
森保監督よ、敗軍の将として兵を語れ ——萬年にわかのW杯観戦記——
まだまだ、連日熱戦が繰り広げられているけれど。日本代表のワールドカップが、終わったね。
1勝2分け、グループリーグ2位通過。そして、トーナメント1回戦、ベスト32で敗退。
歴代最強とか、目標は優勝とか、そういう煽り文句を、マスコミや僕らからだけでなく、チームからもわりと積極的に発信していたと思うけれど、この結果って、どうなんだろうね。
僕は、「マラドーナ! マラドーナ!! マラドーナ!!! マラドーナ!!!! マラドーナ!!!!!!」の絶叫解説をかすかに覚えていて(1986年の話ね)、その後、ドーハの悲劇、次の加茂監督更迭からのジョホールバルの歓喜。それくらいからリアルタイムで、4年ごとににわかサッカーファンになる、よくある中年日本人の典型、なのだけれど。
活字好きの僕は、同時に、ナンバーというスポーツ雑誌のサッカー(日本代表)特集号を、一時期よく読んでいたんだよね。特に、「戦略的加茂監督更迭論」とか、「断層」とか、その頃活きが良かった金子達仁の記事はよく読んでた。だから、『国民が厳しいプレッシャーをかけ続けなければ強くなれない』とか、『サッカーの強さは競技人口に比例する」とか、そういう主張を自分のサッカー観にすり込んで育ってきたんだよね。
そういう目で、今大会を見ると。
確かに、日本は強くなったよね。選手全員、日本でプレーしていた初めてのW杯から28年。今回は、長友とサブのGK二人以外は全員海外でプレーしていて。それも一流リーグの一流クラブしている選手だって珍しくない。
かつては、代表チームの中でもビッグマウスで浮いていた(今回は解説で浮いていたけど)本田圭佑が口にするのを、他のチームメイトが照れくさそうに「やめろよ」、みたいな雰囲気だった『優勝』って言葉を、監督自ら公然と口にするようになった。最終予選なんてテレビ放送なくたって暴動も起きないし、グループリーグの組み分けだって死活問題として一喜一憂しなくなった。
そんな最強の日本代表。なのだけれど。
結果はあいもかわらず。3戦善戦して、4戦目に惜敗。
けが人ガー、とか、対戦相手ガー、とか、若い選手の無用な煽りガーとか。言い訳はいっぱいあるのだろうけれど。まあそれはそれとして。
参加国が増えたから、優勝するために8戦する必要のある今回のW杯。4戦で帰国の途につくことになった日本代表。まだまだ大会は続いているのに。それが現実だよね。
現実なのだけれど、みんなそれで満足? 選手や監督に、いい経験だったって、満足してほしい? あるいは、満足した姿を見たい?
冗談じゃないよ。
日本が負けた後に観た、いくつかの試合。前回王者アルゼンチンに二度追いついて、最後まで追い詰めた初出場のカーボベルデ。ブラジル相手に一歩も引かず、若いスターの二閃で壁を切り裂いたノルウェー。クロアチアを振り切り、遂にスペインに屈したクリスチアーノ・ロナウド擁するポルトガル。
僕は戦術的なことは分からないけれど、みんなボールを奪った瞬間に前を向いて、必死にスペースを探す、スペースを作るために走り込む。何度失敗しても、通らば必殺の、必死に伸ばしたつま先の数センチ先に鋭いパスを蹴り込む。前回の、三苫の1ミリだって、そうやって産まれたんだよね。
ボール持ったら足下に収めて、辺りを眺めて、マイナス方向のチームメイトの足下に柔らかいパスを入れる。パスをもらったらまたそれを足下に収めて、周りを見て。そういうのどかなパス回しなんかどこにもない。
すべてのプレーにゴールへの意志が、勝利への気迫が見える。目の前で繰り広げられている、そういう試合。今回も、他の国でしか観られなかった。冗談じゃないよ。
帰国後、森保監督は、お礼参りの意味もかねてだろうけれど、いろんなテレビ番組に出演しているね。全部を見たわけではないけれど、応援へのお礼と、選手へのねぎらい、最高のチームができたが自分の采配でもっと勝てたかもしれない。みたいな、毒にも薬にもならない言葉が並んでいたみたいだね。お礼参りだからしょうがないけれど。
