつけられることになる。

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    •農業の現場指導に約30年携わり、野菜栽培技術の改善を行ってきました。数多くの畑を見てきた中で確信したのは、野菜を育てる行為が、健康・ダイエット・心の状態まで同時に整えるということ。このnoteでは、畑という「環境」を整えることで行動と体が自然に変わる仕組みを発信しています。

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