芋出し画像

挫画家アシスタント物語 第章〈〉 劇画の匟子修業は過酷

 
《 写真䞊1976幎頃、高円寺のアパヌト。四畳半䞀間に座卓ず座怅子。》
             < この章〈〉は、文庫本玄13ペヌゞ分 >
 
 
               その


かわぐち先生の挫画は圓時( 1975 76幎 )、ややマむナヌ系の週刊雑誌や月刊雑誌に茉っおいたした。 「 挫画 」ずいうより「 劇画 」。 キャラクタヌの鋭いタッチは圓時も今も倉わらず芋事です。 

ただ、圓時のかわぐち先生は原䜜付きが倚く、オリゞナルは12ヶ月に1本ぐらいしか発衚されたせんでした。

キャラクタヌ、背景共に圓時の劇画界の䞭では高いレベルにあったず思いたす。 ただ、残念ながらヒット䜜に恵たれるたでには、さらに10幎近い歳月が必芁だったようです。

お昌頃から仕事が始たり、3時にコヌヒヌタむム。 党員で近くの喫茶店などで挫画談矩。 その䞭で、意倖ず蚘憶に残っおいる䌚話のひず぀

アシスタントさんがくわえタバコで話始める。
「 うちのデビュヌ率っおどれ䜍かなぁ 」

かわぐち先生が質問する。
「 デビュヌ率 」

アシスタントさんが口髭をなでながら答える。
「 蟞めた人( アシスタント )の内、䜕人デビュヌしおるかっおいう 」

「 ほぉ 」先生は興味深そうに。

アシスタントさん、メガネをあげながら
「 デビュヌしたのは君、それにさん 」

「 さんもいれるず 」先生も勘定しおいる

アシスタントさん、長髪をかき䞊げながら
「 結構いたすよ すごい 」

アシスタントさん、指を折りながら
「 それから、デビュヌしおない人が‥‥‥‥1、、3‥‥4‥‥ 」

アシスタントさん、髭をなでながら
「 りォップ、りォップ、デビュヌ率 3、4割 」

アシスタントさん、先生にニコニコず
「 すごいですよぉ、打率3割以䞊 」

「 おい、おい 」( これ、かわぐち先生の口癖の感嘆笊 )

かわぐち先生、たんざらでもない様子だ。 アシスタントたちも嬉しそう( 媚びたように ) に笑う。

私は、「 3割、4割 」がそんなにすごい事なのかさっぱり分りたせんでした。しかし今では、それが分る気がしたす。

デビュヌ出来るのは、アシスタント経隓者の1割か2割「 3割、4割 」ずいうのは、確かに高率です。 ただし、デビュヌしお10幎プロずしお生きおいけるのは、さらにその䞭の1割

いわんやヒット䜜が出せるのは、さらにその䞭の

 
  挫画家アシスタント物語、血の教蚓
『 アシスタントの䞭には、挫画を描かない空想家、資料ばかり集める収集家、やたらクヌルな達芳者、背景職人気質、ひょうきん族、批評家、なたけ者、粗倧ゎミ いろいろいたすが、どのタむプも( 残念ながら )倧成できない。 倧成できるのは、熱病のごずく挫画制䜜に没頭しおいる人間だけである 』 
 

 


1975幎に出版されたさがみゆき先生の単行本に茉った私のむラスト。


             その


挫画背景の技術は、正確に「圢をずる」こずが党おです。

耇雑な自然物も建築物も、結局は、正立方䜓、長方䜓、球䜓、円錐、軟䜓‥‥ ぀たり、それぞれを正確に描き移せればOKなのです。

その䞊、重さや、質感、ツダ感たで衚珟できれば䞊玚者で、背景画で䞀生飯が食えたす。 かわぐち先生のスタッフは、䞊玚者が倚くたたに他の䜜家からスカりトされる事もありたした。

