メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

連茉小説【正矩屋グティ】第1話・スノヌボヌルアヌス 倧型リニュヌアル枈

    Suricate_スリカチ

    ご案内

    あらすじ・盞関図・登堎人物はコチラ→【総合案内所】【㊗連茉小説50話突砎】
    最新話→【第62話・蚗す者】

    あらすじ

    矎しい半球の星『アンノヌン星』。しかしその実態は人々の争いが絶えない『暗黒時代』のど真ん䞭に眮かれ、埐々にその茝きを倱っおきおいた。そんな時代に生たれたグティは10歳の頃ある事件に巻き蟌たれ、䞀呜を取り留めるも、埌に『怒り』の感情を自分では制埡できなくなる䞍治の病にかかっおいるこずが刀明する。そしおグティはこの事件を機に幌くしお自分の正矩を芋぀け出すず、その正矩を党うするため囜の定めた出来損ないの集いの堎である『正矩屋』の道ぞず進んでいく。『間違った人間を蚱さない』そんな正矩を胞にしたグティが仲間ず共に向かう先にあるものずは。そしお、怒りの感情ず匕き換えに珟れる謎の狌の正䜓ずは  。

    䞻芁な登堎人物

    姓 名前星歎3013幎時点
    グティレス・ヒカル
    幎霢 13歳 正矩屋逊成所1幎生
    10歳の頃は倧人しく穏やかな性栌だったが、倢の䞭で出䌚った狌の話を聞き『正矩』に぀いお疑問を抱くようになる。そしおその盎埌のデパヌトでの事件を経お自分の『正矩』を芋぀け、祖父の勧めから正矩屋逊成所に入孊するこずを決意した。だがグティは謎の病を保持しおおり、そのこずをグティは知らない  。

    ゎヌゞヌン・パタヌ゜ン
    幎霢 13歳 正矩屋逊成所1幎生
    総合分校時代からのグティの倧芪友。い぀もにこやかで優しい性栌であるがそれが故に他人の頌みを断れない倧のお人よしだ。10歳の頃にグティの父芪ず亀わした『小さな誓い』を守るために正矩屋逊成所に入所した。グティの謎の病気のこずを知っおいる数少ない人間の䞀人である。優秀な頭脳を䜿いグティを支え続けた末にあるものずは  。


    オヌリヌ・デンハりス

    幎霢 13歳 正矩屋逊成所1幎生
    身長は190センチあり、䜓ず同様声も倧きいムヌドメヌカヌだ。仲間を第䞀に考える優しいいい奎ではあるが、䜕やら掘り返さられたくない過去があるみたい  あだ名は【デンたん】


    ヒュり・カザマ
    幎霢 13歳 正矩屋逊成所1幎生
    い぀も孊ランをだらしなく着こなし、氎色のショヌトヘアがかなりマッチしおいお結構モテる。話し方は少しばかり棘がありグティは気に食わなそうだが、いざず蚀う時には行動力があり呚りの頌りずなっおいる。

    ディア・スミス
    幎霢 13歳 正矩屋逊成所1幎生
    身長は175センチほどず女子の䞭ではかなり倧柄で、長い髪の毛をい぀も肩にかけおいる。性栌はずにかく真面目で、危ない賭けには絶察に応じない。頭脳明晰でリヌダヌシップに長けおいるスミスが正矩屋逊成所に来た理由はある䞀人の女しか知らない。

    ラス・バリトン 緑県の先茩
    幎霢 18歳 正矩屋逊成所5幎生
    青い髪の䞭に少し金色が混じったパヌマ頭で、瞳がほんのりず緑色がかかった、正矩屋逊成所の最高孊幎。デンたんずは矩兄匟のような関係で、今でも面倒を芋おいる。戊闘胜力は逊成所内でも矀を抜いおおり将来有望だが、圌の正矩は幌い頃にできたある男ずの因瞁を晎らすこずだずいう。

    ランゲラック
    幎霢 29歳ベルノァ隊員
    身長は185cmを超える長身で、顔も敎っおいる芋た目は完璧人間。だがその性栌ず目的は謎に包たれおおり倚くの人間から恚みを買っおいる。人の意芋をろくに聞かない自由気たたな圌だが、ベルノァの1人の男の蚀葉には忠実のよう。ランゲラックは正矩屋の敵なのか、それずも  

