『自信がないのは、あなただけじゃない。 ~自己分析で強みに気づき自信を育てる~』第1章・無料全文公開
2026年9月26日発売の書籍『自信がないのは、あなただけじゃない。 ~自己分析で強みに気づき自信を育てる~』から、第1章「自信をもつための土台づくり」を全文公開!
なぜ自信をもてないのか
あなたは自分に自信がありますか?
おそらく「自信がない」から、この本を手に取っていただいたと思いますので、この質問は愚問かもしれません。
私はキャリアコンサルタントとして、15年間で延べ3万人の相談を受けてきました。特に学生からの相談で多いのは、「自分の強みがわからない」というものです。自分の強みがわからないと、「自分にはいいところがない」「人より優れているところがない」と感じ、自信をもてず、就職活動に踏み出せない学生をたくさん見てきました。
企業研修の講師として社会人の方と関わるなかでは、「まだまだできないことのほうが多い」「もっとスキルアップしなければいけない」と感じ、いまの自分の仕事に自信をもてない人たちの声をよく聞きます。
「もっと自信をもって仕事をしたい」「自分の判断に確信がもてない」などと感じているのは、若い世代だけではありません。
近年では、管理職になりたがらない人が増えている傾向があります。
パーソル総合研究所の「働く10,000人の就業・成長定点調査2023」によると、「管理職になりたい」と前向きに回答した人は約2割にとどまりました。一方で、約半数は「管理職になりたくない」と回答し、約3割は「どちらとも言えない」でした。つまり、管理職を積極的に目指したいと考える人は少数派であり、多くの人がマネジメントという役割に慎重な姿勢を示しているのが、現在の日本企業の実情です。主な理由として、「責任が重い」「仕事量が増える」「自分は向いていない」といった点が挙げられていました。特に「自分は向いていない」という回答は、自己評価の低さや自信の欠如を示唆しており、管理職への昇進に対する心理的なハードルとなっていることがうかがえます。
このように、新社会人だけでなく、経験を重ねた中高年層のなかにも、意外と「自信がない」と感じている人が多くいるのです。
では、なぜ多くの人が自分に対する確かな信頼をもてないのでしょうか。
自信をもてない多くの人がもっている「自信のある人のイメージ」は、堂々としていて自信満々、エネルギッシュな人物を思い描くのではないでしょうか?
そのような「すごく堂々としている」状態を「自信がある」と設定しているから、自ずと「自分には自信がない」と考えてしまっているのです。しかし、これはあくまでも「自信にあふれている」「自信がたくさんある」という状態であり、「自信をもっている」という意味とは少し異なります。
前提として、自信とは「自分の価値や能力を信じる感覚」のことです。自信がある人は、すべてをうまくやれると盲目的に信じているわけではありません。うまくいかないことがあっても、「自分ならなんとかなる」「乗り越える力がある」と感じられることが自信の本質です。
しかし現実には、「自信がないから意見が言えない」「失敗したらどうしようと思って動けない」といった悩みが世代を超えて広がっています。
20〜30代の特に若手社員は、「指示がないと動けない」「正解がない仕事が苦手」と感じやすく、40代以降では、「時代についていけない」「若手や同期と比べると劣っていると思う」「これからのキャリアは、このままでいいのだろうか?」と自分の立ち位置に不安を抱えがちです。
このような「自信のなさ」の根底にあるのは、自己理解の不足です。自分の価値観、強みや弱み、これまでの成功や失敗体験が整理されていないと、「私はこれでいいのか?」と疑問が常につきまといます。
自分の評価を他人の目に委ねてしまうと、ちょっとした言葉や態度で心が大きく揺れてしまうのです。日本社会には「謙遜が美徳」「出る杭は打たれる」といった文化的な背景もあります。自信を表に出すことが「調子に乗っている」と見なされる場面もあり、堂々と自分を認めることに躊躇を感じる人も多いのです。
