茶碗蒸しから始まる、私の「ほろ〇い」秋の思い出
🍂今回のこちらの企画に参加します。
ネロ王子🌙とorivie✨さんのコラボ
「秋読コレクション」
ネロ王子🌙
orivieさん✨
【テーマ】
「あなたの秋を、読ませてください」
なので
私の忘れられない秋の思い出をひとつ🍁
◇
茶碗蒸しを食べていたら、スプーンですくった底から銀杏が出てきた。
秋って、こういうところにも来るんだなと思う。
栗とか、きのことか、さつまいもとかも好きだけど、銀杏はなんか別枠だ。
見つけると、ちょっと嬉しい。
でも、銀杏を見ると、たまに思い出す人がいる。
……なんて書くと、
きれいな恋の思い出みたいだけど、
私の場合は、彼より先に思い出すものがある。
昔、デートの待ち合わせで、大きなイチョウの木の下で彼を待っていた。
黄色い葉っぱ。
少し冷たい風。
これからデート。
まだ秋めき始めたばかりで、お気に入りのブーツを履いて「秋らしくて、いい待ち合わせ場所だな」と思いながら。
その日、彼は買ったばかりの新車で迎えに来てくれた。
新車。
大事なことだから、もう一回言うけど、
まっさらな新車だ。
私は、新車に乗れる嬉しさだけで、ワクワクしながら助手席に乗り込んだ。
ドアを閉めて一息ついた瞬間、車内に不穏な空気が漂う。
少し走り出してすぐ、彼が言った。
「……なんか臭くない?」
私も、さっきから思っていた。
なんか臭い。
しかも、まあまあ臭い。
「窓から入ってきてる?」
彼が言う。
「新車って、こんな匂いするんだっけ」
私も一応、新車を疑ってみた。
でも、よく分からない。
信号で止まっても臭い。窓を開けても臭い。
新車の匂いにしては、どう考えても強烈だった。
そのとき、ふと足元を見た。
ブーツを少し浮かせて、裏を見てみる。
見事に潰れた銀杏が、くっついていた。
……私じゃん。
原因、完全に私じゃん。
待ち合わせしていたのは、あのイチョウの木の下。
彼を待っている間に、思いきり踏んでいたらしい。
あの、踏むとえげつない匂いを出す銀杏を。
一瞬、迷った。
これ、言わなきゃダメだよね。
いや、言わないという選択肢は…
…たぶんない。
だって、まだ臭ってる。
ほんの一瞬だけ、このまま知らん顔をしておこうかなと思った。
新車のせいにできないかな、と。
……できない。
どう考えても、できない。
犯人は、私の足元にしっかりくっついてる。
結局、
「……ごめん。私だわ」
と、白状した。
秋らしくて、ロマンチックなはずだったデートは、開始早々、
『銀杏を踏んだブーツのまま、彼女が新車に乗り込んだ』
という、地味に忘れられない出来事になった。
彼がそのとき、どんな顔をしていたのかは、もう曖昧で。
その日、どこへ行ったのかも、細かいことはほとんど覚えていない。
なのに、銀杏だけは覚えている。
記憶って、なんだか順番がおかしい。
何を話したかなんて、ほとんど覚えていないくせに、
「そこ?」
って言いたくなるようなことだけ、妙に鮮明に残っていたりする。
どこか切ないのが秋だとしたら、私の秋はだいぶシュールだ。
そして今、目の前には茶碗蒸しがある。
さっきすくった銀杏が、何事もなかったような顔で、スプーンの上にいる。
あんなに強烈な匂いで人を困らせておいて、
食べるときだけは涼しい顔をしている。
ずるい。
でも、おいしい。
銀杏を見つけると、今でもあの日を思い出す。
彼の顔より先に、まずあの強烈な匂いと、ブーツの裏にしっかりくっついていた銀杏が、浮かんでくる。
たぶん彼も、あの秋のことは忘れていないと思う。
私とは、少し違う意味で。
あとがき
ちなみに、その時の彼とはその後お別れしました……
が、
決してこの銀杏事件が原因ではありません笑。
秋といえば金木犀の香り、色づく紅葉、おいしい味覚……いろいろありますか、なぜか私の脳裏に真っ先に浮かぶ秋は、あの「銀杏」でした。
昔の恋は「ほろ苦い」なんて言いますが、私の場合はどう考えても完全なる『ほろ〇い』思い出です笑
みなさんの秋の思い出は、甘酸っぱいですか? ほろ苦いですか?
それとも…。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
ダイジョウブカナ…。笑
ネロ王子🌙とorivieさん✨
「秋読コレクション」
素敵なコラボ企画をありがとうございます。
秋読コレクション
9月28日(月)〜10月4日(日)まで
皆さんも、この秋の一作を参加してみませんか?
そして、普段の私は恋愛小説・恋のヒントを書いてます。
こちらも覗いていただけると嬉しいです。
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