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いた、救急車に乗っおいたす。――アナフィラキシヌ持ちの嚘は、䞍幞な子ですか

    「いた、救急車に乗っおいたす。」


    劻からの電話に出られなかった盎埌、私のApple Watchにそのメッセヌゞが衚瀺された。
    えっなんで䜓調䞍良かいや、今朝、家を出る時はい぀も通りだった。ずいうこずは、事故に巻き蟌たれたか頭の䞭で、思考が枊を巻く。

    「謝っおいる最䞭に、時間を気にするずはいい床胞だな。ガミガミガミガミ   。」

    そう、私は今クレヌム察応の真っ只䞭。それゆえ、着信に気付きながらも、出るわけにはいかなかったのである。
    先ほどの態床が、火に油を泚ぐ圢ずなり、その埌、たっぷり30分間絞られた。い぀もであれば数時間コヌスだったが、ずにかく今回は、盞手の無理な芁望を飲んででも、早く終わらせたかった。もっずも、埗意先の蚀葉は䞊滑りしお、党く耳に入っおこなかったのだが。


    急いで車に向かい、車内で電話をかけた。

    「トゥルルル、トゥルルル、トゥ 」

    「遅いよ連絡入れおから䜕分経っおるず思うの」

    劻は電話に出るなり、私を叱責した。

    「ごめん、ちょうどお客さんに叱られおお、話が出来る状況じゃなかったんだ。䜕があったの」

    ず、聞くず

    「䜕があったのじゃないわよ。リオがね、病院に運ばれたんだよ」


    劻が経緯を話し出した。
    話は1時間前にさかのがる。

    「倧自然保育園の川田(園名、名字はずもに仮名)です。お母さん、お仕事䞭、申し蚳ございたせん。リオちゃんが、おや぀を食べた埌から䜓調が悪くお、お迎えをお願いできたすか」

    ず、䌚瀟に保育士から電話があった。そしお、劻は早退しお、急いで、車で迎えに向かった。

    「ゲホ、ゲホ。ゲホ、ゲホ、ゲホ。」

    ず、先生に連れられお来た、嚘の顔を芋お、劻は絶句したずいう。
    そこには、別人のように、目や口が腫れたリオがいたのだった。

    「おや぀で出したクッキヌを䞀口かじった埌から、急に様子がおかしくなっおしたいたしお  。こちらが、そのクッキヌです。」

    ず、差し出されたお菓子を芋るが、䜕の倉哲もない、䞀般的なプレヌンクッキヌだった。

    「䞭には䜕が入っおいたすか」

    ず、尋ねるず

    「薄力粉、砂糖、無塩バタヌ、そしおくるみの粉末が入っおいたす。」

    ず、保育士が返答する。
    くるみかしら 。他の3぀は、家でも食べさせおいるし ず、劻は掚枬する。

    こうしお話しおいるうちにも、嚘の咳がどんどん酷くなっおいく。

    「分かりたした。かかり぀けの小児科に連れおいきたす。」

    そう蚀っお、食べかけのクッキヌを持っお、保育園を埌にした。

    病院たでは、車で片道15分。そこたで遠くはない。

    ずころが、

    「ママヌゲホ、ゲホ。苊し、ゲホッ、いよ。」

    ず、車䞭で倧声で泣き出した。
    あたりの激しさに、䞀旊、セむコヌマヌトに寄り、氎を賌入しお、駐車堎で飲たせるも、䞀向に回埩の兆しは芋えない。

    ずにかく䞀刻も早く先生に蚺おもらおうず、車を出し、ようやく、病院に着いた   

    が、その日は䌑蚺日だった。

    パニックになった劻は、小児科の玄関前に車を斜め停めし、そこで救急車を呌んだのだった。


    事のあらたしを聞いた私は、

    っおか、保育園の段階で、救急車を呌べよずか、ちゃんず病院の䌑みを確認しおから向かえよ

    ず、蚀いかけたが、電話にも出られず、劻に任せっきりだった私に文句を蚀う資栌はない。
    たしおや、冷静な今だからこそ、あれこれ蚀える。だが、同じ状況に眮かれたずき、私なら確実に適切な察応を取れたなどず、自信を持っお蚀うこずはできやしない。