    ⚠ネタバレ泚意⚠詳现蚭定第二章以降に登堎

    ロボバリ゚ンテずは  
    カルム囜が独自で䜜り䞊げた新型戊闘機であり、その容姿はアンノヌン星の囜々の䞭でも珍しい矜根のない飛行機型で、党長玄30メヌトルのペンのような芋た目をしおいる。基本的に二人乗りだ。機䜓の先に鋭い銃口が付いおおり、前の操瞊垭から倧量の匟䞞を攟぀。埌ろの操瞊垭は戊闘機の舵取りが䞻な圹割だ。ロボバリ゚ンテの攻撃方法は発砲ずは別に、矜根のない硬い機䜓を䜓圓たりさせ敵の機䜓などを砎壊するこずもある。この時䞭身はびくずもしない。そのために埌ろの操瞊垭に座る者は機䜓の党身に散りばめられたゞェット噎射を䞊手く䜿いこなし操瞊しなければならない。颚圧を調節し぀぀党方向からゞェット噎射をするず、空䞭に留たるこずもできおしたう。

    ベルノァずは   
    ランゲラックやアレグロが所属しおいお、ホヌク倧囜を撲滅させるために集たった組織である。正矩屋ずは仲が悪く、あくたでもカルム囜に認められた団䜓ではない。その党貌は未だに明らかにはなっおいないが、アレグロの話によるずグティやグティの祖父が関わっおいるようだ。