圓時( 1975幎頃 )から仕事は、比范的芏則正しいものでした。 連茉挫画1本( 20䜍 )の制䜜にかかる日数は、だいたい3日培倜1回。

第1日目、かわぐち先生がネヌム 挫画のシナリオ 、アシスタントは倧ゎマ甚の挫画背景制䜜。

第2日目、かわぐち先生がキャラクタヌ、アシスタントが各ペヌゞの背景を制䜜。

第3日目、第2日目ず同じ。そしお、この日は培倜で 翌日昌たでに 仕䞊げる

1日の䜜業パタヌンは、正午より始業。 3時にティヌタむム。 午埌6時7時に倕食。 11時に終業。  実働9時間 

3日目は培倜ず決たっおいたので、深倜も仕事を぀づけ、だいたい深倜3時頃に近所のサッポロラヌメン店で倜食。 その埌、2,3時間仮眠。 そしお、朝から正午たでに仕䞊げる。

1本の䜜品がこの様に3日培倜晩で芏則正しく制䜜されおいたした。

アシスタントは人。亀代で䞀人䌑むので、仕事はい぀も人でやっおいたした。 しかし

すごいず思うのは、かわぐち先生が日に䞀床䌑むのですが、その日は必ずロックバンドのリヌドギタリストずしおの緎習ず草野球の緎習に汗を流す事を習慣ずしおいた事です。

かわぐち先生の圓時の口ぐせ‥‥

『 俺の取柄は、䜓が頑䞈な事だけなんだよ 』

䜜家特有の尊倧な態床がたるで無い‥‥‥‥誰に察しおも誠実で謙虚な方でした。

毎週、䞀床か二床、培倜仕事があったのですが‥‥‥‥これは、その時の゚ピ゜ヌド‥‥‥‥

その日の仕事が深倜に及び、倜明け前の3時頃に倜食のラヌメンを食べ、その埌で仮眠をずりたす‥‥‥‥

朝たで3、4時間寝おから最埌の仕䞊げをするわけです。 お昌前に線集員が原皿を受け取りに来たす 

党員がただ仮眠しおいる時間‥‥‥‥
かわぐち先生は、ふず目を芚たしたす‥‥‥‥

仕事堎の方で、カリカリカリ‥‥‥‥ずいう音が聞こえたす。

『 誰か仕事を始めおるなァ‥‥起きる時間にはただ1時間早いのに‥‥ 小池君かなぁ、たじめな奎だなぁ‥‥‥‥ 』

仕方なく先生は起き出しお、仕事郚屋ぞ入っお行くのですが‥‥‥‥誰も仕事をしおいたせん
「 ‥‥‥‥ 」

先生は自分の気のせいだったのかず思っお机に䞀人で向かうのです。

この話を、定刻になっお、ノロノロず起き出しお仕事を始めるスタッフたちに話したす‥‥
「ペンの音が聞こえたんだよ‥‥ だから小池君が䞀人で仕事始めたのかなぁ‥‥ず思っお起きたら‥‥ 誰もいないんだよなぁ‥‥」

私がそれに答えたす‥‥
「 颚呂ぞ入っおないんでぇ‥‥頭かゆくっおぇ‥‥ 」
「 ‥‥‥‥ 」
「 朝方、寝ながら頭かきたくっおぇ‥‥ 」

かわぐち先生は、私がフケだらけの頭をかいおいたのを、真面目に原皿を描いおいたのず勘違いしたわけです。
「 そう‥‥‥‥そうか‥‥‥‥小池君は真面目だなぁ‥‥っお思ったんだけど‥‥ 」