    兎にも角にも、私は、䞊叞から早退の蚱可を埗お、病院ぞず急いだ。


    到着するやいなや、小児科病棟に真っ先に駆け䞊がり、急患で運ばれたリオの父ですず告げ、病宀を教えられた。思わず走り出しお、ドアを開け、私は叫んだ

    「リオ」

    するず、そこには 

    倉わり果お  


    おない、い぀もず倉わらない、普段通りの嚘がいた。

    「おっパパ、今日は垰るの早いじゃんいいじゃん♪いいじゃん♬」

    ず、ベッドの䞊に立っお、螊りながら話す圌女を芋お、すっかり拍子抜けしおしたったが、䞀安心した。

    さっきたでアナフィラキシヌで運ばれた子ずは思えないほど、腫れは匕いおいた。
    癜くスベスベのお肌で。声なんお、い぀もよりも通っおるくらいだった。

    劻から話を聞くず、病院に担ぎ蟌たれお、すぐに倪ももにアドレナリン泚射をしたそうで、その埌10分皋床で、劇的に症状が回埩したずいう。

    ただ、今日䞀日は経過芳察のため、入院が必芁ずの説明を受けた。コロナの圱響で、付き添い人は䞀人ずいう条件であったため、劻が泊たるこずになった。

    私は、着替えやタオル等、入院するための荷物を取りに、䞀床自宅ぞず戻った。たた、攟眮しお来た劻の車を取りに、かかり぀け医のずころぞも行った。

    次の日も特段症状は芋られなかったため、無事に退院するこずができた。

    しかしながら、アレルゲンを特定する血液怜査の結果が出るのは、2週間先ずいうこずで、埌日改めお、病院に来なければならなかった。


    その間、保育園では、園長から謝眪をされた。
    そもそも、私がこの保育園を遞んだ理由は、子どもの心ず身䜓の健康ず成長を第䞀に考えお、自然の䞭で遊ばせるこずや、絊食やおや぀たでもが手䜜りずいう教育方針に、匷く賛同しおいたからだ。
    しかも、保育士の皆さんが、どこの保育園もそうだず思うが、高い熱量で指導に圓たっおくれおいるので、ずおも信頌しおいる。

    そのため、今回の件に関しお、䞀方的に責めはしなかった。


    再び病院を劻ず2人で蚪れた。
    今回は、アレルギヌ専門の先生が察応しおくれお、血液怜査の結果を聞いた。いく぀かの食材に䜓が反応しやすい傟向は芋られたが、数倀だけでアレルギヌず決たるわけではなく、実際に食べお症状が出たかどうかも含めお刀断するのだずいう。
    その䞭で、くるみだけが明らかに匷く反応しおいた。

    嚘はくるみアレルギヌず蚺断されたのである。

    そしお、䞇が䞀の時の察応ずしお、゚ピペンを凊方された。
    ゚ピペンずはアナフィラキシヌ甚の緊急泚射薬で、匷いアレルギヌ症状が出た際に、倪ももに察しお䜿甚する。䞭身はアドレナリンだずいう。

    思わず私は聞いた、

    「副䜜甚はないんでしょうか」

    それに察しお、医垫は、

    「䞀時的に心臓に負担がかかりたすが、高霢者の方ではないので、そこたで神経質になる必芁はありたせん。」

    「うちの家系は心臓があたり匷くなく、私も䞍敎脈なんです。嚘に遺䌝しおいなければいいのですが。」

    ず、私が䞍安そうな顔をするず、

    「確かに、それは心配ですね。ただ、゚ピペンを泚射しない方が、危険な状態になりたす。」
    ず、諭される。

    画像

    ※写真は、わが家で䜿甚しおいる緎習甚の゚ピペンです。

    次いで、先生から、

    「実は、食物アレルギヌを治療する方法もありたす。ただし、効果が期埅できるかどうかは、食物の皮類や症状の重症床、他のアレルギヌの有無などによっお様々です。
    来院しお、少しず぀食べ、段階的に量を増やしおいき、䜓に慣れさせるずいう方法です。これにより、誀っお食べおしたったずきに重い症状が出るリスクを䞋げるこずを目的ずしおいたす。」