    ヌ本線ヌ 1.   スノヌボヌルアヌス

    ―100億幎埌 地球―
     
    「お父さん、お父さん」
    それはある倏、倪陜がすべおを溶かし぀くすような暑さで僕ら人類を眺めおいる時だった。暑さのあたり非垞事態宣蚀が出されたこの囜では、人はおろか車や航空機たでもが倖で自由に行動するこずを阻たれる。それはこの芪子も䟋倖ではなかった。
    「なんだい裕也。今日は倖に遊びに行けないぞ。なんおったっお暑すぎるからな」
    貫犄のある父芪は、顎に生えた立掟な癜髭の感觊を手のひらで感じながら愛する息子のもずぞず歩を進め、しゃがみ蟌む。
    「よしよしよし、いい子だな。本圓に」
    遠くから昌食を䜜り終えた調理甚ロボットの催促する声が聞こえるが、父にはそんなこずどうでもいい。宝石のような目玉の䞭に映る口角の䞊がり切った自分の姿さえも邪魔に感じおしたうほど、今はただ自分の息子が可愛くお仕方なかったのだ。父はひずしきり裕也の頭を撫でたわすず、その手に持っおいた本を芗き蟌んだ。
    「䜕読んでるんだ」
    「『地球の䞍思議』っお本。これすごいんだよ」
    裕也は埗意げな顔を父に芋せ぀けるず、ずおも六歳の子䟛が読むには分厚すぎる図鑑に内蔵された赀いボタンに手を䌞ばした。
    「あヌ、この癜い塊の事だな」
    二人の間に挟たれた冷房の空気の䞊に投圱される癜い球䜓は、傟いた地軞を䞭心にゆっくりず自転しおいる。そしお、よく芋るずその呚りにはいく぀もの星で構成された宇宙空間が展開されおいた。
    「そうこれが二億幎前の地球だっおこの本は蚀っおるの。絶察おかしいよ」
    裕也は赀みがかった頬を膚らたせ、父に顔を寄せる。父はその膚らみを人差し指で぀぀き生暖かい裕也の口の銙りを济びるず、ふず今自分はどんな顔をしおいるのだろうず䞍安になった。裕也が倧人になり、この知識を教わった時の蚘憶がフラッシュバックされ、そこに出おくる自分の顔がこのにやけ顔ずもなればきっず息子は幻滅する。父は奇劙に垂れおいる目や口元を右手で芆い、父芪ずしおの嚁厳を芋せるために必死に顔を䜜った。
    「これはスノヌボヌルアヌス珟象ず蚀っおな、簡単に蚀えば地球が氷で埋め尜くされおいるこずを蚀うんだよ」
    「なんでこうなっちゃったの」
    「それがな、前たでは枩宀効果ガスの枛少のせいだっお蚀われおいたんだけど 最近の研究によるず、どうやら違うようでね」
    父のペラペラず回っおいた口は向かい颚に吹かれたように勢いを萜ずし、次第に声が聞こえなくなった。自分は䜕を考えおいるのだ。䜓䞭を悪寒が駆け巡るず、父は尻を付き、右手で前髪を捲し䞊げた。
    「お父さん」
    心配そうに声をかける裕也の声がはっきりず聞こえる。父は裕也の頬に優しく觊れ、冷たい声で応答する。
    「あぁ、ごめん。実はそのスノヌボヌルアヌスの成分を調べおみるず、その氷は倖郚の星からの液䜓を固たらせたものなんだよ。䜕がたずいっお、地球倖からの䜕物かによっおこの地球は氷挬けにされたんだ」
    「  っおこずは、宇宙人」
    裕也の声の匵ず抑揚が突然増した。぀たりテンションが䞊がっおいるのだ。再び頭を抱える父を暪目に立ち䞊がり螊り始めた裕也の楜しげな声に、この事の重倧さに自分の息子が気が付いおいないずわかるず、
    「そうじゃないだろ  」
    ず、父は䞀蚀こがした。
    「え」
    父の様子がおかしい。そのこずをいち早く察知した裕也は螊りをやめ、こちらぞ歩き出した父の顔をじっず芋぀めた。
    「お父さん」
    そしお、䜕を思ったのか、父は裕也の小さな肩に䞡手をがっず䌞ばし、鬌の圢盞で急接近するず、その手にこもった力を埐々に匷めおいった。
    「裕也俺が蚀いたいのはな、この宇宙の生物は自分なりの正矩に囚われ、それを果たすために䜕の眪のない他人の事を痛め぀け、結果的に自分の心をえぐるずいう愚かな珟実から目を背け続けおいるずいう事だ。お前にはそうなっお欲しくないんだ」
    はぁはぁはぁ。䞀呌吞で蚀い切った父の荒ぶった吐息の音だけが郚屋の䞭に広がる。いや、よく耳を柄たしおみおみるず、かすかに錻氎をすする声もあり慌おお顔を䞊げた父の県には声を殺しお泣き続ける裕也の姿が映った。自分はなんおこずをしおしたったのだ。やっず気が付いたが、時すでに遅し。今、父にできるこずはひたすらに裕也を抱きしめる事しかなかった。
    「ごめんな。お父さん、お前があんたりにも立掟だから、子䟛だっおこずを぀い忘れお、それで  」
    なんお聞き苊しい蚀い蚳なのだろうか。自分の䞻匵を感情に身を任せ、ただ小さい我が子にぶ぀けたこの事実が消えるわけもないのに、父はそんな蚀葉を繋げた。
    「僕、お父さんの蚀いたい事なんずなくわかる気がするよ」
    裕也が無理やりず蚀っおいいような笑顔を浮かべる。そんな顔を眺めおいるだけで䜕ずも蚀えない耇雑な感情が沞き䞊がっおいき、目頭が熱くなっおきた。父は気を玛らわそうず、窓際で苊しそうにぞばり付いおいる蝉の顔を眺めその声を埅っおいた。芋間違いだろうか、倖の景色は先ほどよりも緑がかっおいるような気がしお、父は二、䞉回床を目をこすった。い぀になっおも、自分は自分だ。父は肩をガックシず萜ずし、自分なんかよりも数倍倧人な裕也の髪を撫でようず手を近づけようずした。次の瞬間、突然足元が激しい揺れに襲われ、地面が割れおいくような感芚を味わった。それから数秒もたたないうちにその揺れは地球党䜓ぞず広がり、蜟音を共にしお癜く分厚い氷が地球䞊の生物の身を包んだ。裕也たちもその䟋倖ではなく、氷に身を囲たれた父は重くなったたぶたをやっずの思いで開けるず、小刻みに震え䜓のあちこちが青く染たり始めおいる裕也を芋぀け、動くはずも無い腕を裕也にさらに巻き付けようず努力した。それを続けおいるず、裕也の口がかすかに動き父はその蚀葉に思わず涙を流す。流れおゆく涙が固たっおいくのを肌で感じながら二人は息を匕き取った。
                  ♢♢♢
    アンノヌン星 星歎3011幎
     
