
UNITED KINGDOM#03
第3章 それぞれの道
「題名:将来展望」
「本文:高校卒業したら「U」はどうするつもり?
俺は地元の4年制大学に通うよ、って言ってもD判定だけど。
音楽は続けたい、でもドラムはもう駄目かも知れないんだ。
腰痛は背骨の神経圧迫だから、進行する事はあれど、
回復する見通しはないんだと。
SNAIL RAMPのコピーをしていたJACKPOTってバンドの
ヴォーカルだった慎也って友達と街頭で弾き語りやらないか?
って誘われているんだ。何気に今、ゆずとか19とか流行ってるし。俺はハモり得意なんだぜ。ベースの子が音痴だったから、
ドラム叩きながらコーラスやってたんだ」
「受信 1件」
「題名:悩んでいます」
「ふうん、「K」が弾き語りかあ、意外な展開でびっくり!
あたしの夢はねえ、メイキャップアーティスト。
4年制じゃなくて、短大志望なんだけど、
メイキャップアートの勉強できる所がなかなか見つからなくて
困っているの。その夢も心の中では揺らいでいて、
何になるか、なんて10月の今には、まだピン! と来ないよ」
メイキャップアーティストか……
想像力の乏しい俺にはどんな職種かイマイチ浮かんでこなかった。お互い社会人になるのではないことが、今の時点で、
取りあえずは判明したので、勉強の差し支えにならない様、
メールの送信を1日1通程度に控えようと、勝手に誓いを立てた。
「受信 1件」
「題名:チボだけの為に」
「本文:聞いて! 聞いて!
チボ・マットがリミックスに参加しているCDが在るよ。
その名はティギー、目印は緑色のジャケット、
曲のタイトルは夜行列車だよ。
また新しいジャンルに「K」を導けると思うと、
なんだか嬉しくなっちゃう。
どういう曲調かは、聴いてからのお楽しみね。
さあ、CDショップに走れ! 走れ!」
「はぁ、はぁ……、て、店長。ティギーっていうグループの
緑色のCD置いてます?」
「ああ、ティギーね。HIP HOPの「T」の棚、探してごらん」
(ティギーってHIP HOPだったのか……。
確かに、初めてのジャンルだ)
家に帰って聴いてみる。ティギーは古着屋なんかで流れているBGMといった感じが最初の印象だ。
夜行列車はゆかさん、美保さんが中心になって
歌うのかと期待したが
「やこーれーしゃー」
って掛け合いくらいで、目立った活躍はなかった。
ティギーのCDは余り聴かない内に紛失してしまった。
俺の悪い癖で、違うケースに、違うCDを入れるという
だらしなさが生んだ悲劇だ。
「題名:NICOTINE」
「本文:俺の得意分野で新星を発掘!
JACKPOTのベースの将史が貸してくれた
NICOTINEのi HOLA AMIGOってアルバムだけど、
最高にクレイジー!
THE BEATLESのALL MY LOVINGや
マリリン・モンローのI WANNA BE LOVE BY YOUのカヴァーが入ってたり聴きごたえ有りだよ!
GREEN DAY、録音してくれた友達が知ってるんじゃないかな?
聞いてみてね」
「受信 1件」
「題名:ドゥドゥッピ、ドゥー!」
「本文:さすがは「K」、良く見抜いてるねえ。友達、持ってるって。マリリンは、あの「ドゥドゥッピ、ドゥー!」らしいね。
あれがポップパンクになるって、全然想像出来ない。
ねえ「K」、ポップパンクって部屋で聴くの?
あたし本読んだりしながら音楽聴くから、なんか落ち着かないんだ」
「題名:疾走感」
「本文:俺は部屋で聴いてるよ。
後はカセットに録音して電車で聴いたり。
確かに「U」言う通り、本を読みながらは向かないかも知れない。俺はドラムの癖が抜けなくて、腿の辺りをパシパシと叩きながら、ついついリズム取っちゃうな。あの疾走感は車を乗り出したら、
さらに良さが分かってくるかも知れない」
NICOTINEは俺のストライクゾーン、しかもど真ん中だった。
THE BEATLESのALL MY LOVINGは原曲を知らなかったが、
おそらく根底を覆すモノなんだろう。このアルバムで、
男女のハモりも悪くないと認識した。
慎也は断固としてそれを認めなかったが。
取りあえず、俺はポップパンクを脱却して、
フォークソングを糧にしていかなければいけない。
ゆずも19も悪くないし、調子に乗って作詞・作曲も?
なんて、未来は割と明るく開けていた。