自信をもてないのは、個人の能力不足ではありません。自分を深く理解し、信じる機会が少ないまま成長してきたこと。そして、自信を表に出すこと自体がはばかられるという文化的な抑圧。これらが複雑に絡み合い、多くの人が「自信をもつ」感覚を知らないまま社会に出ているのです。
社会が生んだ「自信のなさ」
自信とは、特別な能力をもった人にだけ備わるものではありません。なかには「根拠のない自信」をもっている人もいるかもしれませんが、自信がつく背景には「自分の経験」が必ずあります。まったくやったことがないことに対しても、過去に似たようなことを経験していたことから「できるかもしれない」と思ったことがある方もいるでしょう。
少し想像してみてください。私たちが赤ちゃんの頃、「自分には自信がないから立ち上がるのはやめておこう」と考えたでしょうか。もちろん「自分なら歩けるはずだ」と確固たる自信をもっていたわけでもありませんが、ただ目の前のことに興味をもち、何度もトライしていたのではないでしょうか。
何度も転んでうまくいかなくても、「自分はダメだ」と落ち込むことなく(癇癪を起こして泣くことはあったかもしれませんが)、繰り返し試し続けることで、できることを少しずつ増やしてきたはずです。
「結果を恐れずに行動し、失敗しても修正しながら経験を積んでいく」プロセスこそが、本来の私たちがもっていた自然な姿であり、自信を育てるために必要な条件なのです。
では、誰もが赤ちゃんの頃にはできていたはずのトライ&エラーが、なぜ大人になるにつれてできなくなり、こうした「自信の欠如」がここまで広がっているのでしょうか。
その背景を紐解くカギが、私たちが受けてきた教育や社会の在り方にあります。
自信をもてない感覚は、個人の問題ではなく、教育や社会環境によって育まれた時代の産物でもあります。特に日本では、学校教育の在り方や社会の価値観が、自己肯定感の低さや過度な失敗回避志向を助長してきました。
多くの人が子ども時代から経験してきたのは、「正解を出すことが正しい」という学習スタイルでした。テストで間違えないこと、空気を読んで適切に振る舞うこと、他人と同じように行動すること。こうした評価軸のなかで育ってきた人は、自分なりの意見を表現することや、未知の状況で判断することに強い不安を覚えます。
1980年代以降の「偏差値教育」で育ってきた40代以降の人たちは、管理的な教育のなかで先生や親が提示する枠組みに従うことが「正解」であり、自分の頭で考えることよりも、期待される役割を演じる力が求められてきた世代です。
2000年代の「ゆとり教育」では、「一人ひとり違っていい」「自分らしさが大切」といわれながらも、実際には進学や就職、職場での評価の場面では失敗しないこと、期待に沿うことを求められています。表向きには個性が尊重されているように見えても、現実には間違えない選択や無難な判断が安心につながる環境のなかで育っており、自由に選んでよいといわれるほど、自分で決める責任や不安も大きくなります。その結果、「自分らしさ」を発揮する前に、外さない答えや、周囲から認められる答えを、まずは探そうとすることが強くなる傾向があるのです。
その後は教育が単なる知識習得から、思考力や判断力、表現力、さらに主体性や対話性まで重視する方向へ変化し、知識の正解から、評価される方法の正解を探すようになっていきました。
デジタル環境や社会の不確実性も重なり、「まず調べて最短で正解を見つける」「失敗コストを避けて確実な方法を選択する」傾向も強くなっています。
このような教育の影響は、社会に出てからも続きます。企業では上司の期待に応えることが最優先とされ、「自分で考えて動く」よりも「正しく従う」ことが重視されがちでした。その結果、自己決定経験が乏しくなり、「自分で選び、自分で動く」ことへの自信が育ちにくくなってしまったのです。
自信のなさが生み出す「視野の狭さ」
「自信のなさ」がもたらす深刻な弊害のひとつに、「視野の狭さ」があります。