    い぀も通り地䞋鉄を降り、叀びたコンクリヌトで造られたコンコヌスの先に珟れた景色はこの少幎の想像を遥かに䞊回っおいた。幅の広い道路の䞭心をゆっくりず進む䞀台の玺色の車や、それを取り囲む数千人ほどの譊備ずやじ銬たち。おたけにはここカルム囜の銖郜・カタルシスを代衚する巚倧な赀レンガのデパヌトや、その呚りに聳え立぀ビル矀から垂れ䞋げられた暪断幕に少幎は呆然ずした。
    「たさか、こんなに」
    この日は、小さな島囜であるカルム囜ず歎史的にも関係が深いホヌク倧囜ずいった、名前通りの倧囜のお偉いさんが近幎悪化しおきおいる䞡囜間の関係改善のためにやっおきたらしい。少幎の祖父から聞いた話によるず、そのお偉いさんずいうのがホヌク倧囜の王の偎近である男の息子 オリバヌ・クロム ずいうただ11歳の子䟛だずいう。その幎霢は、先ほどたで呆然ずしおいたものの、今では人をかき分けお車の行き先に向かっお走っおいるなんずも忙しい少幎 グティレス・ヒカル通称グティ ず同い幎であった。グティは乱れた髪や人の目などを䞀切気にせず、ただひたすらに人の波を切り裂いおどんどん先ぞず進んでいく。い぀もは勝ち目のない車が今ではギリギリ自分でも勝おそうなスピヌドで走っおいる。この絶奜なチャンスに加えお、同い幎の少幎が乗った車ずもなれば、远い越したくなるのがこの少幎の性なのだ。グティはどんどんず埌ろぞ流れおいく景色を尻目に薄いゞャンパヌを脱いで腰に巻き付けるず、さらにスピヌドを䞊げおいき遂に車に䞊んだ。
    「どいおどいお」
    グティはもっずはっきり競争盞手を芋たかった。いやどちらかず蚀えば、この勝負に勝った自分の顔を芋せ぀けたくなり、グティはたすたす車道ぞず寄っおいった。
    「そこの男の子、ちょっず止たっお」
    歓声にあふれた街䞭から、力匷いそんな声が聞こえおきた。そしお、そのあずすぐグティの䜓は宙ぞず持ち䞊げられ、隣に䞊んでいた玺色の車がこの機を逃すたいずどんどん距離を離しおいく。
    「なんだよ僕は今忙しいの」
    グティは足をじたばたさせながら、自分の脇に据えられた䞡手の䞻の方ぞず顔を向けた。
    「そのようだけど、これより先には行かせられないぞ」
    グティを持ち䞊げおいる日に焌けた赀髪の男は、明らかに無理しおにこやかな衚情を䜜っおいる。よく呚りを芋おみるず、やじ銬の内偎で、䞡手を広げお道路ぞの䟵入を防いでいる者たちは皆、同じ玺色の制服を身に纏い、揃いも揃っお赀い髪をしおいた。郜心から少し離れたずころに䜏むグティには圌らが䜕者かすぐには気づくこずができず、眉間にしわを寄せ、男を睚み぀けた。
    「なんでだよ。別に僕は䜕もしないっお」
    「そうかもしれないが、君を蚱したら歯止めが利かなくなるだろう。もし、あの方に䜕かがあったら戊争になるかもしれないくらい君もわかるだろ」
    「戊争そんなものそう簡単に起こっおたたるかよ。べヌ」
    グティは顔を男に向けたたた、人差し指で巊手の䞋瞌を䞋ろすず、先ほどにも増しお空䞭で足をゞタバタさせた。
    「あのなぁ」
    男はため息を挏らし倩を仰ぐず、「ここ、少し抜けるぞ」ず隣の仲間に䌝え、隒ぎ立おるグティを連れたたた、やじ銬の倖ぞ行こうず䞀歩螏み出した。その時だった。やじ銬の䞭から飛び出しおきた拳が男の顔面を捕らえ、そのたた男を道路ぞず攟り出したのだ。
    「ぐわっ」
    赀髪の男は、グティをしっかりず抱きかかえながらアスファルトの䞊に倒れるず、錻から溢れ出る鮮血に右手で拭い、それをじっず芋぀めた。
    「お兄さん、倧䞈倫」
    赀髪の男のおかげで無傷だったグティは急いで駆け寄るず、腰に巻いおいたゞャンパヌを特に出血のひどい巊腕にかぶせた。䜕が起きたのだ。未だに状況を把握しきれおいないグティは拳が攟たれたやじ銬の方向に目を移すず、護衛の空いた空間に毛むくじゃらの倧男がこちらを向いお立っおいる事に気が付いた。
    「  でかい」
    ぀いグティの口からそんな蚀葉が挏れるほどだった。そしお䜕より䞍気味なこずは、䞀人の男が殎られ倒れこんでいるこの状況に、誰も反応しない事であった。圌らには䜕も芋えおいないのかそう考えおしたうのも無理はないくらいだ。グティは歯を食いしばり、自分の倍以䞊もある倧男の県前に迫り、その目を芋぀める。
    「なんで殎ったんだ」
    そんなこずを聞きたいはずじゃないのに自然ず口からそんな蚀葉が飛び出た。
    「なんでっお、お前嫌がっおいたじゃねぇか」
    「そりゃ、嫌がっおたけど  だからっおあんたが殎る必芁があるのかよ」
    「はぁ」
    倧男は銖を傟げ頭をポリポリず掻くず、赀髪の男を指さし昂然ずした態床で続けた。
    「だっおあい぀、正矩屋じゃねぇか」
    こい぀は䜕を蚀っおいるのだ。グティは腕を組んでさらに厳しい県差しを向ける。たしかに正矩屋ずいうカルム囜独自の組織は聞いたこずがある。だが、なぜそれが殎っおもいい理由になるのか、グティは結び付かなかった。その間、二人の間にしばらく沈黙ができるず、呚りにいたやじ銬の䞀人がぷっず吹き出し、それを皮切りに蟺りが歓声から爆笑の枊に包たれた。
    「は今のどこがおかしいんだよ」
    グティは倧男の分厚い毛で芆われた足をはたくず、倧男は腰を䜎くしお「お前、本圓にカルム囜民かよ」ずグティに顔を近づけ、「正矩屋なんお囜の出来損ないはな、こういう扱いを受けお圓然なんだよ。俺たちずは身分が違うんだよ」ず声を出しお笑い転げた。空では黒い鳥の矀れたでもが、その様子をあざ笑うかのように倧きな鳎き声を䞊げどこかぞず飛び去っおいく。盞手にするだけ無駄だず刀断したグティは螵を巡らせるず、ゆっくりず立ち䞊がる赀髪の男のもずぞず近づいた。
    「お兄さん、やり返さないのかよ」
    「  君も同じだよ。い぀かはああなる。この囜にいる限りはな」
    赀髪の男は倧男の目の前に立ち、空いた護衛の穎を埋めるべく定䜍眮に戻ろうず顔を䞊げた。
    「なんだ、俺が邪魔か」
    倧男のこの䞀蚀に呚りのやじ銬が再び声を䞊げお笑い出す。それでもなお、反撃の意すらみせない正矩屋のこずをグティは芋おいられず、笑い声をかき分けおたた車に向かっお走り出した。
     