僕がもし、森保監督に直接聞く機会があったら、何を聞こうか、って考えてみたことがあるよ。
まずは、『今大会の最低限の目標は何で、それは達成できましたか?』。優勝できなくてごめんなさい、なんていわれてもしょうがないからね。ノルマはベスト8だったのか、16だったのか、それともGL突破だったのか、知りたいよね。
次は、『敗軍の将として、兵を語ってください』。仮にも、優勝を口にしたのだから、勝って官軍気取りではないと思うので、なぜ負けたのか、選手はよくやったけれど私の采配の、とかいう抽象的な言葉ではなくて、聞いてみたいよね。
そして、『次期監督のオファーは受けるのか?』。これまで2期務めた監督に、1年間のお試し期間なんてふざけたことを提案する協会に対して、なんていうか聞きたいよね。
僕なら、『これまでの4年間分の給料で1年間お受けします』と言って欲しいなあ。
次期監督の話題、森保監督にオファーを検討、ってでたのはGL2位突破が決まったタイミングだったよね。つまり、協会は、GL突破したらノルマ達成、次の4年間も託せるgoodな選択だ、って思ったって事だよね。もしかしたら、次の相手はブラジルだから、負けてもしょうがないとみんなが納得するだろう、っていうのもあったのかもしれない。
しかし、W杯二度もやって、一度もトーナメントに勝っていない監督に、再任の下駄を預けるなんて、なんて人材不足、人脈不足なんだ、って思っていたら。韓国のホン・ミョンボ監督のニュースで知ったのだけれど、安いんだ、森保監督。報酬4億円のホン・ミョンボ監督の半額以下、だって。そりゃあ、その金額で受けてくれる海外監督はいないよね。
結局、サッカー協会は、日本のサッカーを強くしたい、と思っていないんだよね。W杯には安定して出られているし、GL突破も、二回に一回から、このところ毎回突破できるようになったし。この位が日本のいいところなんじゃないか、って思ってるんだよね。
WBCがNetflix独占中継になった時に、誰でも観られるようにしないと子供の興味が失われて野球が衰退していく、なんて言ってたくせに、何年も前からJリーグはDAZNがほぼ独占して、テレビでサッカー見る、なんてことがほぼ日本代表以外消滅していて。その代表戦だって、W杯最終予選のアウェー戦は中継なし、なんてことになっていて。
その結果、W杯は、4年ごとに沸いて出る、サッカーリテラシーの低いにわかファンのためのものになり、永年日本サッカーの発展に人生かけて尽力したセルジオ氏のような愛ある苦言を老害と切り捨てる様になった。
かつては、毎回監督選考で技術評価委員会が叩かれていたりもしたけれど、そういうことも無く、安い森保監督でいいじゃない、8戦中4戦戦えたら『カンドーをありがとう』って言って盛り上がるんだから。そういう日本になっちゃったんだね。
僕? 僕は、W杯を、ベスト16になってから気合い入れてみる、と考えていてね。前回大会のドイツ、スペイン戦も、今回のオランダ戦も、同点でいいや、とか得失点差が、とか考えながら観るのも、そういうことを考えながら戦っているんだろうなあ、と考えるのもあんまり好きじゃないから、ただ観ている、という感じなんだよね。
今回は、ベスト16になる前に負けちゃったから、応援する段階にたどり着かなかった、ということになるね。
正直に云えば、僕は、森保監督は変えてほしいと思う。チームビルディングは上手いのかもしれないけれど、采配はできないヒトだと思うから。(正直に言えば、チームビルディングも前回の結果オーライだったと思うけど)
日韓の時に韓国を率いたヒディングや、今回ブラジルを率いたアンチェロッティのように、選手交代に明確なメッセージを込めて、『Go Go Go Go!!!! 骨は拾ってやる」と言ってくれる勝負師の下で躍動する日本代表を、1大会で5試合、6試合と観たいよ。
そんな日が、できれば、セルジオじいさんが元気なうちにやってきますように。