人は、自信をもてないと、無意識のうちに「自分ができるのはここまで」「きっとこれはうまくいかない」などと考えて自分の上限を低く設定することで、視野を狭めてしまいます。その結果、自分の可能性や選択肢を狭めてしまい、自ら袋小路へと迷い込んでしまうのです。
この現象が現れるのは、主にミドルエイジ(40代前後)と新卒の若者たちです。年齢も生きてきた背景も異なる両者ですが、どちらも「キャリアステージが大きく変わるタイミング」を迎えている、という共通点があります。
ミドルエイジは、人生の中盤に差し掛かり、後半の人生に向けて、これまでの歩みを振り返って立ち止まります。一方で新卒の若者は、学生から社会人という劇的な環境の変化に直面し、これからの未来に強い不安を抱いて立ち止まるのです。
■人生の後半戦を前に立ち止まるミドルエイジ
ではまず、人生の後半戦を前に葛藤するミドルエイジのケースから見ていきましょう。
この世代の悩みは、一般的に「中年の危機」、英語で「ミドルエイジクライシス(ミッドエイジクライシス)」とも呼ばれます。
ミドルエイジクライシスは、必ずしも若い頃に描いていた理想と現実とのギャップだけから生まれるものではありません。むしろ、これまでの仕事や家庭、目の前の役割に追われながら、前だけを見て必死に走り続けてきた人が、あるタイミングでふと立ち止まる時間を得たときに、自分の内側にあった悩みに気づくことがあります。
たとえば、子育てが少し落ち着いたとき。職場での役職や役割が変わったとき。若い頃のように、ただ成果を出すことや、目の前の責任を果たすことだけでは、自分を支えきれなくなってきたとき。
そのとき初めて、
「自分はこれまで、なんのためにがんばってきたのだろうか」
「いまの自分の在り方は、本当にこのままでいいのだろうか」
「人生の後半を、これからどのように生きていきたいのだろうか」
などといった問いが浮かび上がってきます。
つまりミドルエイジクライシスとは、単に過去の理想と現実の差に苦しむものではなく、これまでの自分の在り方を見つめ直し、人生後半の生き方や働き方を考えはじめる時期に起こる、内面的な揺らぎともいえます。
次のような思考が頭をよぎったことはありませんか?
「いまから転職しようにも、もう年齢的に遅い」
「若い人たちのほうが仕事が速いし、自分は時代に取り残されている」
「このまま会社にいても、大きく成長できる気がしない」
これらは一見すると、冷静に現実を見ているように感じられるかもしれません。たしかに、年齢を重ねれば、若い頃と同じような体力や勢いだけで勝負することは難しくなります。職場では若い世代が新しい知識や技術を身につけ、スピード感をもって成果を出しているように見えることもあるでしょう。
しかし、その見方がすべてではありません。
自信を失っているとき、無意識のうちに「自分にはもう無理だ」「自分ができるのはここまでだ」と、自分の可能性に上限をつけてしまいます。その上限がフィルターとなり、本来なら見えているはずの選択肢や可能性が見えにくくなってしまうのです。
転職市場には、40代だからこそもっている経験や顧客対応力、トラブル対応力を求める企業もあります。
「営業しか経験がない」と思っている人も、見方を変えれば、あらゆるビジネスの基本である「顧客の課題を理解し、解決に向けて動く力」を磨いてきたともいえます。
また、若手のスピードや新しい知識にはない、経験を積んだからこそ得られる大局的な視点、相手の状況を読む力、失敗を未然に防ぐ判断力もあるでしょう。
成長のかたちも、役職が上がることや評価されることだけではありません。後輩を育てること、組織のなかで知見を受け継ぐこと、自分の経験を次の世代に還元することも、人生後半における大切な成長のひとつです。
そうした可能性が自信を失った目には映りにくくなります。
「自分にはもう価値がない」
「若い人たちには勝てない」
「いまさら何をしても遅い」
そう思い込むことで、自ら選択肢を狭めてしまうのです。視野が狭くなると、思考はさらに内向きになります。
「自分だけが損をしている」
「自分は正当に評価されていない」
「まわりは自分のことをわかってくれない」
