
3つの絆創膏と、大の男の愛おしい嘘
先日、コンペがあった。
朝イチのカート。一緒にまわる初対面の男が、挨拶もそこそこにこう切り出した。
「いやあ、最近全然ゴルフしてなくて。今日はクラブ久しぶりに振るんで、ご迷惑おかけすると思います」
これまで何百回と聞かされてきた、アマチュアゴルファーの定型文である。
嘘だ。
男の左手には、真新しい絆創膏がふたつ。右手にもひとつ。手の皮がズル剥けになるまで猛特訓してきた何よりの証拠がそこにあった。
もちろん、私は気づかないふりをした。
「お互い、気楽に楽しく行きましょう」
そう短く返し、カートをスタートホールへ走らせる。
いい歳をした大人である。年齢や醸し出す雰囲気からして、おそらく普段は立派な肩書きを持ち、会社では何十人もの部下を束ねているような男だろう。
大人はそう簡単に嘘をつかない。「テスト勉強、全然やってないよ」と友人に見え透いた予防線を張るのは中学生までだ。社会に出れば、くだらない虚勢が命取りになることを知っているからだ。誰もが本音と建前を巧みに使い分け、賢く生きている。
それなのに、ことゴルフ場においてだけは、男たちは平然と嘘をつく。「死ぬほど練習したのにポンコツだったらダサい」。ただそれだけの、中学生から何一つ成長していないプライドが復活し、必死で予防線を張るのだ。
なんて情けなくて、愛おしい生き物なのだろう。
大人の鎧を引っぱがし、いい歳をした男にすぐバレる嘘をつかせる。これほどまでに人間の見栄と自尊心を丸裸にしてしまうスポーツを、私は他に知らない。
緑の芝の上では、誰もが自意識を持て余した少年に戻る。
やっぱりゴルフは、どうしようもなく魅力的だ。