メインコンテンツへスキップ
見出し画像

初めてのコースデビュー

    あの日のティーグラウンド。

    心配していたのは、スコアじゃなかった。
    身体が、ついてこられるか――それが一番怖かった。

    私は以前、TBSの番組『夢の扉+』に出演させていただきました。
    歩行支援機「ACSIVE(アクシブ)」のユーザーとして、日常生活・仕事の様子やゴルフの打ちっぱなし練習を取り上げていただきました。

    その放送の中で、私はこう語っています。
    「障害者ゴルフ大会に出場することが、目標です」

    とはいえ、当時の私の足元はまだ不安定でした。
    クラブを握れるとわかったのも、
    あくまで入院中の病院の体育館の中でのこと。

    「外で、コースで、18ホールを回る」なんて――
    正直、想像すらしていませんでした。


    きっかけは、DGAを知ったこと

    そんな私は、DGA(日本障害者ゴルフ協会)を知りました。
    カートの乗り入れや、さまざまなサポートがあることを知り、
    「出てみよう」と、参加を決意します。

    知り合いもいない。手伝ってくれる人もいない。
    それでも――自分ひとりで。

    あの日の自分に、勇気があったのか。
    それとも、ただの無謀だったのか。
    それは、今もわかりません。

    ただ──
    ゴルフがしたい。
    その想いだけでした。

    あのときの自分には、
    ゴルフクラブを振れたことだけが、
    “未来”の手がかりに思えたんです。


    ティーグラウンドに立った瞬間

    いよいよ迎えた、人生初のコースデビュー。

    クラブを手に、ティーグラウンドに立つ。
    でも、開催地までの移動だけで――
    体力は、ほとんど残っていませんでした。

    ティーアップするのも、ままならない。
    ゴルフどころじゃない。
    立っているだけで、精一杯。

    「打ち損じたらどうしよう」
    いや、それ以前に――
    **「振れるのか?」「当たるのか?」**という不安しかなかった。


    この一打だけは、しっかりと打ちたい――

    そう願いながら、深く息を吸い、思いを巡らせて、
    体中の神経と呼吸を合わせるように、とにかく、振った。

    当たった。前に飛んだ。
    まっすぐじゃない。でも――ちゃんと、飛んだ。
    自分でも驚くくらいに、飛んだ。

    その直後、誰かが言ってくれた。

    「ナイスショット!」

    その一言が、たまらなく嬉しかった。
    思わず、涙が出そうになった。

    でも、ここで終わりじゃない。


    修羅の一打

    私にとっての“修羅の一打”。
    その、第一打でした。

    スイングも、歩き方も、ぎこちないかもしれない。
    誰にもわかってもらえない、身体のつらさもある。
    アスリートと呼べるほどのトレーニングも、できてはいない。
    できはしない。

    それでも、大会に出場し、狙って、振って、悔しがった。
    その姿に、“ゴルファー”以外の名前なんてなかった。

    そして、私は――
    五体チョイ不満足ゴルファーUになった。


    最初の一打は、人生を変えた

    あの日のティーショットに込めた想いは、
    スコアには残らない一打だったかもしれません。
    でも、人生のスコアカードには、きっと──デカすぎる一打だったと思う。

    「できるかも」という小さな火種を、
    消さずに持ち続けていた自分へ。

    そして、こんな場所まで来られたのは――
    私を支えてくれた、大切な人たちのおかげです。

    歩行支援機ACSIVEを見つけたこと。
    DGAという協会があったこと。
    テレビがくれた、あの日の勇気。

    すべてに、心から感謝しています。

    非力でもかまわない。心だけは、今日もオーバードライブ。

    五体チョイ不満足ゴルファーU


    🎯 次回予告

    • 🧍‍♂️ 「健常者に“勝ちたい”と思った瞬間」

    • 🧠「“五体満足”への執着を手放した日」

    • 🗣️「本音で話せる相手がひとりいたから、ここまで来られた話」


     
     
     
    結婚式を半年後に控えた27歳で事故に遭い、 身体の自由を失いました。 それでも私は、 「人生はナイスショットより挽回ショット」 だと思っています。 障害、再起、ゴルフを通して、「普通」や「前提」を静かに問い直しています。

    あなたへのおすすめ