このような考えに偏りやすくなり、職場の人間関係にも影響が出てきます。自分を守ろうとする気持ちが強くなるほど、周囲の言葉を素直に受け取れなくなり、孤立が深まってしまうこともあります。
私自身もかつて、理想と現実のギャップに追い詰められ、利己的な考え方に偏って孤立したり、無理を重ねて体を壊したりした経験がありました。
いま振り返ると、そのときの私は、まさに自信のなさによって視野が狭くなり、自分の可能性も、周囲の支えも、見えなくなっていたのだと思います。
ここまでお伝えしてきたように、ミドルエイジの悩みは、これまでの自分の在り方や人生後半の生き方を見つめ直すなかで生まれているのです。自信を失っていると、本来なら見えているはずの経験や強み、これからの可能性までもが見えにくくなってしまいます。
「自信のなさが視野を狭め、選択肢を閉ざしてしまう」という構造は、ミドルエイジだけに起こるものではありません。
むしろ、キャリアの入口に立つ新卒の若者たちにも、かたちを変えて同じような現象が見られます。ミドルエイジが人生後半を前に立ち止まるのに対し、新卒の若者は、学生から社会人へと移行する大きな変化の前で立ち止まります。
まだ社会人としての経験が少ないからこそ、「自分は働いていけるだろうか」「新しい環境に適応できるだろうか」「職場で必要とされる存在になれるだろうか」と不安を抱えやすくなるものです。
その不安が強くなると、挑戦や適応の機会を「成長の場」として見るよりも、「自分が傷つくかもしれない場」として捉えてしまいます。その結果、自分に合う環境、自分が安心できる人間関係、自分の価値観を揺さぶられない場所ばかりを求めるようになり、かえって視野が狭くなってしまうのです。
■環境の変化の前に立ち止まる新卒の若者
では次に、新卒の若者たちの間に見られる「自信のなさ」と「視野の狭さ」について見ていきましょう。
近年の新卒就職者の間では、「転職を前提に就職活動をする」という姿勢が珍しくなくなってきました。かつて「1つの会社に長く勤めること」が善とされていた時代とは大きく変わり、キャリアの柔軟性を重視する傾向が強まっているように見えます。
もちろん、キャリアアップや自己実現を意識しての転職志向もあるでしょう。しかし、その背景には、より消極的な理由、すなわち「合わなかったら辞めればいい」という「社会人として働く自信のなさ」が垣間見えるのです。
実際に、多くの学生が就職先を選ぶ際に重視するポイントとして、「自分に合うかどうか」「人間関係がよさそうか」といった、「働いてみなければわからない」主観的な基準を挙げています。企業の理念や業務内容よりも、雰囲気や人間関係といった不確定要素が意思決定の中心にあるのは、社会に対するある種の不安の表れともいえるでしょう。
「合わなかったら辞めればいい」という発想の裏には、新しい環境に適応できる自信のなさが透けて見えます。
具体的には、「未経験の業務に必要なスキルを身につけられる自信がない」「価値観が合わない人とうまくやっていける気がしない」「自分が職場で活躍できるとは思えない」といった自己不信が根底にあるのではないでしょうか。これは単なる能力不足ではなく、「新しい価値観に適応すること」自体への抵抗感を反映しています。
その背景には、自分の価値観が否定されることへの強い不安があります。他者と価値観が異なるのは自然なことですが、「合わない」と感じた瞬間に自己が揺らいでしまう若者は少なくありません。そのため、異質な価値観や考え方に触れることを避け、自分と似た人、自分が心地よくいられる環境だけを求めがちです。
このような視野の狭さは、結果として「自分に合う会社」「自分が働きやすい環境」を絶対視する、自己中心的な職場観にもつながります。
本来、仕事や組織には多様な価値観が内包されています。新たな価値観を知り、その違いを受け入れていくことは自分の視野を広げ、視座を上げる機会です。新たな仕事や慣れない環境のなかでは、大なり小なり多くの困難が日々訪れるでしょう。そのような困難を試行錯誤しながら乗り越えることが自分の「経験」となり、人間的な成長や社会的な適応力が育まれます。