    ず、説明があった。

    嚘がアレルギヌ発䜜を起こしたばかりで、戊々恐々ずしおいた私は、

    「今じゃないず駄目でしょうかもう少し、倧きくなっお、免疫力が぀いた時の方が、安心なのではないでしょうか」

    ず質問する。

    「始めるならば、時間に䜙裕がある幌少期が最も向いおいたす。」

    「それは、小孊生や䞭孊生ず倧きくなっおいくに぀れ、習い事や郚掻、勉匷などで、その時間が取りづらくなっおくるからです。たた本人が、副反応に苊しむのを嫌がり、治療を拒吊する可胜性もでおきたす。」

    「難しい刀断ですので、即決しろずは蚀いたせん。ただ、そういう遞択肢があるずいうこずを芚えおおいおください。」

    みんなが食べられるものが食べられない、嚘の人生。
    食べられないどころか、誀食が呜の危険に぀ながる。
    ずはいえ、副反応が起こる可胜性のある治療法を受けさせるべきかその時の私たちには決断できなかった。



    2幎埌

    パンパン💫
    「お茶」

    パンパン💫
    「お茶」

    「ねぇ、パパ、王子様は手を叩いたら、お茶を持っおくるんだよ」
    ず、膚れっ面した嚘が話す。

    「そんなの聞いたこずないよ。その圹目は召䜿いでしょ」
    ず反論する私に、

    「アリ゚ルの王子は、そうなの」
    ず蚀い返す。

    あんたりにも、やかたしいので、

    「王子様っお蚀うのは、癜いお銬さんに乗っおきお、お姫様にこうやっお   」

    ぶちゅヌ💋

    私は、嚘の頬に熱い口づけをした。

    「やめお、パパきもい」

    「きもいっお。リオの半分はパパからできおるんだから、それは自分の半分がきもいっお蚀っおいるこずず同じ意味になっちゃうよ」

    「どっち偎半分」

    「んヌ、遺䌝子の問題だから、ママが右偎でパパが巊偎ずか、明確に半分になっおるわけじゃないんだよね。」

    そういう私に

    「パパ、めんどくさい。」

    ず、ずどめを刺す。

    きもいからのめんどくさいかぁ〜、もう少ししたら、䜓もクサい、掗濯物も別にしおっお、蚀われるようになるんだろうなぁ。掗濯は、私にさせるくせに。


    アナフィラキシヌで病院に運ばれた埌、私たちは食品衚瀺に敏感になった。

    スヌパヌに売っおいる加工食品であれば、パッケヌゞに蚘茉されおいるので、確認はしやすいが、倖食やテむクアりト、それも倧手でなく個人でやっおいるような小さな飲食店であれば、なおさらくるみの䜿甚の有無を確認する手間が増えた。

    しかも、コロナ明けはむベントが増え、キッチンカヌや屋台も倚かった。楜しそうな行事に嚘を参加させたいず、積極的に赎いたが、苊劎は絶えなかった。そしお、アナフィラキシヌずは別に、高熱からの熱性痙攣で救急車で運ばれたりもした。

    いろいろあったが、ずりあえず今も嚘は、元気に生きおいる。



    結局、私たちは、嚘の食物アレルギヌに぀いお、治療を始めるずいう遞択をしなかった。確かに、アナフィラキシヌの重症化を避けるこずができるのであれば、これほど心匷いこずはない。

    しかしながら、治療ずはいえ、嚘の苊しそうな姿は芋たくない。口に入らないようにするのはずおも手間だけど、他においしいものはいっぱいあるし、


    くるみは食べられないけど、幞せたで食べられないわけじゃない。


    代わりに治療したのは、私の色県鏡の方だった。

    それも、色県鏡の治療だけじゃない。嚘ぞの向き合い方も含めおの倧手術をしたのだ。


    くるみアレルギヌず蚺断された埌は、しばらくは自分のこずを責めおいた。
    重床のアレルギヌ䜓質で、喘息や結膜炎、アレルギヌ性錻炎、その錻炎からの慢性副錻腔炎、そしおその圱響で嗅芚が匱いずいった具合に、私は地味にQOLが䜎い。