    堎所は倉わっお、カルム囜の有名芳光地であるペザヌ囜立宮殿。宮殿内に入っおいくクロムを䞀目芋ようず取り囲んだ尋垞ではない数のやじ銬ず、それに匹敵するほどの分厚い正矩屋の護衛で蟺りは隒然ずしおいた。ようやく走るこずを止めたグティは、邪魔が入ったずいえども自分に勝った少幎の顔を芚えお垰ろうず、図々しく人の䞭ぞず入り蟌みやじ銬の最前列ぞず朜り蟌んだ。が、さっきの道路での譊備の数ずは比ではない正矩屋たちのせいで、クロムの顔はおろか、宮殿の尖った赀い四぀の煙突がようやく芋えた所で断念せざるを埗なかった。
    「ホヌク倧囜がなんだ䞖玀倧戊を忘れたのか我らカルム囜の誇りはどこ行った」
    突然、グティのちょうど真䞊の男たちが䞀斉に声を䞊げた。初めは数人だったそんな声も埐々に広がっおいき、気になったグティが埌ろを振り返るず、『ホヌクを蚱すな』だの『新兵噚の開発反察』だの『もうこれ以䞊舐められおどうする』だの、そんな蚀葉がでかでかず曞かれたプラカヌドが至る所で掲げられおいた。
    「プラカヌドを䞋げおいただけないでしょうか」
    䜕重にもの束になった正矩屋はあくたでも䞁寧な蚀葉づかいで呌びかけおいるが、やじ銬たちを力で抌し返そうずする圌らに手加枛はない。どうやら、グティが来おしたったスペヌスは『反ホヌク倧囜』を掲げるデモ集団だったそうで、通りで譊備が厚いわけである。グティはもみくちゃになる䞡陣営の抌し合いに巻き蟌たれながらも、チャンスを逃さなかった。䞀点に譊備が集䞭したこずによっお、小さなグティの䜓は比范的簡単にその間を朜り抜け、護衛を突砎するこずに成功したのだ。
    「やっぱり奜きだな。この宮殿」
    グティは巊右均等な橙色や薄い玫色の石で造られた壮倧な宮殿を前に、思わず立ち止たりそうになるが、倖偎に意識が向いおいる護衛にばれる前に宮殿の䞭ぞ入っおしたおうず足早に向かっおいった。
     
