
魚
「ジェットコースターまた一緒に乗ろうね」
そう約束したあの子を待って早数時間、いつもやってくる彼女は
乗り場に現れなかった。
「どうしようね?」
「先に乗っちゃうのも悪いしね」
友人と2人、乗り場の前で彼女を待っている
私の手には20㎝ぐらいの魚が一匹。
内臓は取ってあり、下処理されて切れ目が入っている。
その魚のエラに指をいれながら彼女を待っていた。
「来ないね」
「仕方ないからから迎えに行く?」
あの異形運転手が動かしている車にのり
ヒラヒラしたピンクのフリル付きのワンピースを着た彼女が
いつもならやってくる時間。
直接聞いた事は無いが運転手付きの車に乗るのだから、大層裕福な家のお嬢様に違いない、と思っていた。まだ知り合ったばかりなのだから家の事を聞き出すなんて野暮だ。
しかし待てども彼女はやってこない。しびれを切らせて友人が
「迎えに行こう」
と切り出した。
アトラクションを離れ、一本道の緩やかな坂で車を探す。
そこに異形運転手はいた。
「どちらまで?」
「彼女の家まで。」
バタン、とドアが閉まり彼女の家へ進んでいく…、はずだったがいつまで経っても家に着かない。おかしいなと思った、どうやら異形運転手家に彼女の家に私達を行かせたくなさそうだった。
何か事情があるんだろうか?解らないけれど仕方なく
「戻ってください」
と伝える。
結局アトラクションまで戻る事になった、が、かなり手前で下ろされてしまった。手にはあの魚をずっと持ったまま。
「私は魚なんて食べられないのにな…」
来なかった彼女のことを想いながら、私たちはアトラクションへの道を2人で戻っていった。