天才を屠りて
気違いのせいで神はサイコロを振る。「天才を屠りて愚鈍な凡人を救え」と路傍の影より嘯く声が直に脳髄を動かして神経の先まで伝播した時、天才は苦心惨憺して完成させた技術を雑踏へと投げ入れた。度を越した群衆は互いに押し合い、突き飛ばしながら垢まみれの四肢を一方向に解き放ち天才の恩恵を奪い合った。捨て鉢になった神がほくそ笑み、「片利共生」と言うを合図にチュウチュウと吸う群衆の活力はみるみる回復して、咽喉を越す恩恵の嚥下音が聞こえた。今度は曇天の端を揺さぶり鳴らして「寄生せよ」と神が叫ぶと「寄生!寄生!」と凡人共も一斉に捲し立てる。やがて恩恵は木乃伊のように萎びれてヒドク矮小なモノになった。