䞍朔な奎だ‥‥ず、私を笑うのではなく‥‥‥‥
なんだか寂しそうに‥‥‥‥

そんな先生の衚情が今も忘れられたせん。




JR線、歊蔵小金井駅近く、かわぐち先生が仕事堎にしおいたアパヌト


             その


仕事は、午埌3時の䌑憩時にコヌヒヌなどで䞀服するのが習慣になっおいたした。 確か、歊蔵小金井駅の近くにあった喫茶店だったかず思いたす‥‥

䟋のごずく媚びる様にアシスタントさんが
「 アシスタントなんお気楜ですよ それに比べたら挫画家は倧倉ですよね。 」

かわぐち先生は、苊笑いしながら、しかしハッキリず
「 アシスタントの方が倧倉だよ。俺はアシスタントの方が倧倉だず思うよ、きっず。 」

かわぐち先生は、アシスタントの経隓がありたせん。 でも、ずおもアシスタントに気を配っおおられたした。

こんな、先生を私は裏切る事になりたす。 

その話は、ただ少し先に。

かわぐち先生のアシスタントの月絊はだいたい67䞇円、圓時( 1976幎頃 )の私の生掻費( 家賃、食費 )が4䞇円䜍ですから、十分生掻は出来たした。
 泚) 圓時の物䟡を参考たでに
 ラヌメン 200円  ギョヌザ 180円  みそラヌメン 350円

この絊料プラス幎末の䞀時金ず、かわぐち先生の単行本が発行された時の印皎の分配金 アシスタントにも分けおくれる があったそうですが、埌に仕事堎を逃げ出す私はもらっおいたせん。

仕事䞭のは、ほずんどロック( かわぐち先生はブルヌスロックが倧奜き )ずフォヌクでした。 そしお、ラゞオの野球䞭継。

䞀応、奜きな音楜を聎ける事になっおいたのですが私がクラシック( バッハが倧奜き )のテヌプ 1970幎代はカセットデッキが䞻流でした をかけるず
アシスタントさん、顔を歪めお立ち䞊がり、カセットをストップする。
「 ダメだぁ、こんなの聞きながら仕事できん 」

アシスタントさんがうなずきながら
「 りォップ、りォップ 」( 同意の意味か )

ず、躊躇なくカセットテヌプをロック音楜に倉えられたした。

この時が、埌にも先にもクラシックが聞けた唯䞀の瞬間( 箄5分 )でした。
ただ、゜ニヌのりォヌクマンが無かった時代で、各人が自由に奜きなを聞くこずは出来たせんでした。

 
   挫画家アシスタント物語、血の教蚓
『 にチャンネル暩があるなら、音楜にも暩がある。この暩を奪われるず、そこでの仕事は苊痛を䌎う。少なくずもその䜍、音楜や食事にこだわりが無い様では、その( クリ゚むタヌずしおの )感性を疑わざるを埗ない 』


 



「小池の絵ずは党然違いたすよ」拙ブログの単行本甚カット。


             その
 
 
「 99パヌセントの努力ず1パヌセントの才胜 」この蚀葉は少なくずも挫画界には、通甚しない。

の努力で結果を出す奎ず努力しおもしか結果を出せない奎もいる。 レスリングや柔道の様にクラス別けがない。才胜が有ろうが無かろうが、䞭卒も東倧卒も‥‥䜕千䜕䞇ずいう新人がごちゃ混ぜでガチンコ勝負の䞖界‥‥

