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別れの儀式

    私は物持ちがいい。

    「“ヨーロッパのおじいさん”みたいだね」と言われたこともある。

    入手する時はよく吟味してから迎え入れて、手入れをして長く使いたい。

    それだけに「もう寿命だな」と手放す時は最後に手入れをしてからお別れをする。

    15年使用していたトースターが壊れた時、捨てる前に掃除をしていたら、
    「捨てるのに掃除なんてムダじゃない?」と言われた。

    そう思うのも、わからなくもない。

    でも15年ずっと手入れをしてほぼ毎日使っていたモノを手放す前に「ありがとう」の気持ちで最後にピカピカにする時間は“私には”無駄ではない。
    その時間があるから潔く「さよなら」出来る。
    私にとっては禊ぎの儀式のようなものかもしれない。

    手を掛けたものには愛着が湧く。

    けれどもずっと自分のそばに置けるモノばかりではなく、それぞれの寿命もある。

    手放す側が手放すモノに対して最後にできることは「今までありがとう」と敬意を払うことなのだと思う。

    相手(トースター)や周りがどう思うかはの問題ではない。

    それは自分自身が今から手放すモノにかけた時間を“自分で”肯定する為の儀式でもあるのだと思う。

    #創作大賞2026 #オールカテゴリ部門

     
     

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