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Photo byinagakijunya

胸ぐらをつかまれた日



    小学生だった。

    転校生が来た。

    わたしたちは、
    周りに流されるように、
    その子をからかった。

    悪いことをしている。

    そんな自覚は、
    なかった。

    ある日。

    彼は、
    わたしたちの
    リーダー的な存在の子と
    仲良くなった。

    突然だった。

    わたしは、
    胸ぐらをつかまれた。

    何も言われなかった。

    わたしも、
    「どうしたん?」
    と聞くことしか
    できなかった。

    時間にすれば、
    ほんの数秒。

    でも、
    隣に立つ彼の目だけは、
    今も忘れられない。

    謝ることもなく、
    その出来事は
    過ぎていった。

    やがて、
    部活を理由に、
    遊びを断ることが増えた。

    あれが理由だったのか。

    それとも、
    もっと前から
    わたしは彼を
    軽く見ていたのか。

    今もわからない。

    ただ、
    あの日を境に、

    人を不愉快に
    させること。

    人に嫌われること。

    それが、
    怖くなった。

    断る前に、
    言葉を選ぶ。

    相手の表情を
    気にする。

    必要以上に
    謝ってしまう。

    そんな癖が、
    いつの間にか
    身についていた。

    五十代になった今でも、
    あの日を思い出す。

    上司にも、
    同僚にも、
    家族にも。

    嫌われたくない。

    その気持ちは、
    今のわたしの中にも
    残っている。

    四十代後半。

    書店で、
    『嫌われる勇気』を見かけた。

    そのタイトルを、
    長い間、
    受け入れられなかった。

    でも今は、
    少しだけ
    立ち止まれる。

    あの日、
    胸ぐらをつかまれた
    小学生が、

    まだ、
    わたしの中に
    いるからだ。

     
     
    毎日note|借金629万|50代会社員管理職 支払い。 家族。 会社。 やめられなかった人間の 再建記録。

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