しかし、経験の少なさから起きた失敗を「自分には合わない仕事だった」と感じ、自信のなさゆえに、その「乗り越え」を恐れ、早期の離職や転職を「逃げ場」として捉えてしまう構造が若年層に広がっているのです。
自信のなさが視野を狭め、視野の狭さがさらに自信を奪う。
このループは、特定の年代だけに起きるものではありません。自信を失いやすい状況に置かれたとき、人は誰でもこの構造にはまり込む可能性があります。
厄介なのは、ループのなかにいると、自分が狭い視野で物事を見ていることに気づきにくい点です。「これが現実だ」「自分にはもう無理だ」という思考が、事実のように感じられてしまうのです。
では、ループから抜け出すにはどうすればいいでしょうか。
「もっとがんばる」でも「気の持ちよう」でもなく、自信そのものを育てる土台が必要です。その土台となる考え方がレジリエンスです。次の節では、レジリエンスとは何か、そしてそれがどのように自信の回復につながるかをお伝えします。
自信をつける土台となる「レジリエンス」
自信を失うことで視野が狭くなり、さらに自信を失う。そのような負のループから自分を取り戻すために必要な考え方が「レジリエンス(resilience)」です。
もともとは工学や生態学の専門用語でした。工学では、物体が外から力を加えられても元の形に戻る「弾力性」を意味します。バネが押されても元に戻る、しなやかな竹が風に揺れながら折れない、そうしたイメージです。生態学では、森林が火災や洪水などの撹乱を受けても、時間をかけて回復し、元の生態系を取り戻す「回復力」を指します。どちらも共通しているのは、「外からの衝撃に対して、形を保ちながら戻ってくる力」という点です。
この概念が心理学の領域に取り入れられ、人間の回復力を表す言葉として広く使われるようになりました。アメリカ心理学会(APA)の定義によると、レジリエンスとは「逆境・トラウマ・悲劇・脅威・ストレスに直面したとき、うまく適応していくプロセス」とされています。
ここで注目したいのは、レジリエンスが「能力」ではなく、「プロセス」として定義されている点です。生まれつき強い人だけがもつ特別な資質ではなく、困難に直面しながら適応し、成長していく過程そのものを指しています。つまり、誰もがレジリエンスを発揮できる可能性をもっているのです。
では、レジリエンスと自信はどのような関係にあるでしょうか。
あらためて、子どもの頃を思い返してみてください。歩くことも、自転車に乗ることも、最初からうまくできた人はいません。何度転んでも「自分はダメだ」と落ち込むことなく、ただ繰り返し試し続ける。そのうちに少しずつできることが増え、気づけば当たり前にこなせるようになっていた。そのような経験が誰にでもあるはずです。
あの頃は、失敗を失敗として深刻に受け止めるよりも先に、次を試していました。自信の有無よりも、目の前のことへの興味や好奇心が行動を動かしていたのです。
「失敗しても修正しながら経験を積んでいく」プロセスこそが、自信の源になります。そのプロセスを支えているのがレジリエンスです。
大人になると、失敗が「自分の評価」に直結するように感じられ、試すこと自体をためらうようになります。しかし本来、経験を積むためには転んで立ち上がることを繰り返すことが必要です。レジリエンスはその過程で自分を修正し、前に進み続けるための力、つまり自信を育てる土台となるものです。
人生やキャリアには、何度も試練や挫折が訪れます。そのたびに心が折れてしまっては、長期的な成長や幸福にはつながりません。大切なのは、壁にぶつかっても、その都度自ら立ち上がることができるかどうか。その基盤をつくるのがレジリエンスです。
レジリエンスに対する誤解
レジリエンスは自信を育てる土台となる力です。その本質については、まだ十分に理解されていないことも多いようです。日々激しく変化していく不安定な時代のなかで注目されるようになった一方で、誤解されたイメージにより、「自分には向いていない」「自分には備わっていない力だ」と感じてしまう人もいます。
この節では、特に広まりやすい3つの誤解について整理してみます。