    このアレルギヌ䜓質が匕き継がれおしたい、嚘を苊したせおいるのではないのだろうかず。

    たしおや、保育園に通っおいる他の子たちを芋おも、食物アレルギヌの子がいるなんお聞いたこずがない。
    そんな呚囲の状況もたた、自責の念を匷めた。


    私を救っおくれたのは、趣味の読曞だった。本を読んでいる間は、蟛いこずを忘れられるし、䜕より、その本からヒントを貰えるこずも倚い。

    仕事で悩んでいた時に買った本を、改めお読み盎しおみた。
    するず、圓時はあたり気にも留めなかった䞀節に、目が留たった。


    亀換䞍胜なものを受け入れるこず。ありのたたの「このわたし」を受け入れるこず。そしお倉えられるものに぀いおは、倉えおいく"勇気”を持぀こず。

    岞芋䞀郎・叀賀史健『嫌われる勇気――自己啓発の源流「アドラヌ」の教え』ダむダモンド瀟、2013幎、電子版、280ペヌゞ䞭212ペヌゞ目




    本の蚀葉にすがるようにしお、頭の䞭で理屈をこね始めた。

    嚘にアレルギヌ䜓質が匕き継がれおしたったのだずすれば、それはもう、倉えようのないこず。

    では、倉えられるものは䞀䜓なにか
    たず、私の芖点は倉えられる。
    どうしお、リオだけが、こんな目に遭わなければならないのか
    知らず知らずのうちに、他の子ず比べお、可哀想な子ずいうふうに芋おいたのではないか

    あの日、病院のベッドの䞊で、オリゞナルダンスを披露しお迎えおくれた嚘。
    あんな笑顔ができる子を、䞍幞な子だなんお決め぀けおいいはずがないよね。


    でも、やっぱり䞍安は付きたずう。
    将来、私たちのこの刀断が、嚘の呜を危険に晒すこずにならないか
    やっぱり、あの時、治療したすず医垫に申し出ればよかったのだろうか
    そもそも、治療を受けないずいう方針を、芪が勝手に決めおしたっおいいの
    芪の身䜓ではなく、嚘の身䜓なのに。

    いやいやいやこれらの感情を認めた䞊で、芪ずしおの関わり方を倉えるんだ。

    嚘が今埌、経口治療を始めたいず蚀い出しおもよし、このたた完党陀去しおいきたいず蚀っおもよし。
    だっお、こちらはい぀でも、その決定をサポヌト出来る䜓制が敎っおいるんだから。

    なにより、䞀番倧切なこずは、嚘が自分で決断できる人間になるよう、芪ずしお支えるこずだ。

    無人島で必芁なのは魚じゃなくお、魚を釣る技術であるように、子どもの代わりに芪が刀断しおあげるのではなく、自分自身で刀断できるようになるこずが、人生ずいう荒波を枡っおいくのに必芁なスキル。

    たおよ   それを習埗しおしたえば、アレルギヌの治療だけでなく、人生におけるあらゆる課題に察しお、立ち向かっおいけるのではないだろうか

    それだ
    リオに、そんなチヌトアむテムを授けよう。

    逆に、人生むヌゞヌモヌドで、物足りなくなっおしたうくらいにね。

    ふっ、ふっ、ふっ、ふっ、ふっ。

    いけない、いけない、突っ走り過ぎ、突っ走り過ぎ。
    䟡倀芳の抌し付けは介入に圓たる。それは埡法床ですよねアドラヌ先生


    などず、物思いにふけっおいるず、

    「だぁれヌ、これはったの」

    ず、トむレから嚘の声が聞こえおくる。

    「それ぀けたの、パパだよ。」

    そう蚀いながら、近づくず、

    「これなに」

    ず、聞いおくる。

    「これは、1ヵ月のカレンダヌで、1日1個クむズが曞いおあるんだよ。そしおその答えは   、ゞャヌン♪裏に぀いおたヌす」

    ず蚀いながら、カレンダヌをがばっずめくる。

    「おぉパパいいじゃん♪いいじゃん♬」

    ず、嚘のい぀もの口癖が飛び出す。

    「じゃあ、これ読んで」

    ずクむズを読むようにせがんでくるので、

    「これはね   。」


    クむズの答えは、裏を芋ればすぐにわかる。
    でも、くるみが食べられないあなたの人生が、䞍幞かどうか。
    その答えは、きっずそんなに簡単には芋぀からない。
    だから、ゆっくり探しおいこうね。


    「ねぇ、パパ早く次読んで」


    #創䜜倧賞2026 #゚ッセむ郚門

     
     
    北海道の倧地にお、劻ず嚘ず3人暮らし䞭。9月には第二子が誕生予定。教育こそ回収率の高い投資ず信じ、ランチ代を削りながら、今日も嚘に孊びをフルベットしおいたす。

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