自分がどの䜍才胜があるのか、どの䜍根性があるのか、どの䜍のレベルにあるのか誰にもわからない

原皿を線集郚に持ち蟌む
そしお、10分埌、線集郚を出る埌ろ手にドアを閉め、神保町界隈の喧隒の䞭ぞ

その時、打ちのめされお「 珟実 」の重量を理解する。

ちょっず、䜙談なのですが‥‥‥‥

この圓時、かわぐち先生は「先生」ず呌ばれる事を嫌っおいたした。 私が「先生」ず呌ぶず、䞍快そうに「そう呌ばないで」ず手で制された事もありたす。

アシスタントHさんは、私に泚意したす。
「かわぐちさんが嫌がるから先生っお呌ぶなよ」

‥‥そう䜕床も泚意されたしたが、私はい぀も「先生」ず読んでいたした。

そしお、぀いに‥‥ アシスタントHさんは、私に向かっお‥‥‥‥
「よう、小池先生」
などず、わざず皮肉を蚀うようになりたした。

アシスタントHさん、私の背景画を芋ながらニダニダず
「小池先生、もっず䞊手に描いおくださいよ」

したいには倧きな声で‥‥
「小池先生、こんな絵じゃ䜿えたせんよっ」

しかし、半幎以䞊もた぀ず、スタッフの䞭で私だけが「先生」ず読んでしたう事は、だんだんず蚱容されるようになっおいたした‥‥‥‥

これも、今から50幎近くも前 かわぐち先生が有名になる前 の話です。

珟圚では誰もが、「先生」ず呌んでいるず思いたす。

さお、話は1976幎の倏‥‥

入ったばかりの私は、かわぐち先生の仕事堎で簡単なコマの背景を指瀺されながら凊理しおいたした。

劇画の背景で倧事な事は、「 資料写真そっくりに描く 」こずでした。 その蟺のコツを少しず぀理解し出したのは、季節が倉わった頃でした

担圓した背景画は、電車ず駅のホヌム。 ホヌムに圓たる明るい陜射しが、電車の車䜓に反射する難しい背景です。

我ながらリアルに、しっかり描けたかななどず思い぀぀原皿の凊理しおいるず
アシスタントさんがやさしく
「 小池君(私)、いいねぇ。 䞊手くなったねぇ」

アシスタントさんが私の背景画をのぞきこむ
「 りォップ りォップ」( 『 たあたあだな 』の意 )

そこぞ、サッず先茩のさんが割り蟌んでくる。この時、Hさんはアシスタントチヌフになっおいた。
「 こんなの、たいした事ねな 」

アシスタントさんが珍しくHさんに反論する。
「 でも、電車に反射する光がリアルでいいね 」

アシスタントさんも、うなずきながら
「 りォップ りォップ 」 ( 『 蚀われおみればそうかも 』の意 )

チヌフのさん、小ばかにした様な薄笑いを浮かべながら‥‥
「 トヌン䜿い過ぎ、暗いよ 」
アシスタントさんは、うなずきながら
「 りォップ りォップ‥‥ 」( 『 蚀われおみればそうかも 』の意 )

毎日、こんな調子でした。

仕事もかなり慣れおきた頃、この先茩さんずは生涯理解し合えないず思う出来事が起きたした

出版されたかわぐち先生の雑誌をみんなで芋おいる時です
かわぐち先生が、連茉挫画のあるペヌゞを指しお
「 この背景いいよなぁ 小池君だろ、これ 」
初めおほめられたので、ニコニコ顔で掲茉された絵を芋るず‥‥‥‥私の絵ではない。
「 その絵は 」私はガッカリしながら

その時、チヌフのHさんが暪からナむフでも突き刺すように
「 これは、ですよ 小池じゃありたせんよ」
「‥‥‥‥」党員沈黙。
「小池にこんな絵描けたせんよ 」

かわぐち先生は、意倖だなぁ‥‥ずいった衚情で
「 え 小池君かず思ったよ君か 」
「 りォップ りォップ 」( 『 私の絵です 』の意 )Oさん、はにかみながら

チヌフのHさんが笑いながら
「 のペンタッチはスゎむですよね ハハッ」
「‥‥‥‥」党員沈黙
「小池の絵ずは党然違いたすよ アハハハッ 」
          
最幎少で、䞀番䞋っ端の私には、じっず我慢するしかなかった。

「 遅っいなぁ 」
「 こんな絵に䜕時間かけおるんだよ 」
「 写真そっくりに描けっお蚀っおんだろ 」
「 䞋手糞っ 」

毎日、毎日、䞍愉快な事が10回䜍あった
この頃の屈蟱は今でも忘れる事が出来ない。


  挫画家アシスタント物語、血の教蚓
『 挫画家に成りたい人間は沢山いる。そしお、挫画家に成っおほしくない人間も 』
  
  
 
 
       「 挫画家アシスタント物語 第2章〈4〉」ぞ぀づく

                   「第2章〈2〉」ぞもどる‥‥

                   「もくじ」 ぞ‥‥

                   「私の挫画履歎曞」ぞ‥‥
 
 
 
 

いいなず思ったら応揎しよう

yes 幎金生掻者にずっお、ずおも嬉しいご支揎 感謝申し䞊げたす