■誤解①「レジリエンスは生まれつきの才能」という思い込み
確かに、困難に直面してもへこたれずに行動できる人を見ると、「あの人はもともと強い人だから」と感じるかもしれません。私のまわりにも、育ってきた環境のなかで自己肯定感が高まり、「根拠のない自信」をもっている人も存在します。
心理学の研究では、レジリエンスは「後天的に身につけられる力」であることが明らかになっています。
「はじめに」でお伝えしたとおり、私自身ももともとはネガティブ思考でした。レジリエンス力の弱さから心身の不調を経験したことがありますが、現在では少々の困難に対しても「多分大丈夫」という気持ちをもてています。
レジリエンスは過去の失敗や挫折、葛藤といった経験を通して、「どうすれば立ち直れるか」「何を支えにすればいいか」といった「自分なりの回復方法」を学び、徐々に育っていく力です。訓練や意識的な行動によって、誰でも高められます。
■誤解②「レジリエンス=常にポジティブでいること」という捉え方
レジリエンスの高い人が前向きに見えるのは事実ですが、「無理に前向きなふりをしている」からではありません。実際のところ、彼ら彼女らも落ち込んだり、悩んだりします。
大切なのは、ネガティブな感情を無理に排除することではなく、それを認め、受け入れたうえでどう対処するかという姿勢です。安易に「大丈夫、大丈夫」と言い聞かせるのではなく、「いま、自分はつらい」「不安を感じている」と正直に向き合えることこそ、レジリエンスの一部です。
レジリエンス力のある人は、自分のネガティブな感情や困難な状況をきちんと受け止め、そのうえで「自分にできることは何か?」と冷静に対処しています。ポジティブ思考はレジリエンスの一部ではありますが、それがすべてではなく、むしろ「ネガティブな感情との向き合い方」がカギなのです。
■誤解③「レジリエンスはひとりでがんばって乗り越える力」という理解
「困難を乗り越える」と聞くと、「自分の力で(ひとりでがんばって)困難を克服する」と捉えがちではありませんか。私も以前は「ひとりでなんでもできる人、強くて仕事のできる人」に憧れている頃は、周囲の人に頼ることは「仕事ができない人の象徴」と思い込み、ひとりで仕事を抱えていました。
レジリエンスの観点では、むしろ「適切に他者に頼る力」も重要な構成要素です。支援を求める、相談する、共感してもらうといった行動は、決して弱さの表れではありません。自己理解が深いからこそ、自分の強みや弱みを知り、苦手な部分はまわりに働きかけて協力を得る巻き込み力のある人材として評価されるべきものです。
レジリエンスは「孤独に戦う強さ」ではなく、「つながりのなかで育まれる力」なのです。
このように、レジリエンスは決して「特別な人だけがもつ才能」でもなければ、「無理に明るく振る舞う力」でもなく、「自己完結する精神力」でもありません。
自分自身を理解し、周囲を頼りながら、自分なりに困難を乗り越える道筋をもつ「しなやかな強さ」なのです。
解決のカギとなる、自分を知る力
自信のなさに悩む人が増えている背景には、個人の性格だけでは語れない、教育や社会構造の影響が確かに存在しています。知らず知らずのうちに正解を出すことを意識して、他者の評価に敏感になり、「こうあるべき」という自分の考えをじっくり掘り下げる経験をもたないまま、社会に出てきた。そのようななかで、少しの失敗やすれ違いで「自分には無理かもしれない」と感じてしまうのは、自然なことかもしれません。
自信をもつことは、生まれもった資質ではなく、育てていける力です。ここまでお伝えしてきたように、その土台となるのがレジリエンスです。
レジリエンスを正しく育てるために、もうひとつ欠かせない要素があります。それが「自己理解」、本当の自分について知ることです。
レジリエンスは困難やストレスと向き合いながらも、柔軟に対応し、自分を立て直していく力です。その力は、自分の強みや特性をどれだけ把握しているかによって、大きく変わってきます。自分のことを深く知っている人ほど、その人ならではの「強み」が見えてくるからです。
