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Photo byvast_lilac9950

短編 私は誰なのだろうか

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    朝になった
    日差しが眩しい
    ここはどこだろう
    木がたくさんある
    外だろうか

    朝なのはわかるのに自分がわからない
    足はある
    歩いている

    でもどこかふわっとしていて
    意識が朦朧としている

    そんな中をひたすら歩く

    どれだけ歩いただろう
    たくさん歩いているのに外は朝のままだ

    思ったより歩いていないのだろうか
    誰ともすれ違わない

    どれだけ歩いただろう
    たくさん歩いているのに外は朝のままだ
    思ったより歩いていないのだろうか

    意識が朦朧とする中で
    ふと、自分の足元を見る

    歩いているはずなのに音がしない
    影も見当たらない

    よく見れば、私の足は地面に触れておらず
    わずかに浮いていた

    そして
    爪先はいつの間にか
    植物の根のように、歪に変化し始めていた

    意思に反して、足が地面へと引きずり下ろされる
    根が、土の奥深くへと這い回る

    私の意識は途絶えた

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    ここは、どこだろう
    見渡す限りの、木、木、木。

    ――ああ、そうか

    すれ違うはずが、ないのだ
    だってみんな、もう動けないのだから

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    どれくらい固まっていただろうか
    記憶は薄れているが時々意識はあった

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    空が暗く見える
    夜になったのか
    私の目から見える景色が黒くなったのか

    しかし真っ暗ではない
    森の中なのはわかる

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    しばらくして何か眩しくなり目を開く

    虹だろうか
    七色の虹が見えた

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    外は暗いままだ

    しかし、私はその虹から目が離せなかった

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    ・
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    私はその虹をずっと見ていた

    どのくらい見ていたのかわからない

    しかし虹はいつの間にか消えてしまった

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    虹は消えたが、空が明るくなっていた

    朝だろうか
    いや、あの時の朝とは違う気がする

    緑の匂いがした気がした 

    私の目の前にあった葉っぱが目の前で伸びている
    それだけ日にちが経ったのだろうか

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    ふと、足が軽くなった気がした
    まだ歩けないが少し動く

    しかしそこまでだった
    突然頭が痛くなった

    そこで私の意識は途切れた

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    ・
    ・

    目が覚めたら朝になっていた

    足が軽い

    軽い?

    いや、飛んでいる?

    私は自分の体を確かめる

    周りに鏡はない

    しかし、隣に同じものがいたのがわかり、自分の身軽さも含め、わたしが何なのかを察した

    ・
    ・
    ・

    私は蝶になっていた
    そしてひとつだけ思い出したことがある

    私はかつて、人間だった
    車にぶつかり、そのまま意識がなくなった

    遠のく意識の中、一度でいい
    妻に会いたい思った

    蝶になった姿で彷徨い続けた

    ひたすら探し続けた

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    ・
    ・

    どのくらい経ったのだろう
    私の知っている景色がそこにあった

    家を見つけた
    家の中を窓から覗くと妻がいた

    少し老けただろうか
    それでも私には妻だと分かった

    ずっとそこにいたせいか、
    妻が窓を開けた

    「あら、黄色い蝶々さん」

    「綺麗ねぇ」

    妻は指を出し私はそこにとまった

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    「なぜか落ち着くわ」

    妻は私ではなく、遠くを見つめながら言葉を紡いだ

    「あの人がいなくなってしまって、もう10年経つの」

    「あの人は巻き込まれてしまったの」

    「私が買い物を頼まなければ、生きていたかもしれなかった」

    「後悔だけが残って、生きていることに疲れてしまったの」

    「でも娘が一緒に住みたいと言ってくれて、助けられたわ。孫のかなちゃんが大きくなって来たから、今は離れて暮らしてるけど」

    「それでも、今もかなちゃんを連れて、よく遊びに来てくれるのよ」

    「幸せだわ。生きてて良かった」

    と妻が言った
    そう言いつつも少し寂しそうに見えた

    でも私はその言葉がとても嬉しかった

    良かった
    妻に会えて良かった

    最後まで幸せに生きてほしい

    ありがとう
    私のことを覚えていてくれて

    本当にありがとう

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