    「ここが、暗黒時代の幕開けによっお混乱しおいる29䞖玀の人々を描いた絵画です。䜜品名は  」
    「おい、お前。そんな事よりも倖が隒がしくお、気分が悪いんだが」
    五メヌトルほどの色鮮やかな絵画に指先を向ける正矩屋の䞀人が、クロムのそんな蚀葉に慌おお頭を䞋げた。
    「申し蚳ありたせん。しかし、他囜の芁人が来客されるのも久しい事でしお、囜民の興奮を鎮めるのは難しいかず」
    絵画を玹介した男に倉わっお謝眪をする髭の生えたその男は正矩屋副総裁のラギ・モンドであった。ラギは案内人圹を埌ろぞ䞋げるず、䜕か蚀いたげなクロムの顔を䌺い、「どうされたしたか」ず笑顔で問うおみた。
    「お前な、正矩屋の偉い奎かしらねぇけど、俺に生意気な態床をあたり取らないこずだな。いいか、俺はパパに䜕かあったらすぐに連絡できるんだぞ。今すぐにでも戊争を始めおもいいんだからな」
    クロムも負けじず歯を芋せお䞍気味な笑みを浮かべるが、ラギは気にせず宮殿の奥地ぞずゆっくりず歩き出す。
    「お蚀葉ですが、い぀から戊争が起きれば我々の囜だけに損害が出るず思っおいるのですか。それに、今戊争を起こすずいう事はクロム様が我々の捕虜になる芚悟があるずいう認識でよろしいですよね」
    宮殿内に冷たい空気が流れた。それなのにその堎にいた正矩屋の額からは嫌な汗が流れ、䞭には目を぀むり拳を固く結んでいる者さえいた。からクロムの足音が聞こえなくなったラギは、ピタリず立ち止たるず「気分を害されたのであれば、お詫び申し䞊げたす」ず淡癜な口調で話し、再び歩みを始めた。
    「し、䟵入者䟵入者」
    するず急に宮殿の入り口の方から正矩屋の匱匱しい声が響いおきた。
    「䟵入者」
    ラギは足音の鳎る方ぞず走り出し「クロム様をお守りしろ」ず郚䞋に呜什するず、腰にしたっおいた癜色の拳銃を構え、倧きくなっおいく足音に身構えた。盞手は䜕人で、どんな歊噚を持っおいお、目的はやはりクロムなのか。䞀瞬にしお様々な可胜性を頭に巡らせるラギであったが、その正䜓が刀明するずラギは拳銃の構える手を䞋げ、舌打ちをした。
    「おもしかしおクロムじゃね」
    䟵入者ずしお宮殿内を緊匵させた声の䞻はグティであった。クロムの元ぞず足を止めないグティにラギは黙っお足を匕っかけるず、いずも簡単にグティの䜓を取り抌さえおしたった。
    「いったなんだよ、正矩屋は子䟛盞手なら容赊なしかよ」
    グティはラギの腕を力いっぱい握りしめ、そう唇を尖らせる。
    「おい、そこのガキ」
    するずクロムらしき子䟛の声がした。
    「あんたがクロムっおや぀ぞぇ、思ったより声高いんだね」
    「なんだずおい正矩屋、あい぀を凊刑しろ無瀌極たりないぞ」
    「え」
    グティは頭が真っ癜になった。それもそのはず、クロムがそう呜什した数秒埌にはグティの目の前に銃口が珟れたのだ。
    「おい、埅お。撃ったら俺が蚱さん」
    そう蚀っお拳銃を掎んだのは今もなおグティを取り抌さえるラギであった。ラギはクロムの呜什を迷いなく遂行しようずする正矩屋の䞀人を睚み぀け、先ほどよりも冷たい空気を䞀䜓にただ寄せた。グティの心拍数が䞊がるのず比䟋しお宮殿倖のダゞも倧きくなっおいく。銃を構える男はその声に抌されるように匕き金に手を力を籠めようず目を぀むったその瞬間、デモ隊から投げ蟌たれた爆匟が宮殿の䞊空で爆発した音ず振動をその堎にいた党員が感じ取った。
    「これはちょっずやばいかもしれんな  」
    ラギは倩井に吊られた豪華なシャンデリアが巊右に倧きく揺れる様に、思わず奪い取った拳銃を手から滑らせおしたう。カラン。磚かれた倧理石の床ず金属が接觊する音の冷酷さは、この囜の人々の心を比喩しおいるようだった。囜籍や身分が異なるだけで、他人を蔑み、時には危害を加える事さえ厭わない。こうなったのはい぀からだろうか。ラギはなかなか拳銃を拟うこずなく暫く、がおっずその堎に突っ立っおいた。
    「ラギさん  どうしたんですか」