職場でのミスや人間関係の衝突、思いどおりにいかない業務のなかでも、前向きに対応できる人がいます。前向きに考える人たちは、「この状況からの学びがある」と受け止め、「この困難を乗り越えるために必要な行動は何か」を考えています。こうした柔軟な思考と行動がレジリエンス力の高さの表れです。
ここで注目したいのが、レジリエンスが高い人ほど「自分の強み」を理解していることです。
自分について理解できているからこそ、自分を信じることができています。「自分は乗り越えられる」「失敗しても立ち直れる」「自分には一緒に解決できる仲間がいる」という前提で物事に向き合っているため、不安や恐れを抱えながらも行動に踏み出せます。「乗り越える経験」の積み重ねが結果として自己効力感や自己肯定感、つまり「本質的な自信」を育てる土台となるのです。
自分の価値観や感情のクセ、強みと弱みを知っていれば、状況に振り回されることなく、自分なりの道を選ぶことができます。「なんとかなる」という根拠のない楽観ではなく、「これまでの経験を踏まえれば、自分はこう動けるはずだ」という実感に基づいた自信です。
次章では、レジリエンスの土台を築く「自己理解」の重要性と、その深め方について具体的に探っていきます。自信のなさを責めるのではなく、自分を見つめ直す旅の第一歩として、ぜひ読み進めてください。
* * *
第1章はここまで!
続きを読みたい方は、各電子ストアにて2026年9月26日より随時発売になります。ぜひお買い求めください。
下記リンクはAmazonストアでの商品ページになります。書籍の詳細と目次もこちらからご覧になれます。
書籍『自信がないのは、あなただけじゃない。 ~自己分析で強みに気づき自信を育てる~』
■ペーパーバック版(紙)
■Kindle版(電子書籍)
■書籍情報
新しい自分になる必要はありません。
すでにある強みに気づけば、自信は静かに育ちはじめる。
「自信がなくて一歩踏み出せない」「今の仕事のままでいいのかモヤモヤする」などと悩んでいませんか?
自信は努力や性格で決まるものではありません。自信を失っている場合、それは"自信の定義"がずれているだけ。自信とは、すでにあなたの内側にある強みと価値観に気づくことです。
延べ3万人・15年のキャリア相談の現場に立つ著者も、かつては胃薬が手放せないほど「理想の自分」を演じていました。そんなどん底を救ったのが「自己理解」です。
本書は、無理なポジティブ思考ではなく、折れない心=レジリエンスの土台を実践ワークでつくります。
◎「自信がない」の正体は、能力不足ではなく"自己理解不足"
◎「ライフラインチャート」で、つらい経験を"あなたらしさ"に変える
◎強みは"まわり"が知っている。「他者視点」で才能を掘り起こす
◎「リフレーミング」で、弱みを静かに強みへ裏返す
読んで終わりにせず、価値観と強みを"自分の言葉"でつかむからこそ、明日からの一歩が変わります!
【目次】
第1章 自信をもつための土台づくり
第2章 自分を知ることが自信につながる
第3章 過去の自分と向き合う
第4章 まわりから見える自分を振り返る
第5章 自己分析を自信につなげる
【購入者限定特典】
ライフラインチャート ワークシート完全版(見本付き)
リフレーミングインタビューシート完全版(見本付き)
リフレーミングインタビュー補足説明書
【著者プロフィール】
笹井典子
キャリアウィーヴ合同会社 代表、国家資格キャリアコンサルタント
静岡生まれ。大学卒業後、フィットネス業界で人材育成や研修に携わり、「人が自分らしく力を発揮し続けるには何が必要か」という問いに関心を深め、キャリア支援分野へ転身。大学の就職支援や若手社員の育成に携わるなかで、「自己理解」が力を発揮する土台だと確信する。現在は企業研修講師/キャリアコンサルタントとして、延べ3万人・15年にわたり相談に向き合う。レジリエンス研修や女性活躍推進研修などを通じて、一人ひとりが自分の強みと価値観に気づく支援を続けている。
* * *
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