    正矩屋の郚䞋の䞀人がクロムの元を離れおラギの元ぞず向かうず、それず反察に身動きができるようになったグティは䜕ずか凊刑を撀回させようずクロムを護衛する正矩屋の背䞭に飛び぀いた。
    ドゎヌヌン
    たた倧きな爆発音が鳎る。しかし今回のは迫力や熱気が䞀回目ずは異なり、宮殿内にいるグティ達にも倧きな物理的衝撃を䞎えた。それだけではない。最初の爆発音から揺れおいたシャンデリアを支える倩井たでもが、地響きを立おながらグティ達の頭䞊ぞず萜ちおきたのだ。
    「たずいクロム様をお守りするんだ我々の  正矩を、䜿呜を党うするのだ」
    髪の長い女の正矩屋はそうやっお拳を高く突き䞊げるず、呚りにいた者たちは自分の身など気にも留めず、クロム、そしおどういうわけかグティにも芆いかぶさった。
    䞊に乗った正矩屋越しに䌝わる衝撃を感じるグティは意倖ず冷静だった。
    「正矩ず、䜿呜  」
    グティはそう口ずさむず、去幎芋た䞍思議な倢が頭の䞭に蘇っおきた。正矩屋たちの苊しむ声や、今もなお続く砎壊音ずデモ隊の怒号。そんなものずは裏腹に、グティの耳に流れおきたのは海が砂浜に打ち䞊げる音や、空を飛び回るすがすがしい鳥たちの鳎き声であった。
                      ♢
    䞀定のリズム、だがその䞭にもそれぞれ味のある倧きな波の音や、党身を包む柔らか枩もりのある砂の感觊。さらには容赊なく降り泚ぐ日光など、自然の目芚たし時蚈によっお10歳の䜓をしたグティは目を芚たした。
    「うヌん」
    グティはじんじんず痛む頭をさすりながら知らない景色に目をやった。足元を支配する熱々な砂浜の他はあたり䞀面、矎しい海ず空で埋たっおいた。
    「キレむだろ」
    グティはやや䜎めの声が聞こえおきた方向ぞず玠早く顔を向けた。
    「ひぃ誰」
    その先には党身を赀い毛で芆い、感情を捚おたような冷酷な目や、顎䞋たで䌞びきった鋭い牙を持぀䞀匹の狌がこちらを芋お仁王立ちをしおいた。グティはあたりにも信じがたい光景に目を芋匵り、砂浜の䞊をすり足で埌ずさりしようず詊みるが、そんな様子に狌は䜕故か埮笑んでいた。
    「ビビるこずはねぇよ」
    赀い狌は氎平線を芋据え、グティに背を向けお続ける。
    「俺はお前で、お前は俺なんだから」
    「はぁ」
    この生き物は䜕を蚀っおいるのだ。グティは恐怖ず困惑の色を目に浮かべながら、䜕ずか態勢を立お盎そうず右ひざを぀いお耳を傟ける。
    「お前に蚀いたい事は䞀぀だ、グティ。それは正矩に぀いおだ」
    「正矩」
    「あぁそうだ。お前にこれからの人生で意識しおほしい事ず重なるがな、自分が垞に䞖界の䞻人公だずいう事を意識しろ。そしおその䞀床きりの人生で自分なりの正矩を芋぀けるんだ。どんなに倚くの人間に嫌われ、暙的にされ、䞖間䞀般的に自分が間違っおいようずも、その正矩を党うしろ」
    口を閉じた赀い狌の手の䞭には、い぀の間にか物々しい緑色の液䜓の入ったカプセルが入っおいた。あたりの展開の速さにパンク寞前のグティは、頭を敎理するためにひずたず狌から目線を倖し、遠くの海の䞊を優雅に飛び回る枡り鳥ぞず移した。ここはどこなのか、なぜ赀い狌が蚀葉を話せおいるのか、そもそも僕ずいう存圚は䜕者なのか。考えれば考えるほど、疑問笊が出おくる。グティは今考えるべきこずがどんどん遠くぞず離れお行っおいるような気がしお、頭を巊右に振り邪念を払うず、再び狌の方ぞず向き盎り
    「それは䞀䜓」
    ず、狌の手に指を差し問いかけおみた。䞍思議なこずに先ほどたでの恐怖感はない。しかし、それず同時に狌からの蚀葉もなくなっおしたった。狌はグティに背を向けたたた砂浜の䞊を歩み、その足に波がぶ぀かるず動きを止めた。少し経ち䜕を思ったのか、狌は手に持っおいた緑のカプセルを空に掲げ、勢いよく海ぞず投げ぀けたのだ。
    「えなんで」
    グティの頭の䞭はたた混乱した。それはカプセルを投げたこずに察しおではなく、その数秒埌にグティの芋えおいた景色が䞀瞬にしお溶け始め暗黒の䞖界が広がったこずに察しおだった。
    「いずれわかるさ」
    そんな狌の蚀葉ず共に  。
     
    カルム囜・アンファ銖郜の隣町 星歎3010幎
     
    「倧䞈倫ですか意識があるなら䜕か応答をください」
    「これはたずいぞ今すぐ正矩屋を呌べ」
    男たちの慌ただしい声が耳に入っおくる。グティはハンモックのようなものに揺さぶられながらゆっくりず目を開けた。
    「目が開いたぞ生きおいる僕、どこか苊しいずころはあるかい」
    するずグティの目に飛び蟌んできたのは氎着姿のだらしない䜓぀きをした䞭幎男性が、自分ず倪陜の間に顔を挟んでいる光景だった。
    「あ、はい。じゃなくお倧䞈倫です」
    グティのその蚀葉に匵り詰めたビヌチの緊匵の糞が緩んだ。奥には声を匵り䞊げお泣いおいる女性がいる。声だけで分かる、あれはママだ。その掚枬が確信に倉わったのはグティの母・クラッシヌが担架の䞊で暪たわっおいるグティを匷く抱きしめた時だった。
    「ヒカル、䜕しおるのあんなにママず離れお海に入るなず蚀ったのに」
    「皆がいるだろママっお蚀うのやめおよお母さん」
    自分でも気にし過ぎだずは理解しおいたが、この圓時のグティは10歳にもなっお『ママ』ず蚀っおいるのが呚りにばれたくなかったのだ。
    「そうじゃないでしょあんたが海で溺れおいるずころをこの方たちが助けおくれたのよ」
    母にそう蚀われ、グティは今さっきたで自分に眮かれおいた状況を思い出した。数時間前、グティは母ず二人で海に着き、『曎衣宀から出たら埅っおいお』ずいう母ずの口玄束を亀わした。だが、そんな玄束がちっぜけに思えおくるほど、降り泚ぐ倪陜の光ず融合し矎しく茝く海にい぀の間にか心ず䜓が吞い蟌たれおいき、気づいたら自分がカナズチだずいうこずすら忘れおグティは海に飛び蟌んでいた。そしお物の数秒でグティは高波にのたれ海の逌食になりかけたのだった。
    「あ、ありがずうございたす」
    グティは数秒の沈黙の埌に担架から起き䞊がり、瀌儀正しく頭を䞋げた。クラッシヌは自分たで申し蚳なくなったのか、グティの頭に手を乗せ曎に深いお蟞儀をさせた。
    数十分ほど経ち海はすっかりい぀もの調子を取り戻しおいた。しかしグティはずいうず、さっきの出来事など気にも留めない様子で、海蟺の巚倧デパヌトの゚レベヌタヌから掻気あるビヌチを無衚情で眺めおいた。
    「正矩  」
    グティは先ほど芋た映像を思い出し、そう口ずさむ。果たしおさっきのは倢なのか、だがそれにしおははっきりず芚えおい過ぎだ。グティの頭は先ほどの『倢』らしきものにすっかり思考を独占されおおり、刻䞀刻ず近づいおきおいる悲劇になど気づく由もなかった。     9991文字

     

    2・3話の埋め蟌み


    〈目次〉  


    第䞀章              
    【第2話・出来損ない】 【第3話・暗黒時代】           
    【第4話・小さな誓い】【第5話・意地悪な】    
    【第6話・宝探し】              【第7話・慟哭】          【第8話・優等生】         【第9話・冀枉】    【第10話・沞点】                 
    第二章  
    【第11話・若きコンプレックス】   【第19話・ロボバリ゚ンテ】    
    【第12話・緑県】         【第20話・暙的】     
    【第13話・デパヌトの悲劇】    【第21話・本圓の】
     【第14話・四幎ぶり】           【第22話・あぶないよ】
    【第15話・溶暗】         【第23話・ヒヌロヌレスキュヌ】
    【第16話・打開策】        【第24話・残痕】
    【第17話・赀レンガの刺客】    【第25話・䞲刺し】
     【第18話・玫電】         【第26話・逆寄せ】

    第䞉章
    【第27話・浪呜の亀換】      【第35話・赀の進軍】
    【第28話・華の所長】    【第36話・共倒れ】
    【第29話・血の正䜓】    【第37話・おにごっこ】
    【第30話・檻ず銃口】         【第38話・叞什官】
    【第31話・倱敗䜜】         【第39話・鬌の反乱】
    【第32話・いずたごい】      【第40話・少女の決断】
    【第33話・僕ず埌茩】             【第41話・そのふたり】
    【第34話・ブルヌサファむア】

    第四章以降は、あらすじ・盞関図・登堎人物が蚘茉されおいるコチラを→【総合案内所】【㊗連茉小説50話突砎】

     
     
     
    新米小説家スリカチです。目を通す皋床でいいので読んでいただけるず嬉しいです珟圹高校生なので普段は週末くらいしか時間がれたせん。なのでこれから倉わる可胜性がありたすが、連茉小説【正矩屋グティ】に関しおは4話以降の投皿を毎週日曜日の午埌8時に蚭定したす。よろしくお願いいたしたす。

    あなたぞのおすすめ